2月6日はジャマイカの特別な日である。レゲエ・キング、ボブ・マーリーが生まれた日だ。祝日ではないが(注:祝日にしようという動きは以前からある)、毎年この日はTVで特別番組(今年はバニー・ウェイラーのインタビューと「タイム・ウィル・テル」の放映等)、新聞も雑誌もボブ特集し、ラジオでは一日中ボブの曲が流れる。いつの間にか2月6日を含む一週間を「ボブ・マーリー・ウィーク」と呼ぶことが定着していった。今年もジャマイカでは各地(彼の縁の地)でイベントが行われたが、例年より人々の関心がボブに向いたのは、単に55歳の誕生日という理由だけではなかった。1月、アメリカの代表的な雑誌「TIME」で、ボブの'77年のアルバム『Exodus』が20世紀のベスト・アルバムに選ばれ、更にBBC放送では、ボブの代表曲「One
Love」が、ミレニアム・ソングに指定されたのだ。ビートルズやマイルス・デイヴィスら大物アーティストを蹴落としての選択にジャマイカ中が驚きと喜びに湧いた。ボブ・マーリーという存在は、年々大きくなっていく。世界で一番有名なジャマイカ人であり、ジャマイカの文化、観光業を始めとするジャマイカの経済にも大きく貢献したボブが、ジャマイカの一番の栄光であるナショナル・ヒーロー(国民的英雄)に選ばれないのはなぜか、と各メディアの論議のネタになっている。
そんな風潮の中マーリー・ファミリーは、正にジャマイカのロイヤル・ファミリーともいえる。皇室の存在しないジャマイカにおいて常に注目される存在で、スキャンダルにも事欠かない。ボブ・マーリーの子供は11人認められているが、その内リタ・マーリーとの子がセデラ、ジギー、スティーヴンの3人、リタと他の男性との間の子供が2人、後の6人はボブがそれぞれ愛人に産ませた子供達で、ボブの子供を産んだ女性はリタを含めて7人、ボブが結婚したのはリタ様だけである。ボブの孫はザイオン君も入れて現在36人いるらしい。数年前までは、レコード会社や生前ボブが雇っていた弁護士との権利相続問題でもめた事もあったが、ファミリー内でもめた話は聞かない。子供達は皆別々の家に住んでいるが、皆一様に仲がいい。11人の中で歌っているのは7人だが、ジギー・マーリーしか知らないという日本の皆様のために、個性溢れるご子息令嬢11人をご紹介しよう。
●シャロン・マーリー・ブレンダーガスト
リタの連れ子で現ボブ・マーリー・ミュージアム館長及びメロディメーカーズのメンバー。アフリカ国籍のブレンダーガスト氏と結婚、ボブの子供達の中で唯一の既婚者。余談だが、結婚しても旧姓を残し、妙に長い苗字の女性が増えている。本来上流社会での習慣だったのが定着してきたもので、日本でも浸透したりして…鈴木山田花子さんとか。
●セデラ・マーリー
67年生まれ、ボブの最初の子。メロディーメーカーズのメンバーで、現タフゴング社長。お洒落でダンスが上手く、絵を描いたりファッションデザインに挑んだりと、アトラクティヴな現代女性。
●デヴィッド″ジギー″マーリー
68年生まれ、ボブとリタの長男でジギー・マーリー&ザ・メロディメーカーズのリード・ヴォーカル。私がリタだったらジギーに恋してしまう…その位ルックスも声もお父さん似。
●スティーヴン・マーリー
74年生まれ、ボブとリタの次男でメロディメーカーズのメンバー。近年はプロデューサー業に忙しい。99年発表の『Chant
Down Babylon』は彼のプロデュース。12月にはローリン・ヒル、バスタライムス、エリカ・バドゥ等とマーリー・ファミリーが共演した「ボブに捧げるコンサート」を開催し、TVでも放映された。芸能人らしくないキャラクターで、彼にサインをねだると必ず「お兄ちゃんに貰ってね」とかわされる。
●ジュリアン・マーリー
ボブとガイアナ国籍の白人女性との間の子で、ゲットーユース・プロダクション所属のシンガーでアルバムも出している。ファミリーの中で一番の美形だが、話すとブジュ・バントンばりの野太い声の持ち主で、見かけに似合わずパトワ丸出し。白馬の王子様の様なルックスに彼自身が反抗しているのかも。サインや写真など気軽に応じてくれる。
●ローハン・マーリー
元マイアミのサッカー選手、数年前にマエストロの芸名でレコードを出したこともあるが、現在音楽活動はしていない。何よりもこの人は、ローリン・ヒルの子供、ザイオン君の父親として有名で、以来11人の中で一番の有名人になってしまった。素顔の彼はジョーク好きで楽しい人。スティーヴンは彼のことをコメディアンと呼ぶ。米国在住。
●カレン・マーリー
マーリー家で一番の美女。英国在住。
●ステファニー・マーリー
マイアミ在住、大学に通いながら不動産業などファミリービジネスをこなす。ボブ・マーリー・ミュージアム内にドレッドヘア専用美容室をオープン。近年はファミリーのスポークスマン的役割をもしている。ステファニーがボブの子供ではなく、リタと当時ファミリーが住んでいたブルベイ出身のサッカー選手、アイタルとの子であることは、公然の秘密。
●キマーニ・マーリー
ボブとジャマイカの有名卓球選手との間の子。マイアミ在住。マーリー家とは無関係の「Shang」に所属し、去年メジャー・デビューを果たす。2年前にアメリカでコカイン所持で逮捕されたりと、マーリー家の中での異端児といえる。
●ロバート・ネスタ・マーリー・Jr
リタ・マーリー始めファミリーを騒然とさせた名前の持ち主(ボブの本名)。ブルベイにあるボブの家は彼の持ち物。
●ダミアン・マーリー
ボブと、かつてのミスワールドでシンガーでもあるシンディー・ブレイクスピアとの間の子。ボブの子供の中では一番年下である。メロディメーカーズのメンバーと同様、子供の頃から歌をうたっており、ジュニア・ゴングの芸名でアルバムも発表。ファミリーの中で一番DJとラップが巧くアイドル系で、最近はジュリアンとコンビでステージに出ている。ダミアンとジュリアン、スティーヴンはいつも3人でつるんでおり、格好も皆カーキ色と迷彩色に統一、かわいく見られない様にわざとしているのかしらん。もったいない…母親のシンディーは著名弁護士タバレスフィンソン氏と結婚したが2年前に離婚している。
以上11人、大人になる毎にそれぞれ個性が出て役割分担もできて、お次はどんな話題を提供してくれるのか楽しみだ。キングストンに来たらボブ・マーリー・ミュージアムに寄ってマーリー・ファミリーに会おう! 1階にあるスタジオはもとボブが使っていた昔のタフ・ゴング・スタジオで、現在は改装して子供達専用スタジオになっているので、ファミリーと会えるチャンスは多分にある。皆、気さくだよ。
2月はブラック・ヒストリー・マンス(黒人の歴史月間)である。2月1日はデニス・ブラウンの生まれた日であり、彼の出身地であるオレンジストリートにあるBig
Yardで、ブラック・スコーピオがプレイするダンスが行われた。ルーツ・レゲエは表面的には消えてしまった様に見えるが、生きている。
One Love!
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