1999年12月号

FULLY LOADED / SPRAGGA BENZ
[BENZ SPECULOUS / VP / VPRL-1577]

いま、どのレコード屋でも売れてるであろうスプラガ・ベンツのブラン・ニュー・アルバム。"Bellyas" や "Baddis" 等のコアなダンスホール・リディムから、R&Bをパロったようなノリ、サイバネチックなスカ、果ては意表をつくドラムンベースと非常にヴァラエティに富んでいて、しかも凄い勢いを感じる。シングル寄せ集めだから通して聴くにはちょっと、という事は全くない充分楽しめる強烈な作品。[輸入盤](鎌田和美)

PERFECT LOVE / RICHIE STEPHENS
[POT OF GOLD / VP / VPRL-1582]

スターの王道、エンターテインメントの華を絵に描いて額縁に入れたようなリッチーの最新作。ゴージャスかつ色鮮やかなバックのサウンド、それに負けない圧倒的声量と、表現力豊かな歌い回しにはトム・ジョーンズもビックリ。いや本当に薔薇の花束でも飛び出してきそうなダンディでロマンチックで熱い! 話題になったシールのカヴァー曲や「It's Not Unusual」等のヒット曲が満載した濃い一枚!! [輸入盤](鎌田和美)

JAH GOLDEN THRONE / PETER BROGGS & JAH WARRIOR [JAH WARROR / JWLP017]

'94年レーベル設立以来、通算17枚目のリリース。今回の作品は'70年代の初頭からジャマイカでシンガーとして活躍してきた古手のルーツ・シンガー、Peter BroggsをJah Warriorがプロデュース。収録曲全てヴォーカル物で、ダブ・ヴァージョンは無い。アレンジ等もニュー・ルーツと融合した男気のあるハード・ルーツ・セレクションだ。勿論、曲の所々でダブ処理もされていて、充分にエフェクト・サウンドも楽しめる。[輸入盤](長井政一)

LET THE LIGHT SHINE / HYDOROPONICS IN DUB
[DUBHEAD / DBHD 018LP]

U.K.のDubheadからリリースされたニュー・ダブ・アルバム。タイトル、スリーブから見ても解る通り“ガンジャ”一色といった感じが伺える。欧州ならではのガンジャに対する認知度の高さをアピールしている様にも思える。内容も筋金入りのディープなヘヴィウェイト・ダブ・サウンド。メロディカを起用したパブロ風の曲なども収録。録音、ミックスはコンシャス・サウンドで、エンジニアはダギー・ワードロップ。[輸入盤](長井政一)

KICK UP RUMPUS / COLOUR MAN
[YOUTH PROMOTION/ NO NUMBER]

祝再発! ダンスホール好きの皆様、セレクターをなさっている皆様にぜひ聴いていただきたい'86年Colour Manの大ヒット作。"Revolution" トラックのタイトル曲は、当時のダンスやラジオで大ヒット。今でもプレイされれば本場Jamaicanもビックリ。コノ曲を探していた人も多かったハズ。その他の収録曲もカラフルなDJスタイルで、飽きさせる事はありません。これぞダンスホールDJ、ヨッ色男![輸入盤](坪木良典)

EL ROCKER'S / AUGUSTUS PABLO
[PRESSURE SOUNDS / PSCD-29]

昨年亡くなったオーガスタス・パブロとキング・タビーが生み出した歴史的名盤『King Tubby Meets The Rockers Uptown』の何と未発表&シングルのみのヴァージョン集の登場である。Pressure Soundsの仕事の中でもかなりマニアック度の高い内容だが、どの曲も一曲一曲オリジナルと交互にかけてみると分かる様に、素晴らしい仕事ばかり。でもオリジナルを聞き込んでから本作を聴くのが正解だろう。[輸入盤](大場俊明)

GREENSLEEVES REGGAE SAMPLER 21 / V.A.
[GREENSLEEVES / GREZ-21]

「サンプラーは安い、仕事はキッチリ」。そんな言葉がぴったりハマる名シリーズの第21作目。今回は、今までの中でもピカ一の選曲です。まず、14曲中4曲も未発表、特にB面のSizzlaとBushman(2人共ニュー・アルバムをリリース予定)の2曲は要チェックですヨ。ダンス・ファンに人気のWard 21「Shake It」も面白いです。ジャケットのお姉さんもナイス!! 裏ジャケもセクシ〜、内容充実の一枚。[輸入盤](坪木良典)

DON'T CALL US IMMIGRANTS / V.A.
[PRESSURE SOUNDS / PSCD-28]

紹介が遅くなってしまったが、プレッシャー・サウンドからの新作は、日本でもファンの多い'70〜'80年代のUKレゲエのコンピレーション。当時のUKレゲエ・シーンを牽引していたAswad、Steel Pulse、Mutumbi、Black Slate等、日本でもお馴染のアーティストから日本では無名に近いアーティスト迄収録しているが、どの曲もとにかく強くたくましい。鋼の様なサウンドと硬派なメッセージが胸を打つ。[輸入盤](大場俊明)

