1999年12月号

LOVE YOU / GHOST [MUSIC AMBASSADOR / MADO728-1]

如何にもゴーストらしい凄いジャケ(キモい)のニュー・アルバム。タイトル曲や大人気曲の「Do You Believe」はもちろん、カヴァー曲を中心にオリジナル・ソング、シングル未発表曲も収録されていて充実した内容に仕上がっています。バリバリのダンスホール・リズムで歌うゴーストも良いが、ソロで歌うならゆったりとした甘いリズムで女の子をメロメロにさせてくれる方がやっぱりよく似合う。[輸入盤](坪木良典)

HUMBLE AFRICAN / CULTURE[VP / VPCD-1586]

70年代にはジャマイカのみならずUKのパンクスからも支持の厚かった名ルーツ・グループの新譜。聴くまでは正直不安だったけど、これがオドロキの大傑作。全く色褪せてない、あの耳に焼き付く声。ファット・アイ・プロダクションによるヘヴィーでダイナミックなルーツ・ロックなサウンド。時代を越えてますね。今の若いレゲエ・ファン、特にモーガンやルシアーノ等の路線が好きな人には特にお薦め。[輸入盤](鎌田和美)

BIG TINGS / INNER CIRCLE [VP / VPCD1596]

何年か前からすっかりミーハー扱いされがちなベテラン・グループ。今夏もそういった路線のアルバムをメジャーからリリース済ですが、こちらは自身のレーベルからやりたい放題。Beenie Man、Mr. Vegasをゲストに迎えた現場対応チューンからAnthony B、Lucianoを迎えたコンシャス路線渋めチューン迄。更にGlen Washingtonを迎えて「Rain From The Sky」のカヴァーも。ヴァラエティには富んでいるが、力作だ。[輸入盤](鎌田和美)

VISIONS OF BABYLON / DUBWARE
[ARRAYED ROOTS SOUNDS / ARSCD 002]

ダブウエアの通算2枚目のアルバム。ダウウエアといっても本誌読者でも恐らく知る人はいないだろう。実は私も詳細は分らないのだが、UK産ではなく、イタリア産のダブ。内容の方は中心人物 "VAL" の自作自演&多重録音。ご存知、オランダのトワイライト・サーカスのイタリア版とでも言いましょうか、そんなお国柄が多少出たダブ・アルバム。参加ミュージシャンもイタリア人。[輸入盤](長井政一)

TAKE HEED / UK PLAYERS FEAT. INI ONENESS
[UK ROOTS REGGAE / RRR011CD]

ヴォーカルのアイ&アイ・ワンネスをフューチャリングしての両者合作品。内容はヴォーカルものとインストゥルメンタルのオール・ヘヴィ・ルーツ・サウンド。バックはUKプレイヤーズによる生演奏で打込み系は一切なし。ともにダブ・バージョンも収録されていて、個人的には最近のリリース作品の中では評価大である。タイトル、リリック等も筋金入りの信念をもったラスタが贈るジャー・メッセージだ。[輸入盤](長井政一)

SKA HOT SHOTS / ROLAND ALPHONSO SOMETHING SPECIAL [HEART BEAT / 11661-7728-2]

ジャマイカを代表するサックス奏者であり、スカタライツのオリジナル・メンバーとしても有名なローランド・アルフォンソのスタワン音源集。58〜68年にリリースされたシングル曲を中心にCDでは初登場のレアなスカ・チューンがギッシリ収録されている。デタミネーションズを筆頭に、日本のスカ・シーンが活況を呈している現在、彼らのルーツである本場ジャマイカのサウンドにも耳を傾けてみてはいかがだろうか。[輸入盤](小池信一)

THE COMPLETE UK UPSETTER SINGLES COLLECTION VOL.3 / LEE PERRY
[TROJAN / CDTAL 904 Z-UK]

今や説明不要のリー・ペリーがプロデューサーとして英国のトロージャンに残したシングル集の第三弾。今回も豪華ジャケット仕様で1970〜71年にリリースされたアップセッター・レーベルのシングルAB面を発表順に合計47曲収録している(一部割愛)。ジャマイカの音楽史的に見ても丁度過渡期な分、試行錯誤な感じが面白いし、リーならではの音遊びもこの頃にはすっかり板についている。貴重な音源満載。[輸入盤](大場俊明)

PLANET MARS DUB / THE ICEBREAKERS WITH THE DIAMONDS [VIRGIN / CDFL2]

名盤揃いのVirgin Front Lineから、Mighty Diamondsの『Planet Earth』のダブ盤再発。元盤では「美しい青い星、地球で人はなぜに争うのか?」をテーマに作られ、ダブ盤では「青く美しいはずのこの星は争いの焔で赤く焼けただれた火星であった」というテーマで作られている。もちろん内容も見事にツボを突いてくる演奏と浮いては消えるDiamondsのコーラスが絶妙の傑作で、脱帽必至の本物の名盤。[輸入盤](鎌田和美)

