1999年12月号

LEXXUS / Mr.LEX [VP / VPCD-1585]

若手の人気、実力ともに現在現地No.1のDJ Lexxus(Mr.Lex)の1stアルバムが遂に登場。ブレイクした「Ring Mi Cellie」は勿論、ヒット中の「You」(ノーカット版)、そしてお楽しみの未発表曲やゲスト陣も多数でおもしろいアルバムです。特にDean FrazerのSaxをフィーチャーした「Di Message」が個人的にお気に入り。要チェックは「Red Ya Now」。この曲、リズムも歌も流行の予感大。内容充実。[輸入盤](坪木良典)

SPIRITUAL REVOLUTION / MIKEY GENERAL
[JAHMESSENJAH / NO NUMBER]

マイキー・ジェネラルの朋友、ルチアーノのレーベルからのリリース作。彼ならではの強さを持ったコンシャスなメッセージ、切なげで美しい声、聴かせちゃうメロディライン、繊細なサウンドを上手に使ったアレンジ。ラスタ系アーティストではありますが、ラヴァーズ・ファンもけっこうヤられちゃいそうな一枚。まあ男と女の痴話を越えたグローバルなラヴァーズ・アルバムということなのでしょう。[輸入盤](鎌田和美)

GARNETT SILK MEETS CONQUERING LION / GARNETT SILK [REGGAE 1LUV / KRCD1011]

故Garnett Silkがルーツ系サウンド、コンカリング・ライオンに残した90年代前半のダブ・プレート集。丁度、今人気のあるダンスホール・クラシックス・リディムに、お馴染みのヒット曲や、正規でリリースされていた物では聴けなかった故Bionic SteveやMikey Spice、Yasas Afari等とのコンビネーションも収録されている。他にもガーネット幻のDJ等、発掘音源盤にしてはかなりハイグレードの傑作![輸入盤](鎌田和美)

INFLUENCE OF THE MASTER / GOLD MASTER ALLSTARS [A TO Z / GMCD-0001]

UKレゲエ・バンド、ゴールド・マスター・オールスターズのファースト・アルバムの登場である。98年にファースト・シングルとなるインスト・スカ・チューン「Cape Horn」をリリースしたが、その後リリースされたチューンは全てルーツ・レゲエばかりで、本作も当然その流れを貫いている。ダブを融合させたホーン主体のヘヴィー・ルーツ・バンドとでも言えば分かりやすいだろうか。全12曲収録。[輸入盤](長井政一)

DUB VOYAGE / TWILIGHT CIRCUS DUB SOUND SYSTEM [M RECORDS / CD190]

オランダのダブ・ユニット、トワイライト・サーカスのニュー・アルバム。95年にファースト・アルバム『In Dub Vol.1』をリリース後、今作が通算8枚目となる。相変わらずの自作自演のオーヴァー・ダブによる録音。打込みが主流の現在のニュー・ルーツ・ダブのスタイルに比べると、生演奏もしている分、曲のメリハリもついて実にいい雰囲気を出している。勿論、ダブ・サウンドも強力である。[輸入盤](長井政一)

HARICANE / V.A. [VP / VPCD2119]

Beenie Man「Crazy」でおなじみの "Headache" リズムの第二弾リズム、"Hurricane" リズムのワン・ウェイ・アルバム。もう既に前作のリズム同様にこの "Hurri-cane" リズムもタイトル通り現地のダンスに大暴風雨を巻き起こしています。大ヒット中のCapleton「Hunt You」やナナナのH.Toddler等、おいしい曲がコレ一枚で聴けてしまうお得なワン・ウェイです。7"を買うのが面倒な人はコレを。[輸入盤](坪木良典)

エンドレス・ヴァケーション/スリラーU
[カッティング・エッジ/CTCR-13133]

前号で紹介済のスリラーUのベスト盤。その記事に「原曲の枯れたイメージには、さすがに追いつかないけど…」と触れられていた新曲「Change The World」だが、これは原曲よりいいぞ。ベタな情緒を振りまく原曲は恥ずかしくて聴いてられないが、U君のは最高だ。ダッサイ他ジャンルのヒット曲がレゲエになると新しい顔を見せる事は珍しくないが、これは特上のケース。他の曲もベストなんだから良いに決まってんじゃん。(石川貴教)

フロム・ミー・トゥ・ユー/ヤシマベス
[ビクター/VICP-61093]

両親が立派なほど子は反抗するものだ、と改めて感じたヤシマベスの最新作。つまり前2作は父親であるフレディ・マクレガー主導で制作されたもの故に、キチっと完成されたアルバムだったが、今回は自分主導で制作したからこそ、彼女の目指すスウィートでメローなフィーリングが自由奔放に折り込まれている。レゲエもR&Bも身体に染み込んでいる彼女にしかできないソウル・ミュージックが詰っている。(大場俊明)

