毎年スティングが近づく頃、必ず誰か二人のDJの仲が険悪になると、相場が決まっている。今シーズンはビーニマンとケイプルトン、二年越しの不仲だ。実際にこのお二方、ライフ・スタイルも違う様だし同じステージには立たないし、たまたま同じ飛行機にでも乗り合せない限り、喧嘩をする機会もないに違いない。リリックスという媒体を使わなければの話だけど。

 99年はケイプルトンの年だった。"Who Dat?" "Slew Dem!" と島中をファイアバンしまくり、ストーンラブ27周年記念でもトップ・アーティスト賞を獲得、5年ぶりにスティングのトリか?!との期待(をする人もいるさ)をよそに、当日の三日前に、12月26日ボクシングデー開催のスティング出場拒否を発表、25日クリスマスの『Saddle To The East』出場を強調した。「ビーニマンとのクラッシュを煽り、闘争や恨みをもたらし、アーティストのキャリアをMush Upする様なステージには出たくない」というのが出場拒否の理由。12月22日ペッパーズ(アップタウンのクラブ)開催のケイプルトン単独ショーにボウンティが来たことで、ボウンティにリスペクトを示した意味もあるのか。

 スティング97年の後、「命ある限りスティングには出ない」と宣言したボウンティ主催のショー、『Saddle To The East』、バッドマンのショーさ。ケイプルトン出演もタイムリーな宣伝となり、会場は満員御礼、イーストキングストンにスティング並みの観客が集まった。出演はバッドマンの誉れ高きボウンティ大将の下、Lexxus、シャム、TOK、モンスター、スケアデム、Na Na Na、っとそれからアントニーBのステージも良かったし、Ward 21、Kiprich、Chico、Chicken、Frankie Sly、Copper Cat等の新人軍もそのバッドぶりは特筆に価する。Na Na Na、っと。

 ファイアマンことケイプルトン、「More Fire!」は99年の流行語大賞だ。会場は火だらけで、Run Come Stand Up Ina De Fire(翌日チャーリー・チャプリンに「一人で火の中に立ってろよ」と言われたが)。会場で売り出したMore Fireライター(百円ライターにケイプルトンの顔写真のステッカーが貼ってある)は一時間で完売。会場のファイア加熱ぶりは史上最高、ステージライトまで消して一斉にモーファイア、何かの儀式を彷彿とさせるモーファイア、カルト教団の様??

 ショーは大成功、スティング対抗作戦も大成功Cha、Cha、Cha、で終わるはずだったのが、今年も起きてしまったガンショット。一人が撃たれて死亡(詳細は発表されていない)、逃げ惑う群集がパニックに陥り怪我人も出た。前年度もトラブルだったこのショー、会場の立地条件が悪い。セメント会社所有の空地で、空港から市街地に入る海沿いの一本道に面しており、朝一番のフライトに乗り遅れる人続出、おまけに危険度一、二を争うWareika Hillを見上げる土地柄、渋滞中に山賊に強奪された車続出。来年は会場を変える事を余儀なくされるだろう。亡くなった青年の葬式代はボウンテイが全て面倒をみるそうだ。

 一方、80年代後半を代表するアーティストが多数出演、平和ムードではじまったスティング99。速やかなバンドチェンジ、MCに人気コメディアンやディスクジョッキーを起用し観客を飽きさせず、ショーの進行も良好。前日の『Saddle…』に比べれば、平和この上なし。各アーティスト共趣向嗜好を凝らせたステージで、ここにすべてを書けないのが残念だ。スクイドリー・ランクスのStick A Pinスタイル(ビーニ、エレファント、ゼブラが槍玉にあげられた)、ピンチャーズ、コートニー・メロディー、リトル・ジョン、トリスタン・パーマのクラッシュ。シャムのステージに登場したのは何と(前夜と同じ格好の)ボウンティ・キラー、ビッグ・プレゼントでBuss De Place。えっ命ある限り? ジャマイカ男に二言は、ある。Lexxusとシズラとエレファント(一体どういう組み合わせ?)、ケイプルトン不出場の穴埋めに、Mr.レンがシズラを呼んだらしい。ステージに特大セラシアイの旗を掲げ、ジャー、ラスタファー・アイ。夜明けに全身アーミー・ファッションで、トリのビーニマン登場。トレンチコートから取り出したるは真っ赤な消火器、やってくれるね。合言葉は「More Water!」、確かにケイプルトンはHottestアーティストさ、でも僕はBiggest、とリリックスの水飛沫が氾濫。この頃仲良しのハリート・ドラーもステージに呼んで、世界一のレゲエ・ワンナイト・ショーの最後を飾る。この時期、ほぼ毎晩ステージをこなすビーニマンは、女子供のアイドル、エンターテイナー。ボウンティはプアピープルの代理人、ヤーディマンのリーダー。ケイプルトンは教祖さま。火と水の戦いは続くんだろうか。

 ダンスホール流行の移り変わりは超激しい。年末年始はそれを見事に見せてくれる。今年はペントハウス・ファミリーファンデーもカムバックして、例年以上にイベントが多かった。来シーズンはHotter, Bigger, Badderになること間違い無し。
BE DE DE!