1999年12月号

RHETTMATIC / Millennium Countdown

西を代表するターンテーブリスト集団=ビート・ジャンキーズの一員にして、キー・クールとアップ・アバーヴ・クルー/ヴィジョナリーズを形成する凄腕DJレトマティックの新作テープ。使用されている皿は91〜95年のクラシック(「Live At The BBQ」「Fat Pockets」「Punks Jump Up〜」「93 Til Infinity」等々)ばかりで、当然ながらウエスト・アンダーの曲も含まれているのがミソ。コスリの妙よりもツナギの妙を重視した作りながら彼らしい技も堪能出来る。

KEI-BOMB / The Triple Five

かつてスイケン、ダボらと共にチャンネル5として活動していた個性派MC=ケイ・ボムのアルバムがテープ・オンリーでリリースされた。クルー=シンク・タンクのババ、DJヤジやニトロ・マイクロフォン・アンダーグラウンドのデリ、そして自ら参加するバンド=マナウェヴらをフィーチュアし、あのドクトクなフリーキー・フロウと共にオリジナルな音世界を大放出。ディープで摩訶不思議なそのトラック群は一度ハマると抜けられない。次に控えるシンクタンクの作品も楽しみ!

D.I.T.C. / World Wide (トイズファクトリー)

自他共に認める最高の堀り師軍団にして真のマイク・マスター集団=D.I.T.C.の最初で最期のアルバムが遂に完成。「Day One」「Da Enemy」「Way Of Life」そして「Thick」といったシングルでお馴染みの濃い曲は勿論のこと、新録群も“イントロでK.O.”級のトラックばかり。フィネス、ファット・ジョー、O.C.A.G.そして故ビッグLらのリレーは矢張り鳥肌モノの格好良さで、ヒップホップに必要なものは何か考えさせられる。正に極上のビートと本物のフロウだけの傑作。D.I.T.C.よ永遠なれ。

MURDERERS / Murderers (マーキュリー)

昨年のベストMCの一人=ジャ・ルールを中心とする "マーダー・インク・レコーズ" 所属の若手衆5人組の初アルバム。影のボス=アーヴ・ゴッティ(ジェイZ、ODB等を制作)が用意したサグ&バウンス路線のトラックで5MCは吠えまくり。「ロッキーのテーマ」使いで人気の「We Don't Give A Fuck」、紅一点ヴィタが女傑ぶりを発揮する2ndカット「Vita,Vita」やサントラ『Next Friday』にも提供された「We Murderers Baby」等、フロアを揺るがすチューンがギッシリ。ありし日のN.W.A.を想わせる一面も。

THE CUF / Cufilation Plus(メリージョイ)

サクラメントの名物5人組=ザ・カフの4作目。彼等の魅力はリヴィング・レジェンズ同様に、自給自足の制作体制と秀でたライム・テクニシャンの集合体である事で、それは本作でワールド・ワイドなレヴェルにまで達している。トラック担当のネイト・ザ・グレート(CMAのアルバムにもゲスト参加)のドープなファンキー解釈が効いたオケに、息の合ったMC陣の絡みが見事にハマった必聴盤。レジェンズの面々も好サポート。いやはや“西海岸”は層が厚い。

ブッダブランド / 病める無限のブッダの世界〜  
Best Of The Best(金字塔)(カッティング・エッジ)

日本中のヘッズが待ち焦がれた、ブッダ初のフル・アルバム。"エルドラド" から連発中の新曲群(トドメは「人間発電所」のリマスター版+「大怪我3000」!)を中心に、過去のクラシックまでもが網羅された極太仕上げのこのCD2枚組は、大阪モノレールのイントロを含め全32曲、捨て曲ナシの濃さ(ゆえにベスト・アルバム)。これまで作品上には現れていなかったブッダ・ポルノ・オールスターズものを含め、彼らの懐の深さがタップリ味わえる仕掛けになっている。これが売れなければ日本のシーンに未来はない。

