2000年10月号
 


Lee Perry at Ariwa Studio

 Greetings friends,
今年ブライトンにて復活を遂げたEssential Music Festivalは大成功を収めた。主催者側の仕切りも良く、天気も良く、喧嘩も無かったし、何と言ってもアーティスト達がきちんと来て出演を果たしたのである。これ以上、何を望めというのだろうか? とは言いつつ、前日の夜、Lee "Scratch" Perryの写真撮影中にかなり頭に来た事(詳細は次号で…)以外にも、今の私にはちょっとした心配事があるのだ。その素晴らしい多才さで今や向かうところ敵ナシのMorgan Heritage、今やニュー・ルーツをリードする希望の星とまで言われる存在だが、そのあまりの評価の良さにファミリーは投げかけられる期待を裏切らぬ様、必死に成り過ぎているのではないであろうか?「レゲエ界のロイヤルファミリー」と実に上手く貼られたレッテルや、マスコミ・世間からの賞賛を彼等は相当、頭の中で意識している様である。勿論バックステージではジャマイカの王族(?)か何かの様な振る舞いで、脇役として廻っていたツアーの頃に比べるとその態度の変貌ぶりは、マスコミを始め様々な人が気付いている。とは言え彼等のパワフルで活き活きとしたステージは何にも代えようがない。弟分のLMSの活発なパフォーマンスに引き続き、Morgan Heritageも魅力的でがっちりと見事な演奏を披露。周りの過度な盛り上がりや細かい事にいちいち振り回されず、音楽一筋にやっていけば、間違い無くこれからもずっと第一線で活躍していくだろう。アーティストには大きくなればなる程、多少の面倒も付き物、でしょ?

 メイン・テントではソウル、R&Bの話題のアーティスト達が集合。その中で今、活躍ぶりでは一、二を争う地元産ビッグ・アーティスト、GabrielleとJameliaを発見。2人とも素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたが、特にJameliaはダンサー・チームと共にとてもエネルギッシュなステージを披露。'Marcus Garvey' アリーナには多くのカルチャル・アーティスト及びLevi Roots, Vincent Napp, Peter Kleerview Harmonix等を始めとするイギリス勢が集結。ちゃんとしたバック・バンドさえいれば、彼等も有名ジャマイカ人アーティスト達に負けない位のステージを披露出来るのだ、という事を証明してみせた。残念な事に、確かに我々の国のアーティストは依然として自国でよりも海外で好まれる事の方が多いのである。

 不覚にも見逃してしまったJames Brown以外の 'Roots' テントの目玉は、Mad Professor VS Scientistであった。そう、数え切れない程のヒット・チューンのダブ・マスターであり、オリジナル・エンジニアのあのScientistである。彼等は8トラック・テープから交互にライヴ・ダブをミックスダウン、会場内はみるみるうちに人の山、挙句の果てには出口から人が溢れ出てしまう始末、しかし彼等の出す爆音でその場から誰一人として動かなかった。とにかく、この様な大規模なイヴェントにおいて、別々のステージで行なわれる全てのパフォーマンスを観るのは絶対不可能という事を改めて痛感させられた。しかも何年も会っていなかった人間にたて続けに出くわしたりした日には、自分のお目当てのアーティストのステージでさえうっかり見落としてしまうのであった。

翌週は東ロンドンでPeace & Love Festivalが開催された訳だが、こっちはステージが1つだけだったに関わらず、もっと悲惨な事態となってしまった。まずこの規模のコンサートがロンドンで行なわれるという事から、何とかショウを中止させようとする、様々な圧力がかかりまくったのである。警察と市は普段より余分にセキュリティーの数を増やす事を条件にショウの開催に渋々同意したが、案の定、このコンサートに不和をもたらしたのはそのセキュリティー達だった。コイツらの並ならぬ努力のおかげで我々プレス関係者並びに音楽関係者ら全員がバックステージにほぼ監禁状態となり、ステージ上にかけられた重苦しく厚いキャンヴァス地のカヴァーを通して流れてくる音や声のみを聞くハメとなってしまった。Culture & Tootsは出演せず、ゲートで35ポンドも支払った客は勿論不満。ステージの脇から何とか姿を観れたBuju Bantonは新旧のヒット・チューンをおり交ぜながら、巧みで安定したパフォーマンスを披露。個人的にはここ数年の彼のマーリー風なスタイルへの移行に今だ抵抗を感じるが…。姿は見えなかったが聞こえてきたCoco TeaとBig Youth、とてもいい歌声だった。しかしいよいよLucianoの出番という時に、ほとほと嫌気がさしてしまった家族にせがまれ、私は未練タラタラ会場を後にした。来年に期待!



Sylvia Tella


NYのLiving Room Recordsでキーボーディスト、プロデューサー、アレンジャーとして活躍しているSidney Millsと、彼がマネージャーを務めているSylvia Tella(Bobby Digitalが女性版Garnett Silkと言ったらしい)のアルバム、『Tella Like It Is』の発売記念パーティーに行ってきた。友人、プレス、レゲエ業界人が大集合した会場で、SylviaはBigga Morrison, Fagan, Henry Holder, Tenyuesといった面々を従え45分間の演奏を披露、彼女の並ならぬ多才多芸さとパワーを見せつけた。何故彼女がまだビッグな国際的スターでないのかが謎である。

Jetstarから『Reggae Hits 27』が発売中。Luciano, Peter Hunningale, Freddie McGregor等のホット・チューンが満載。一方で彼等のCave Studio内では多少変化があった模様。今までスタジオを仕切っていたTrevor 'Jugglig' Tは、そこではちょっと仕事をするのみとなった。代わって長年シンガー兼プロデューサーを務めたDanny Rayがプロデューサー業を務める事となり、ゲスト・プロデューサーも多数参加しているとの事。元FashionのGussie Pもその一人で、彼は新作の『Guidance In Dub』(Daweh Congoの『Guidance』のヴァージョン版)を制作。

長年UKのレゲエ・シーンににおいてラヴァーズとコンシャス・ルーツの両スタイルをこなすVincent Nappが、遂にデビュー・アルバムを発売する。タイトルは『Good Things Come...』。彼ならではの気持ちの良い、ルーツ寄りのレパートリーの代表作で、UKの腕利きのミュージシャン達を起用。Essential Music Festivalでの彼のライヴにも負けじと劣らずの力強さがうかがえる。要チェック!
 Take good care till next time..........
                            [訳/有賀由紀子]