PLUTINUM REGGAE VOL.3 / V.A.[ARTISTS ONLY/AOR-37]

アーティスツ・オンリー・レーベルからのコンピレーション第3弾。今回はフレンチ・レーベルの音源を集めたとてもナイスな編集盤で、ジャケットはダサいが、中身は凄い。特にモーガン・ヘリティジ・ファンの皆さんは要チェックです。何と未発表曲が2曲も収録されていて、うち1曲はあのデジタルBがプロデュースで参加。しかも名曲「Mojo Rock Steady」のリメイク・リズム。この1曲だけでも聴く価値大です。[輸入盤](坪木良典)

STRICTLY RUB-A-DUB / V.A. [TROJAN/CDTRL439]

U-Roy、デニス・アルカポーニらにによってひとつのスタイルとして確立されたDJシーン。大勢のアーティストが出ては消え、数々の名曲が生み落とされた。このアルバムはラバダブ全盛期、DJの歴史の中でも特にホットなバイブレーションを発していた80年前後の曲を収録したもの。イエローマン、ランキン・ジョーら、この時期の代表的なアーティストばかりをセレクト。ムセ返る様な現場の熱気がビンビン伝わってくる。[輸入盤](小池信一)

スターズ/こだま和文
[スピードスターインターナショナル/VICL-60615]

先行シングル「Funky Planet」で、否応にも期待が高まったこだま和文のニュー・アルバム。タイトルからも分る様に各曲に星の名を付け、このアルバムを聴く事で誰でも宇宙旅行が楽しめると言った感じ。自己を解放して表現された曲は、聞き手にあらゆる想像を持たせるはずだ。更に細部に渡るサンプリング、エフェクト効果がより表情を豊かにしている。セルフ・プロデュースの良さが充分に活かされた作品。(前田和彦)

ホット・ショット/シャギー[ユニバーサル/MVCE-24194]

前作から実に3年振りのアルバム。プロデューサー陣にはジャム&ルイス、全米No.1ヒットとなった「ブンバスティク」を手掛けたスティング、ロバート・リヴィングストン、デイヴ・ケリー、トニー・ケリー等が参加し、ビッグ・ステージを狙ったシャギーの魅力を引き出した楽曲が並ぶ。今回は気負いのないリラックスした語りが印象的で、キャッチーなサンプリング&メロが彼の個性とぴったり。(前田和彦)

スカイ・イズ・ザ・リミットVOL.1/V.A.
[アルファエンタープライズ/KSCD-8003]

現在、日本のダンスホール・シーンの中心から作品を発信できるレーベル、それがレッド・スパイダーのジュニアとカエル・スタジオによって設立されたSky Is The Limit。本作は既に話題を巻き起こしている "Guess What?" リディムによるジャンボ、ボクサー・キッド等の強烈なチューンに加え、ニュー・リディムの注目曲を収録し益々息上がる。V.I.PやJap Jamに次いで今後多大な奇跡を残す事は間違いない。(前田和彦)

シストレン・ミーツ・ジャマイカン・ヴァイブス/V.A.
[シストレン / TDK / GST-CD004]

レーベル発足から丁度1年を迎えて出された本作は、プロデューサーのシスター・カヤがどうしてもやりたかったであろう作品だと思う。一見、シストレン関連の女性アーティストのコンピ盤だが、単に作品を並べ立てただけのアルバムではない。スライ&ロビーや日本の男性アーティスト等、豪華なゲスト陣とのリンクによってメインの女性アーティストがより自由に表現できる様に最善を尽くしてるのだ。入魂の作品。(大場俊明)

フー・イズ・ジル・スコット?〜ワーズ・アンド・サウンズ Vol.1/ジル・スコット[エピック / ESCA-8087]

コモンやルーツとの共演、そしてエリカ・バドゥが歌った「You Got Me」の制作者…ジルのデビューを飾るイントロには、このスジの好き者にはタマらないフックで一杯だ。繰り出される音の方は、ソウルクエリアンズ直系のクリスピーなサウンドからジャジー・ジェフの趣味と思しきゴー・ゴーまでと様々。でもコケティッシュで包容力満点のジルのヴォーカルを包むには、音の方にもこのくらいの懐がなくてはね。(石澤伸行)

マイ・クライムズ/ラフ・エンズ[エピック / ESCA-8085]

バルティモア出身の男性2人組。同郷のドゥルー・ヒルとはアマチュア時代から自慢の喉を競い合った仲。「U Know What's Up」を受けて参加のエディ・Fらに、まずは目が行きそうだが、フル・ボディなヴォーカルの味わいを堪能するなら、マニュエル・シールやノキオ、ナイト&デイらによるスロウがお薦めだ。若さと野性味で突っ走る前半に、じっくり情感を高める後半と、声の鎬ぎ合いがスリリングな作品。(石澤伸行)

