「Buddha Brand 、Tokyo No1 Crew、K.O.D.P.だとNo2、Riddimは今回200、そういう感じ? キエルマキュウだと76号、うはははは…やり手は即座に掴みを掴む誇る以前に唸らす多く(聞き取りのため、お見苦しい箇所があるかと思います)って感じで、今日は凄いライヴをMoominとこだまさんとスペシャル・ゲストにDJ
Shinco、Dev Largeでやるんで見てってください…とりあえず、インディーズ系のストリート雑誌の走りのモノですよね? こういう雑誌が10何年も続いて、200号を迎えるっていうのは凄いめでたいことだと思うんで、いつもお世話になってる小磯さんをはじめとするOverheatのみなさんに、俺達なりの恩返しって感じで…」(Dev
Large)
「はい、ナンバー34、Moominです、行きます(笑)、えー、まぁ、Riddim
200号記念ということで、おめでとうございますという感じなんですけど、それ、みんな言ってるんですよね(笑)…今日のライヴはね、Shincoさんとやるのも初めてなんで、凄く光栄だなって感じで、凄くいい人っていうかね、やってて凄くやりやすい人なんで、なんか、こう、楽しいですけど(笑)。今日はDev
Largeと僕とShinco氏と3人でやるって感じなんですけど…やるようになったきっかけっていうのは、Dev Largeもずっと一緒に曲を作ったりしていたんで、そんでDev
LargeとShincoは″SDP″っていうイベントをやってたりするんで、そういう繋がりなんですけど…凄いやってて楽しいです」(Moomin)
「Riddimの始まりってのが、自分達のやってる音楽を、なかなか取り上げてくれないから(笑)、自分達でやっちゃおうみたいな感じで始めて、まぁ、それより、今日みたいなこういうイベント…と同じだと思ってるんだよね」
1999年、11月、20日、新宿リキッドルームの控え室、奥の方では今夜出演するミュージシャン達が談笑しているのが聞こえてくる。僕が話しかけているのは、オーバーヒートの総帥、ダディEC。彼は照れながらも熱心な口調で続ける……「たまたま(Riddimの)ページが少ない、薄いだけの雑誌をやってる話しで…なにか本当にやりたいことは、自分が聞きたい音楽、ほら、今日Krushとこだま君が絡んだりとか、ShincoとDev
Largeが絡んだりとか、要するにレゲエだけじゃなくて、いいものの、基準は色々あると思うんだけど、自分にとっての、僕が思ういいものっていうのは全部繋がってると思ってるんですよ。だから、そういう意味でこういうものを紹介する。それはだから、紙(Riddim)でやってることの、実際にやったモノが、こういうこと(今晩のイベントのこと)だって僕は思ってるんですけど。勿論、僕とこだま君とか皆で考えたんだけど、でも、Krushと一緒にやったらとかって言ったりしたのも、第一声は確かに僕かもしれないですけど。まぁ、こういうことが出来て、僕が一番見たいことをやることが出来て嬉しい…たまたま、その会議で発言してしまったから(笑)…音楽はジャンルじゃないって思ってるから…Riddim200号記念はね、意味はないんですよ。だから、変な話、自ら作る竹の節みたいなもんで、別に200号でも、50号でも、55号でもいいんですけど、ま、こういう200号っていうのを一つの言い訳にして、こういうことが出来て、それで、本当に嬉しいのは、今日来たお客さんってほんと音楽ファンでしょ? これはなにか面白いかも知れないってことで来てくれてる…それが一番嬉しい」
もし、これがダディECでない人の発言だったら、レゲエだけじゃなくってっていう部分が何となくエクスキューズめいて聞こえたかも知れない。だが、彼よりレゲエを知っている人は日本でも数えるほどしかおらず、つまり、レゲエの音楽としての革新性、ストリートから生まれてきた耐性、民衆の音楽としての必要性、リズム、ドラムとベース…こうした一切合切レゲエの全て、素晴らしさを知っていて、レゲエをこの国日本でずっとプロモートしてきて、それで彼は言っているのである。だから、説得力がある。音楽にジャンルは関係ない…僕は彼に簡単にお礼を言って、その場からステージの方へ向かう。
Rankin Taxi、Thunder KillaによるTaxi Hi-Fiがステージに向って左側に設置されており、青いスピーカーが美しい。だが、その前に近付いてRankin