フル・テンション・ビーターズ/東京スカパラダイスオーケストラ [エイベックス/AVCD-11824]

青木達之亡き後、ゲスト・ドラマーにフィッシュマンズの茂木欣一を迎えた最新作。風雲児、冷牟田竜之が仕切っただけあって、70年代後期のイギリスのパンクに通じるエッジの効いた気合いぶっ込みナンバーが次から次へと飛び出してきて、彼らにホノボノな空気を求めるファンにとっては驚きを隠せないだろう。とにかくスカパラ史上かつてない強烈なインパクトを持つ、正にタイトル通りな青筋切れそうな一発。(大場俊明)

ミッドナイト・エクスプレス/ギャラクシー・エクスプレス・クルー [ディスク・ブリッジ/DBCD-1001]

名古屋の人気クラブ、OZONEが送り出すG.E.C.は、地元ではかなり人気のシンガー、ラッパー&セレクターによる3人組のようだ。本作は初の6曲入りミニ・アルバム。レゲエにもヒップホップのどちらにも転ばない微妙なバランス感から生まれたサウンドは、彼らの持ち味なのだろうが、コアな層にはやや物足りないかもしれない。ただラッパーのGaccuは粗削りながら今後に期待できるスキルを感じる。(大場俊明)

ESP/システム [エイベックス/CTCR-13130]

10年以上の時の流れをブランクと感じさせないのも、彼らの隙間ない活躍のお陰だろう。久々の新作から聞こえてくる、デヴィッドの独特なサウンド構成とミックのスカした歌声は、我々の気分を一気に80年代に戻してくれるだけでなく、イマにあって充分に刺激的な存在感を放ってもいる。それが最も顕著に表われているのが、モブ・ディープのプロディジーが参加した「You Are In My System」のセルフ・カヴァー。(石澤伸行)

ナッシン・バット・ユア・ラヴ/トシ・クボタ
[ソニー/SRCS-2300]

トシ・クボタの新作は、米国マーケットにおける成功へのこだわりを、これまでになく感じさせる布陣となった。ルーツによる立ちの良いビート感、アンジー・ストーンのふくよかなソウルネス、ラファエル・サディークのツボを得た音仕事。名脇役たちがしつらえた音世界の中で、気持ち良さそうに歌うトシのヴォーカルは、いつも通りしなやかかつグルーヴィに響き、“これがオレ流”を感じさせるものだ。(石澤伸行)

ハーレムDJ カオリ〜デフ・ソウル・ミックス/V.A.
[ユニヴァーサル/PHCW-1095]

デフ・ソウル発の歌ものを、NYで活躍中のDJカオリがつなげてコスったミックスCD。シスコやドゥルー・ヒル、モンテル・ジョーダンやケリー・プライスといった重量感たっぷりの曲を、カオリのキュートなMCで橋渡しするという構成は、これまでのこの手の企画にはなかったフレイヴァに満ちている。じっくりと曲全体を聴かせるミックス技に、気が付けばデフ・ソウルの現在の勢い自体にも圧倒されていた。(石澤伸行)

ワイアード2〜スティル・イン・ザ・グルーヴ/V.A.
[ポニーキャニオン/PCCA-01438]

純ジャパなトラック・メイカーやシンガーが一堂に会したコンピ。DJセイジやイノセンスによる思い切りの良いファンキー・トラックには、この手の音楽に出会った頃の衝撃を思い出すし、Oritoの水っぽさ満点のヴォーカルにクレヴァが果敢に挑み、Co-Keyとリブロに嶋野百恵が得意の濡れ声で絡む等、聴き答えありまくりのカップリングがひしめいている。こういう企画物ならいくらあっても大歓迎って感じ。(石澤伸行)

シャフト/O.S.T. [BMG/BVCA-21073]

『黒いジャガー』が30年振りに復活する。アイザック・ヘイズがあの曲を原曲に忠実に焼き直した他は、現行シーンの主役たちが、それぞれニュー・シットを披露。R.ケリーやドネル・ジョーンズらが、歌で正統ソウル・マナーを露にする一方で、アウトキャストらオーガナイズド・ノイズ一派は、相変わらずの特濃なアクでもって存在感をアピール。手法は違えど不思議とベクトルの合わさったサントラだ。(石澤伸行)

ビッグ・ママズ・ハウス/O.S.T. [ソニー/SRCS-2269]

JDが総合監修にあたったサントラ。ミッシーとダ・ブラット、ナズとモニカ、ジャギッド・エッジとブラック・アイヴォリーといった、企画ものならではの顔合わせに加え、元エクスケイプのキャンディやラターシャらがソロで登場。南部臭漂うバウンスものを身に纏い、そのお祭り色はかなりの域に達している。そんな中、ひた向きな魅力で一際光るのが、ラターシャとシャンテ・ムーアのデュエット。これは名曲!(石澤伸行)

