自分たちのペースを守りながらも、確実に現在の日本のダブ/レゲエ・シーンを牽引しているリトル・テンポとドライ&ヘヴィー。5月、そして6月と期せずして両バンドともニュー・アルバムをリリースする。互いのサウンドへのこだわりなどについてアンケートをした。 |
●Q1. 正式メンバーとそれ以外のメンバーとを、どう区別しているのですか。 |
リトル・テンポというグループ名が、どうしてミュート・ビートのもじりになっているのか、その理由は知らない。きっと東京西部、国立市周辺のバンドだから、自然にそうなったのだろう。ドライ&ヘヴィーの方は、その名がバーニング・スピアのアルバム・タイトルに由来するのは、レゲエをある程度聞き続けてきた者ならわかるが、実はあの「スライ&ロビー」と完全に韻を踏んでいるのは意識されたものなのかどうか。そんなことはどうでもいいが、今年の2月に彼らは共にホレス・アンディの東京公演のフロント・アクトを担当した。リトル・テンポ(以下LT)を見るのはそろそろ10回目になるかも知れず、ドライ&ヘヴィー(以下D&H)のライヴは僕にとっては初体験だった。 ![]() LTの新譜は、前作『ロン・リディム』から3曲をピックアップして、それぞれに表題の通りヴォーカルを再発注。各ダブを含め4トラックずつ、計12曲入りの新装開店である。リミックスではなくリテイクに近い感覚、と本人たちが言っているように、前からのオケにただ歌を乗せさせただけでもなければ、あの曲のダブをまた聞かされるのかよ、という不満も出ないだろう、多分。それより歌が付いたことで全く変ってしまった曲の表情、ダブの位相の差異に驚くのではないか。まずリンダ・ルイス、フレッシュ・ファンキー4、トリオ・エスペランサという三組の選択が絶妙なのだ。前号でサイモンはリンダを70年代のディスコ・ディーバと紹介したが、彼女はアシッド・ジャズ世代に再評価された黒人のフォーキーなフリー・ソウルSSW。73年からヒット・シングルがあり、74年にはもう来日していた。彼女の入った「ディスタント・アイズ」は『ロン・リディム』の中でも人気の高かった「フロスティ」に被せたもの。これはグルーヴィな仕上げだが、FF4のはストレートかつ、中ではレゲエ度高し。3エスペランサはブラジルのコーラス隊で、そのポーチュギーズがリゾートでおシャレに聞こえるかも。ただし僕は、バラライカ奏でるロシア民謡みたいなスティール・パンが出てくる瞬間、アリエヌ共和国の住人になるのだ。 ![]()
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