フル・コンタクト/ドライ&ヘヴィ
[ビートレコード/BRC-24]

前作以降、やっとライヴをやり出した彼らのライヴはマメに通っているが、どんどん凄い事になってっている。その影響か、本作は前作よりライヴでも盛り上がるだろうツボを押さえた曲がふんだんに収録されている。リズム隊は益々ソリッドになり鉄壁。更に青の成長が著しく、ライヴでお気に入りだった「ランブル」(名曲!)の収録が嬉しい。これ程のルーツ・レゲエ・バンドは、世界を探してもいないだろう。(大場俊明)

リトル・テンポ・ミーツ・ヴォイセズ・オブ・フラワーズ/リトル・テンポ[エイベックス/AVCD-11066]

国立発のレゲエ&ダブ・バンドがゆっくりだが全国の音楽ファンの心に浸透していく様は素直に嬉しい。本作は前作『Ron Riddim』収録のトラックを下敷きにリンダ・ルイス等、個性豊かな歌手がメロディを乗せたもの+ダブ。どれも新録と言っても差し支えのない構成で特にジャケットでもかわいいイラストを書いたフレッシュ・ファンキー4がお薦め。決して知的な音楽じゃなくて、腰に来る音だと再確認。(大場俊明)

スリル・オブ・イット・オール/ECD
[カッティングエッジ/CTCR-14156]

衝撃の問題作に続く1年半振りの6作目。路線的には前作で展開した「ヒップホップの枠に逆に縛られず、ただカッコイイ音を追及した」コラージュ物で、その本人とツッチー、イリシット・ツボイとの共同作業は前作よりもタイトに。実験的なのに、彼の言葉がキャッチーに響いてくる辺りは流石。Saxとの掛け合いやオールド・スクールをニュー・ウェイヴのフィルターにかけた様な曲等、彼が示すヒップホップの臨界点。(二木崇)

マイ・ネーム・イズ・ジョー/ジョー
[エイベックス/AVCZ-95154]

4年ぶりの3作目。他への楽曲提供を通して、職人気質も垣間見せてきた彼だが、テディ・ライリー、シェイクスピアそしてマライアらの参加からも汲み取れるように、この新作ではこれまでにないメジャー感が前面に出されている。でも妙なアーティスト風情に頼らずに、とことんメロウな作風で攻めきっているのは大正解。「All That I Am」路線を含め、全てを期待通りにキメることの美学に貫かれた作品だ。(石澤伸行)

サンクフル/メアリー・メアリー
[ソニー/SRCS-2285]

これまでに702などへの作品提供の経験を持つ姉妹ゴスペル・デュオがデビュー。リリックの多くは神へと向けられているものの、サウンド構成はイマドキのR&Bフォーマットで統一。ブランディやドゥルー・ヒルを手掛けてきたウォーレン・キャンベルによる音世界も、ふたりの確かな歌唱スキルに支えられ、俄然ハツラツとした表情に。デスチャの参加もありで、ゴスペルを新しい形で聴かせてくれている。(石澤伸行)

ノット・ザット・カインド/アナスタシア
[エピック/ESCA-8129]

ヴォーカルそのものに備わった爆発力。このディズニー映画のタイトルのような名を持つおばちゃんの声からは、誰もが即座にアレサ、ティナ、チャカといったクイーンを思い浮かべるハズ。そんな歌ヂカラを考慮してか、用意されたサウンドは純正ファンク、壮大ロックといったラウドなものばかりだ。こういった音と拮抗しながらも、時にラフに時に大らかな母性を感じさせながら、聴く者すべてを優しく包み込む。(石澤伸行)

フロム・ザ・ボトム・トゥー・ザ・トップ/サミー
[東MI / TOJP-65416]

ダラス・オースティンが送るオコちゃまソウル・プロジェクトの一環。アルバム・タイトルといい、ここぞというところでしゃがれ気味になるヴォーカル・ワークといい、13才の少年によるパフォームであることが仕掛けとなって、いちいち泣かせる。TLC「Silly Ho」風や、まんまモニカ「Angel Of Mine」曲と既聴感も高いが、南部臭漂ういなたさを湛えながらも確実に未来が見据えられたダラススの音作りは光る。(石澤伸行)

ノー・コースト/TICA[V2 / V2CH-6003]

FMで時折流れるアコースティックな「Rock The Casbah」(勿論Clashの曲)を聴いて誰だろうと思った人も多いだろう。元The Changの石井マサユキ(G.)と武田カオリ(Vo.)によるデビュー・ミニ・アルバム。和製Every-thing But The Girlと言うとイメージが限定されてしまうかも知れないが、その心地よさは彼らに通じる物がある。他にもNeil YoungやPolice等カヴァーばかりなので、余計今後が気になる。(大場俊明)