ソング・フロム・ザ・ティン/ダ・ラータ
[カッティング・エッジ/CTCR-14162]

本作が出る直前にDJで来日し好評を博したUKクラブ・ジャズのキーマン、パトリック・フォージとクリスチャン・フランクによるユニット=Da Lata。既にシングルで話題をさらっていただけに、期待してたファンも多いだろう。ブラジリアン・サウンドとツボを押さえたトラックのミックス具合は誰もが望んだ以上の作品へと昇華している。言葉を欲しない気分…唯々チル・アウトして踊りたい時には最適な快作。(大場俊明)

アフロ・キューバン・ジャズ/スノーボーイ
[ミュージックキャンプ/BG-2003]

ロンドンではかなり以前から定着しているラテン・ジャズ・シーン。その中で何年にも渡ってDJ&アーティストとして超一流の座に君臨するスノーボーイの『マンボ・レイジ』に続く通算7枚目。ここに収められている曲はジャズ、サルサ、マンボ、チャチャチャ等を巧みにミックスした、スリル満点で楽しくて踊りたくなるワクワク度の高い曲ばかり。単にオリジナルの模倣じゃなく、確実に今のサウンドだ。(大場俊明)

像SHO-ON音/ミュージアム・オブ・プレート
[クルーエル/KYTHMAK061D]

本誌読者ならシャカゾンビのアルバムで聴けた殺気迫るピアノが印象深いであろう塚本サイコによるソロ・ユニットの新作は、前作『茶音』と対をなすミニ・アルバム。ワン&オンリーのピアノと同様、本人制作による緊迫したトラックも素晴らしい出来。Osumiをフィーチャーしたタイトル・ソングは、都市で手探りながら生活する者の吐露。「ローラ・パーマのテーマ」のカヴァーは完全に塚本の世界を構築している。(大場俊明)

MG4/モンド・グロッソ [ソニー/AICT1245]

2ステップ率高し。ただし大沢伸一イズム溢れる音楽性で構築され、大沢特有のジャジーなベース・ラインも満載。よって「ファンクイズム溢れる2ステップ」の完成、である。既にバードの参加した「Life」がマスな展開をしていたが、アルバムはよりクラブ向けなラインで完成。参加している歌姫はMonday満ちるを始め、アメール、エンディア・ダベンポート、エジ・モッタ(ブラジル)と世界視点。(柾虎)

A.P.C.プレゼンツ・マニフェスト/V.A.
[A.P.C./A.P.C.016]

日本でも絶大なる人気を誇るジャン・トゥイトゥのファッション・ブランド、A.P.C.。ミュージシャンでもある彼の親友等による既発のA.P.C.オリジナルCDを編集した本作。ビル・ラズウェル、藤原ヒロシ、ジョナサン・リッチマン等、彼がこよなく愛するダブ、アンビエント、エスノをキーワードにした素晴らしい楽曲が並ぶ。本人自らのルー・リードばりの唄もいい味。色は様々だが、何故か統一感があるから不思議。(大場俊明)

メンツ・オブ・ア・プロトタイプ2.0/V.A.
[メリージョイ/MKCM-1017]

世界に誇る和製アングラ精神レーベル=メリー・ジョイを信用しないで、何を信用する…? 信用しろよ。今作もファット。しかも実験的な、と言うよりもベーシックな硬さ。リヴィング・レジェンズのイルーシブが選んだ音で構築。西海岸のアンダーグラウンドからの弾頭は、異様な気だるさで、日本の夜長を漂う湿気にも似ている、半歩遅れた浮遊感、がある。ただ肌は濡れず、突起。脳にノイズを塗れ!(柾虎)

フリキワ・コレクション2/V.A.
[トイズ・ファクトリー/TFCK-87806]

フランスからアフリカンの戦慄と旋律。エレクトロ界の変態革命児=フレデリック・ガリアーノがA&Rを担当するレーベル=フリキワから紡ぎ出された伝統的アフリカン音楽とエレクトロの糸は、本来意思疎通の為に生まれた音楽のルーツまで辿り着き、現代の電波へと流れ込む。I.Gカルチャー、カタリスト、DJスパイダーのミックスは異次元へと生物を誘う。音楽と語れる一枚。あなたは…。(柾虎)

ロウズ・オブ・モーションVOL.1/V.A.
[ファイル/FRCD-0099]

夏向け。この波を受けた鼓膜は脳に走馬灯のように流れ移る情景を描き、日本に次ぎ様々な音が終結するロンドンへ飛ぶことを主張する…。ロンドンの妥協無き貪欲レーベル=ロウズ・オブ・モーションが初めてリリースするコンピ。二次元になりがちな映像を三次元に置換する造形家たちが集結し、ただ騒音でしかない歌謡曲に終結を告げる。同士はモダジ、ネオン・フュージョン、トム・ノーブルら。(柾虎)