今、日本のレゲエ・シーンは、まるで爆発寸前の火山の様である。何故ならこのシーンは、現在迄に数々の偉大な先人達が作ってきたしっかりした土壌があり、その上に全国津々浦々に数多く存在するレゲエ愛好者、関係者の人々が、山の頂上から噴火する日の為に日々切磋琢磨を繰り返しつつ力を貯え、″山の麓″の足腰をがっちり固めている。更に他の音楽シーンに負けない高さを持った″山″を築く為に、アーティスト、プロデューサー、サウンドシステム/クルーは試行錯誤を繰り返し、来たるべき爆発の日(レゲエが日本の音楽シーンの中で正当に評価される時)に備え火口でグツグツ燃え滾っているからである。

 しかしそんな活火山の様なレゲエの山に数多くの鉄をも溶かす様な熱〜いマグマが数多く存在している事実は、まだまだあまり知られていないのが現実である。もちろん、サウンドシステム界で世界一に輝いたMighty CrownやJudge-ment、幅広い音楽層から既に多くの支持・評価を集めるMoominやPushim等、すでに大きな爆発を見せたたくましい先陣=″ファイヤー″達も存在するが、日本レゲエ・シーン全体が注目や関心を集める機会はまだまだ少ない。2000年は是非ケイプルトンが叫ぶ″モア・ファイヤー″の様に次々と火山の中の多くの″ファイヤー″達が火口から続々と吹き出す事を願うし、又そうでなくてはいけない。

 そんな思いを深く持った人ならばまずやらねばと思うのが、「日本のレゲエをどう世間にアピールするのか?」「どの様な切り口からレゲエを楽しんで貰おうか?」という事だと思う。その方法論は人それぞれだが、いま日本のシーンに必要な重要課題として、「まず音源をどのように広めるか?」の答えとして″レーベル″を作り音源を広めていこうという動きが密かに活発化して来ている。そんな日本のシーン拡大・浸透に向け最近レーベルを興した3レーベルに今回はスポットを当て紹介・分析してみようと思う。

 
 まずは現在までも数多くの7EPをリリースし、黄色いレーベルでレゲエ・ファンにはお馴染みのカエルスタジオレーベルとジャマイカでも活躍中のサウンド、Red Spiderのセレクター、Juniorが運営する〈Sky Is The Limit〉。このレーベルは99年の暮れに発足し、前出のJuniorがプロデュースを担当。まず一発目のリリースとして店頭に並んでいる "Guess What?" リズムは、何と今ジャマイカのトラック・メイカーの中でも一番の注目を集めるWard 21が担当。ジャマイカの今一番熱い部分と日本の大注目のアーティストをミックスさせたこのレーベルの動向は、絶対に注目しておくべきでしょう。また目標は「オリコン一位、レコード大賞、紅白出場…そしてJA、US、UKでもヒットを狙える物も計画中。リリースしたアーティストは皆フルアルバムまで持って行きたい」と逞しい。レゲエもこれからはこうで無くてはいけません。

 又、現在リリース済みのJumbo Maatch, Takafin, Boxer Kid, Chozen Leeに加え三月中旬にはPapa-Bon他数タイトルがリリースされるとの事。更に今年春には〈Dragon 2000〉という新レーベルも作り、日本のリアリティのある文化や様々な事件等を織り交ぜたリリックの作品をリアルタイムでリリースしていくらしいので、この3つのカエル系レーベル(今後麻苧とJuniorがプロデュース)は今やる気満々といった感じ。加えてカエルスタジオは一ヶ月のダブ・カッティングの量は何と300曲を越え、昨年から様々なイベントも成功させているので、そのノウハウを活かした今迄には無いシーンへのインパクトも期待できそうだ。

 続いては昨年7月に発足した〈カジノ891〉。こちらはあのトキワを母体にしたばくさんエンターテインメントが運営するレーベルで既にRyo The Sky Walker 「Casino」、Papa Bon「臨機応変」をリリースしている。更に春以降にはNG Head(Featuring Ryo The Sky Walker)、Papa Bonの新曲もアップしてる様だ。そして彼等の音作りについては「ジャマイカ、日本の両方の制作で、リズム・トラックは打ち込みだけではなく生楽器にも挑戦し、音楽的な側面を違う角度のダンスホールとしてリリースして行きたい」と語る。又、「所属アーティストのNG Head、Ryo The Sky Walkerのみならず若手アーティストを育てる環境も整えていきたい」とのこと。新人アーティスト発掘はこれからのシーンの活性化の為にもどんどん行って欲しい事なので是非実行して頂きたい。

 又、このレーベルの既発作品はすべて12EPなのだが、その点については「曲の内容に沿った形、そしてトータル的に楽曲を捉えてプロデユースしていきたい」という考えの上の事らしい(勿論他のフォーマットのリリースもあり得る)。この様なスタイルは日本で音源を発表して行く中で、非常に状況に適応した方法であり(ジャマイカのシングル乱発も面白いが)、日本のレゲエをネクスト・レヴェルに引き上げる為の方法論を持ったレーベルとして、今後〈カジノ891〉は要注目の存在であろう。

 そして最後に紹介するのは、お馴染みベテランDJ、Hase-Tが昨年10月に設立した〈Riot Records〉。このレーベルからのリリースは現時点では彼自身の作品の12インチ「Ours Song」のみとなっているが、「日本のダンスホールの発表の場が余りにも少ないからやり始めた」という彼の言葉通り、まず理屈よりも意志を持って一人でも行動を起こして具体化している事は評価されるべきである。そして肝心の音においても歌を自身で唱い、リズムも作り、トラック・ダウン迄やるといったトータル的な作業を行っており「他のジャンルから見てもカッコイイ、と思わせる音。トータルな意味でもレベルを上げて行きたい」という事を目標にする同レーベルのスタンスは、日本のレゲエ・レーベルという人々の固定観念に一石を投じてくれる事だろう。

 今回紹介したレーベルはそれぞれスタンスや方法論こそ違えど、「発表の場が少ない日本のレゲエ音源を広めて行きたい」という共通の目標を持ち、今後更に活躍して欲しいと切に願う。
 
 そして僕は声を大にして言いたい。「日本のレゲエという大きな山は今、力を貯え、もうすぐ大爆発するぞ!! 用意はいいか? ぼけっとしてると火傷するよ」と…。