「Who A Di Big Man Ina Cricket?」 
「Courtney!」
 一夜明けたら、このフレーズがジャマイカ中の鼻歌ソングとなっていた。ジャマイカに何年いても、クリケットだけはわからん、そんな同士は多いと思う。点数は何百点にもなり、試合に何日もかかり、試合の間は皆テレビにかじりつきで仕事にならない。
 熱狂的ファンの多いクリケットだけれど、わがウェスト・インディーズ・チーム、通称ウィンディーズは、カリブの英国連邦国寄せ集めチームであるにかかわらず、強くはない。おまけに、誰がキャプテンになるかで常にモメている。が、先日対ジンバブエ戦に勝ち、コートニーウオルシュ選手が何やら新記録をとったのだ。
 その夜、DJでエンジニアでもあるZumjay(ズンジェイ)が、ペントハウス・スタジオでクリケット・アンテム「コートニー」をひとりでレコーディング、次の日にはラジオで流れ、試合会場でお披露目して大ブレイク。ズンジェイ一夜にして有名人、の図。当然このリリックスはストリートを駆け巡り、ダンスでは、ウーアディビッグマンイナダンス?なんてやってるよ。ビッグマンとは本来、リスペクトをこめて大人の男性を指す言葉だが、ここでは偉い人、秀でた人を指している。
 スラングは常にバックストーリーがある。以下、「バッドマン・スラング」「ポートモア・スラング」「ラス・スラング」と分けてご紹介しよう。

〈バッドマン・スラング〉
 最近は、ゲットーばかりがバッドマン発祥の地ではなーい。アップタウンからもバッドマン・スラングは聞こえてくる。Hey Yoh!
●Give it to dem /Let dem have it =やっちまおうぜ、の感じ。"Dem"="Them"。itはニュー・チューンやダブプレートならいいけれど、弾丸を意味する。あーこわ。こんなの小耳にはさんじゃった日にゃあ、Tan tudy(タンタディ=静かにしてるしかないわね)…。
●Tugs(タグ)=「引く」という意味の英語だが、引き金を想像させ、ここではシャタ(ガンマン)と同義語で使う。
●Bad man no play video game =「バッドマンはお子ちゃまのビデオゲームでなんか遊ばないんだよ」が直訳だが、「バッドマンをなめるなよ」と相手を威嚇するときに使う。"Mi no ramp wid you" のY2K版。
●Vex no bloodieks(ベックス・ノー・ブローディークス)=ちょっと失礼、ここでカスワード(悪い言葉)をひとつ。「ムカつく」の意。少しムカついたくらいなら "Mi vex" くらいにしておきましょう。悪い言葉は、TPOがわかってから使いましょうね。

〈ポートモア・スラング〉
 ポートモアはキングストンの郊外にある新興住宅地で、若者が多く年々大きくなる街。ここでは庶民的なスラングを紹介するので、いつでも使ってね。
●Straight(スチョレイと発音)=OKの意味で使う。挨拶で "Everyt'ing straight?" とも使える。
●Casco clothes(カスコ・クローズ)=カスコ(現在は店名を変えたが、チープな物を安く売る店)で売ってる安い服のこと。ネーム・ブランド(ブランド品)の反対。
●Wha yu up to?(ワッチュウアップトウ)/Wha yu de pon?(ワッユーデポン)=フリスコのように女のコのご機嫌伺いにも、"What's up?" 的に軽くあいさつにも使える。"De pon yu" なんて答えても良し。
●Up to the time =「これから」の意味。
●The full 100 =100%フルに、全力で、全部の意味。強調したいときに使う。ギャングスター的にもえっち言葉にも使われる。
●Sexercise(セクササイズ)=セックスとエクササイズで一石二鳥。いかにもなオヤジギャグ的発想。
●Shagadelly(シャガデリ)=セクシーな女のコをさす言葉。ちまたで有名なかわいい女のコは、ダンスホール・クイーンのステイシー嬢をはじめ、ミグエル(モデル・エージェンシー会社の名)モデルのパシャ、女のコDJシルバーキッドはDJも上手くてかわいいときている。Jah know, da gal de shagadelly.

〈ラス・スラング〉
 ポジティヴ・ワードにこだわるために、ダジャレは得意のラスタマン。"Hate", "Money", "Under" などをネガティヴな言葉、またはバビロン・ワードと呼び、これらを "Love" や "Up", "Over" などのポジティヴ・ワードに変えてしまう。代表的なところで、"Understand"(=理解するという英語)は "Overstand" 、うーん、なるほど。しかしこれがいきすぎると本来の言葉が何だったのか解らなくなってくるのさ。"Testilove", "Truebrary" って一体何?
 おっと、スペースの都合でこちらは来月のお楽しみー。
 
Ina Iwa!