トゥ・カム…リミックスVOL.1/サイレント・ポエツ
[トイズファクトリー / TFCC-88230]

アルバム『To Come』を音源とするリミックス集その1。メンバーの下田自ら人選を行ったというリミキサーは、チャリ・チャリやインドープサイキックスらの日本勢から御大マーク・スチュワート、DJヴァディムやドック・スコットらのイギリス・チーム、ノヴァ・ノヴァにレミニッセント・ドライヴ、セヴン・ダブらフランス・チームら多彩な顔ぶれ。中でもインドープサイキックスの仕事が特に素晴らしい。(高橋晋一郎)

ガン・ヒル・ロード/ザ・インフェティコンズ
[トイズファクトリー/TFCK-87805]

常に妥協無き人選、音色で攻めてくるUKのHip Hopレーベル=Big DadaがRoots Manuvaに次ぐ凄腕を送りこんできた。The Infesticonsとは、実はNYポエットリー・リーディング界の鬼才=Mike Lado(!)の変名ユニットなのである。去年、ポエットリー・リーディングをモチーフにした映画『Slum』が日本でも公開された事もあり、その強烈なメッセージ性、斬新な言葉の組み合わせに注目が集まりそうだ。(柾虎)

シンセア/MJコール[マーキュリー/PHCW-1093]

トーキンラウドがレーベルのニューベクトルとして世に送り出すのがこのMJコール。ドラムンベース以降の新ディレクションというわけだ。スタイルは今やUKを席巻している2ステップなるスピード・ガラージュとドラムンベースを組み合わせたタイプ。個人的にはロニ・サイズやクラストらの時に比べるとその衝撃度はかなり薄いように思う。最早日本とロンドンのセンスはイコールではない事の証明で、ある意味健全。(高橋晋一郎)

スーパーモディファイド/アモン・トビン
[トイズファクトリー / TFCK-87804]

まず一言で言えば「変態」。様々な音楽エッセンス、特にラテン調にウェイトを置いた彼の音楽は、言葉より多くを語り、喜怒哀楽を音で映像を奏でる藝術だ。そう、彼の藝術は人間の精神を操作する力がある。アブストラクトな絵画が持つ色使いを、そのまま音に置換できるのは、このAmon Tobin。彼の音を聞きながらオブジェを創ってみたところ、「無」が完成した。DJ Kenseiのようなノイズ系プレイが好きなら必聴。(柾虎)

サブ・ジャズ・パート1/V.A.[KSR / KSCD-029]

コンピレーション・アルバムのみならず写真集をブックレットという形でパックすることにより、音とビジュアルの有機的なシンクロを目指したプロジェクトの第1弾。収録された音源は、アイソリーやビーン・フィールド、アフロ・ブルーなどに加え、インナーゾン・オーケストラやアイ・キューブらのリミックスとジャズをベースに持ったハウス系をメインに収録。単純にコンピレーションとしても充分楽しめる仕上がりになっている。(高橋晋一郎)

ブラジリアン・ラヴ・アフェアー2/V.A.
[クアトロ / QUATTRO DISC-022]

UKでのブラジル・ブームではジャイルス・ピーターソンの片腕として名を馳せたジョー・デイヴィスがスタートさせたファーアウト・レーベルのラウンジ・テイストなコンピの第2弾。アジムスやマリコス・ヴァリ、ジョイスらのベテラン・ミュージシャンとDJとしても安定したクオリティーをキープしているパトリック・フォッジのユニット、デ・ラータら90年代のアーティストがバランス良くコンパイルされているところがナイス。(高橋晋一郎)

ディープ・コンセントレーション3 /V.A.
[OMレコーズ / MKCA1022]

サンフランシスコを代表する超実験的雑食レーベル=OM(オムと読む)が世界的に注目されるきっかけとなった超絶コンピ、『Deep Concentration』シリーズの第3弾が到着。第2弾に続き、ターンテーブリスト主体で、病的に起伏のあるビートを求めている人は絶対に買い。地下的ヒットを飛ばした名前も多く見うけられ、戸惑ったが、全て気持ちよく裏切られる高い質。ラップが入った曲は2曲のみ。(柾虎)

SHOUT!プレゼンツ・トリビュート・トゥ・カーティス・メイフィールド ・ノンストップ・ミックス・バイデヴ・ラージ/V.A.[ビクター / VICP-61050]

以前紹介したオーサカ=モノレールの中田亮が中心となるソウル・イベント“Shout!”が贈るカーティス追悼盤。彼の曲を中心にカートムのプロデュース音源をミックスしたのはご存知デヴ・ラージ。最高の歌手であり、作曲家/編曲者/制作者/ギタリストでグルーヴ・メイカーであった名曲が、最高のグルーヴ・マスター/プロデューサーの手で磨かれる最高の瞬間の連続! カーティスのファンでなくとも大推薦!!(二木崇)