幼すぎて夜のダンスにも行けないのに、ジャマイカのダンスホール文化を支えているのはティーンエイジャー、それもローティーンかもしれない。私には13歳の姪がいる。夫の姪なのでジャマイカ人だ。数学は今でも苦手なようだが、希望校だったE高校に入学し、今どきのコギャルライフをおくっている。学校の催しに招かれたりもするが、休み時間などはそれはもうダンスホールのようだ。彼らこそ、ニュー・ジェネレーション、ニュー・テイスト。ケイプルトンときけば「だっさーい」と反応するし、そんな彼女のアイドルはビーニ・マン、私達は天敵だ。私の「スター生写真コレクション」は片っ端から彼女にとられてしまう。ガーネット・シルクの写真などは見向きもしないが、レクサスは「タフ」なんだそうだ。彼女の言う「タフ」は「かっこいい」の意。「ラガマフィン」なんてとうの昔に死語になっている。タメ口とは少し異なるが、ジャマイカのコギャルにも彼女らなりの言葉がある。パトワでは相槌を打つ時「Seen」というが、若者の間ではちょっと訛って「Zeen」というのが新しいらしい。ジーン。彼らの言葉をここで紹介しよう。

●Bellyas(ベリアス)=トラックの名称がスラングに。欲張りなこと、又は欲張りな人、よく食べる人のこと。

●Casco(カスコ)=チープな物を総称する形容詞。「カスコで売っているような安い服」の意味から発展して、独立した言葉となってしまった。「カスコっぽい」「どことなくカスコ」などと変形させても使える。

●Casco Phone(カスコ・フォーン)=ジャマイカでも携帯電話の普及は目覚ましい。最近広く出回っている、受信のみの携帯電話のことを「カスコ・フォーン」と呼ぶ。送信ができないので使用料が安いのだ。が、さすがにジャマイカでは携帯は大人の持ち物。コギャルは持っていません。

●Pardy(パーディ)=(ルードボーイ系の)友達。Idren(アイドレン)。

●Bruk Vibes(ブローク・ヴァイブス)=気をくじくこと、くじかれること。ヴァイブスが悪くなること。

●Dat Nuh Mek It(ダッ・ノー・メイク・イッ)=あまり格好よくないこと。

 ギャルの間で
「Hype(ハイプ)」なものといえば、ブランドの服。アップタウンのお嬢コギャルはGuessで固めていたりもするが、一般のティーンにブランドはまだまだ高嶺の花。DJハリー・トドラーがUSのカジュアルウエア・ブランド、トミー・ヒルフィガーのプロモーションモデルとして契約を結ぶ、という話がある。トミーの服はどこの洋品店でも扱う程人気が浸透している。ストーン・ラヴはギネスビール、レナサンはレッドストライプ。飲料水だけでなく、ダンスホールも商標とタイアップしたら面白そうだ。トドラーに続いてキプリッチはGuess、なんてどお?

 若者の街ハーフウエイツリーは夏休みで若者倍増。それでなくてもジャマイカ、特にキングストニアンは平均年齢が低いのだ。暑さと熱気でBlaze Blaze。今年は帽子よりも、男のコは海賊風ナイロン製のかぶり物、女のコはスカーフが多い。この子達が大きくなった頃、頭に物を乗せて歩く人の姿などは見られなくなるかも、などと感慨にふけったりしてみるが、ダンスホール汚染度
Full100(フルハンドレッド)のティーンエイジャーも、ボブ・マーリーを知らない子供達も、ボブのチューンはどれもFull100、空で歌える。エンジェルダンスばかりかクミナなどジャマイカの伝統的なダンスも踊れるところを見て、なんかホッとするのである。
 
夏休み、Weh Di Flex?(どこへ行こうか)