マイ・ソウツ/アヴァーント [ユニバーサル / UICC-1001]

元NBAのマジック・ジョンスンが主宰するレーベルから、何ともR.ケリーな男性シンガーがデビュー。ケリーお抱えのミキサーが参加していることに加え、その息を抜きながらの歌い上げ系唱法が、それを感じさせるのだろう。リネイ&アンジェラのカヴァへの取り組みも上々で、ひた向きな男を描き切ったフランキーの傑作ともダブってくる。シカゴという街がチリチリと燃え出していることを実感させる佳作だ。(石澤伸行)

ナッティー・プロフェッサー・2〜ザ・クランプ/O.S.T.
[ユニバーサル / PHCW-1101]

何といってもジャネットか。イマドキR&Bの流儀を踏まえながらも、独自のドラマ性でこちらを巧みに裏切りながら曲を展開していく手法は、まさにミラクル! ジャム&ルイス恐るべし、を再度刷り込む問題作だ。シンガー勢では、一時期のニュー・クラシックな質感を思い起こさせる新人、ミュージック君に期待が膨らむが、ラップの方も、ティンバ制作によるジェイ・Zの曲に未来派ファンクを見ることしきり。(石澤伸行)

テスト, ドント・テスト/アッティカ・ブルース
[エピック/ESCA-8202]

3年前にモ・ワックスでデビュー・アルバムをリリースして以来、他のアーティストのリミックス等はこなすものの本人達の音沙汰のなかった彼等がハイヤー・グラウンドに移籍、待望のセカンド・アルバムを完成させた。乱暴に言えば成熟したトリップ・ホップと言ったところか。ヒップ・ホップもレゲエのエレメントも練り込まれたサウンドの中に消化され、2000ニュー・ソウルを創り出している。(高橋晋一郎)

サウンド・シグネチャー・サウンズ/テオ・パリッシュ
[日本クラウン/CRCL-2003]

ムーディーマンと並び独特なサウンドでハウス・ファンのみならずダブや音響好きまでもロックさせてしまう、セオ・パリッシュのレーベル、サウンド・シグネイチャーの12インチ・リリースをまとめたコンピレーション。全楽曲彼の手によるもので音色やバランス、グルーヴ感に至るまでそのオリジナルなサウンド・デザインは、ブレイク・ビーツと並びまだまだ未開拓なクラブ・ミュージクの可能性を感じる。(高橋晋一郎)

ザ・アート・オブ・ウォー/V.A.
[トイズファクトリー/TFCH-87808-9]

ジェームス・ラベルが主宰するモ・ワックスのコンピといえば、未だ歴史的編集盤として名高い『Heads』が有名だが、今回2000年ヴァージョンのコンピがリリースされた。ディヴァイン・スタイラーやマジック・マイク、クワナム軍団らのモ・ワックス流ヒップホップ路線は勿論たっぷり。ニュー・ディレクションなのは、日本人アーティストも数多く収録されている点。ジェームスの新機軸が顔を覗かせるセレクション。(高橋晋一郎)

レディオセラピー/V.A. [エピック/AICT-151]

アシッド・ジャズ創生期からイジットとして活動してきたトニー・コールマンが中心として構成されるレーベル、ホスピタルの日本企画コンピ盤。自らもロンドン・エレクトリシティとしてアーティスト活動を行う彼のドラムンベース・ユニットの特徴としてヴォーカルを乗せる点が挙げられるが、今回はさらに日本サイドから野崎良太率いるジャズトロニックがリミキサーとして参戦しているのもポイント。(高橋晋一郎)

ORG/V.A. [リーヴァス/RECD-001]

ジャイルス・ピーターソンも唸る日本屈指のブレイク・ビーツ・レーベル、Revirthのコンピ盤。12"というフォーマットに拘っていたので、こうしてまとめて聴けるのは嬉しい。Numb、Calm、Individual Orchestra、Saidrum等が参加するこのレーベル、ジャンル意識は皆無なのだろう。どのクリエイターも根が何であれ、それに束縛された形跡は全く無く、無駄な音も一切ない。まるで修行僧の様だ。(大場俊明)

チル・アウト・エッセンス〜コンプリート・バイ・DJ 19/V.A.[KSR/KSCD-033]

自身のレーベル、19 Boxの運営や人気のパーティー「Mothership」のレジデントDJを務めるDJ 19のコンピレーション盤。彼は既に様々な形態のコンピレーション盤を編集しているが、本作はいわゆるイビザ系のチル・アウト/クール・アウトもの。ジャンルや年代などにはこだわらず、唯々気持ち良くなれる流れを作っている。イビザというだけで毛嫌いする人もいるだろうが、本作なら納得して貰えるだろう。(大場俊明)