シャカゾンビ / S-SENCE 2000(カッティング・エッジ)

シャカ噂のリ・レコーディング・アルバム。通称シャカ・バンドことB.B.H+ルード・ボーンズによる「虹」に始まり、バック・ドロップ・ボム、ロウIQイチ、ブラフマンらと異種格闘リミックス(←死語?)の他、ヒップホップ・サイドからもスピナ、ワタライ、KZA、ハジメ、D.O.I.そしてツッチー+カズキのロープスらが参加。また4ヒーローの手による「Kokoro Warp」も素晴らしい。ジャンルの壁を壊すべく、次々と新しい手を打ってくる彼等には本当に脱帽。

ライムスター / リスペクト改 (ファイルレコード)

昨年のベスト・アルバム『リスペクト』のなんと全曲リミックス盤が登場。既発モノはシングルで聴けた「キング・オブ・ステージ」、「B-Boy イズム」のリミックスと先行12吋盤の出てた「ブラザーズ」(ワタライMix)、「ビッグ・ウエンズデー」(Kza & ケントMix)位で、新たにDJビート、ロック・ティー、シンコ、ヤス、セロリ、ペス、フマキラーと豪華面子が愛ある再構築を施している。中でも「Hey, DJ Jin」(キエるマキュウMix)はその2MCのラップも新たにフィーチュアし、とんでもないコトになっている。

ソウル・スクリーム / ザ・ポジティブ・エナジー (ポリスター)

今のシーンの充実度を示すかの様な“リミックス・アルバム”競作の最後の1枚はソウスク。このメンツも凄い。UK代表コールド・カット、US代表ショーン・J・ピリオド、独代表モ・ホライゾンズの他、流、Mrドランク、イノヴェイダーそして内海イズル、小西康陽、スピードメーターと多ジャンルからクセ者たちが勢揃い。どの曲も完全に別曲に生まれ変っている。また第四の男=Mrアレルギー制作の新曲「Hip Hop 2Zerooo」(Feat.リノ)はセロリのリミックス盤もアリ。必聴。

スチャダラパー / 5W1H (A.K.A.)

SDP待望の新作に先がけてのシングルは古くからの付き合いとなるデ・ラ・ソウルのトゥルゴイをフィーチュアした「5W1H」。フックの一部を彼が担当したこの編成は驚くほど自然で、シンプルで暖かみのあるトラックも文句ナシ(トゥルゴイはそちらにも関与)。対する「エムシー」は今までなかったタイプのMC讃歌で、ボーズ、アニの2MCにとっても新たなステップとなる曲。とはいえ、この肩の力の抜け具合(トラックもそう)がまたSDPらしくていいのだ。

DJ オアシス / マジ興味ねえ(P―ヴァイン)

昨年T.A.K.ザ・ラーイム、Kダブ・シャイン、Qとの「Another Side」そして初ソロとなる「地下から…」(Feat.ジブラ)で前線復帰を果たしたオアシスのNew。今度はキングギドラ・コネクションのもう一人、そうKダブが登場し、2人して強烈なサッカーMCソングを披露している。MC=オアシスもより“色”が出てきたし、ビートの太さ、感触はやはり随一。尚、マキシCDにはアナログ完売した前作「地下から…」C/W「ILL リーガル・ドラッグ」を併録。2000年中には出ると思われるソロ・アルバムへの期待も膨らむ。

S-WORD / Smokin' Buff(リアリティ)

ムロ「Weekend Funk #7」を始め、自身も参加しているニトロ・マイクロフォン・アンダーグラウンド等で、数々の鋭いヴァースをキックしてきたスワォードのソロ名義での初シングルが担当し、印象的なあのピアノ・リフとムキ出しのビートで主役の斬れ味鋭いフロウ、コトバの洪水を浮き立たせている。またリミックス盤はオリジナルのヴァージョンの後、カウントと共に雪崩れ込む形でくっついており、エンドレスでヤラレる寸法に。参った!