Taxi達の表情を確かめようとすることはとうてい無理な相談だ。今夜は本当に足の踏み場もないぐらい混雑しているのだ。リキッドルームに行ったことがある人なら判ると思うが、ステージに通ずるドアを開いた途端に見えるのは人の背中、背中、背中…所謂ロビーやバー周辺には、このイベントをサポートしたPanasonic
RIDDIM VOX、Hennessy PUREWHITEのブースがあったり、関係者や音楽ファン達でごった返しており、その中で、僕はSDP(スチャダラパー)の3人を発見することが出来た。彼らはニューヨークに滞在し、ビースティーボーイズのアドロックとレコーディングを済ませてきたばかりなのだ。「Riddim200号おめでとうございます…ただただ、凄いです…志しが高いです」。人の話し声が五月蠅い中で彼はコメントをくれる。
最近、設立されたレーベル、Harddiscからインストゥルメンタルのブレイク・ビーツの12インチ・シングルをShincoはリリースしたばかりである。彼のトラックメイカーとして評判は最近ずっと右上がり、高まっていくばかりだが、このコンピューターズなる謎のグループをフィーチャーした12インチ・シングルも例外ではない。Shincoに大きな尊敬とプロップを。彼は後ほどステージに上がる予定である。
ドア越しから遠くの方に見えるのは…紹介するのが遅れました。Dub Station Band、こだま和文、増田おさむ、河内洋祐、秋広真一郎、北村哲、エマーソン北村、そして、Asa-Chang…観客が少しずつDub
Station Bandのヴァイブに染まっていくのが判る。観客には本当に色々な人がいることが判る。Bボーイ、スーツの人間、オフィスで働いている様な女性、髭を伸ばしてカラフルな麻のバッグを肩から掛けている人、こだま和文の名前を何処で知ることが出来たのかという様な若い層…視線を遠くのステージから近く、左に投げると、卓に向かっているダブマスターXの姿が認められる。
ダブマスターXは今日ステージに立っているメンバーにもそういう人もいるし、また楽屋や舞台裏で働いている人にもいるだろうが、こだま和文をずっと見てきた人間の一人であることには間違いがないだろう。彼の仕事が一段落ついた時に僕は楽屋で話を聞くことが出来た。
「ダディECに頼まれれば、やるしかないから」みたいなことを冗談めいた口調で連発した後、だけど、何が嬉しいって、こだま和文の今日のトランペットを聞くことが出来て嬉しいという様な話を彼は始めた。彼が参加していたミュート・ビートというバンドのことを何気なく僕が口にすると、彼はこだま和文というアーティストが確かな感触で音を出しているんだってことを強調する。「Dub
Station Bandね、これは続くんじゃないの」と秘密めかした口調で彼は言う。
実際、ステージ上のこだま和文は聴衆を引きつけて離さない。『ドレッドビート・イン・トーキョー』からのナンバーや、『Kodama
& Gota』からの曲、カヴァー曲などを織り交ぜつつ、確実にこだま和文の世界に聴衆を、袖から覗いているスタッフ達も含めて、皆を引きつけてやまない。Port
Of Notesの魅力的なヴォーカリスト、畠山みゆき嬢の声とこだまさんのトランペットが響きわたる。素晴らしい一瞬。
「もともとこだまさんがダブル・フェイマスを聞いてくださって、そこでライナーノーツを書いて貰ったりして…私は勿論昔からこだまさんのことは知っていましたけど。リハの時からですけど、こだまさんって凄いです。初めて、隣にいる人からのオーラを感じましたね…う〜ん。それに凄い優しい感じがして…良かったし、凄かったです」(畠山みゆき)
気がつくと、少しずつステージ上の人間が少なくなってきていることが判る。Moomin、Dev Large、Shincoとのセッションが場内を活気付けたり、DJ
Krushの練習したってこんなの出来る訳ない的プレイとこだま氏のトランペットが応酬し、会場を音と照明が青く染めたり…そして、『Requiem
DUB』へと続く。
『Requiem DUB』は、こだま和文がリリースしたCDであり、今晩はそこからの音をこだま和文は一人でステージに立ち、残りのバック・トラックがそこに流される。そして、これが今夜の一つのピークとなった。ここでこだま和文氏は本当に素晴らしかった。僕も含めて、あの場所にいた皆が彼のプレイに吸い込まれていた筈だ。驚異的だった。最後のロイド・バーンズもにこやかで良かった。こだま氏はMCでもとても感動的なことを言ったが、ここでは正確に再現不可能なので省略する。僕はあの場所にいることが出来て本当に嬉しかった。そして、あの晩のことを、ここRiddimに書くことが出来るのを誇りに思う。そうそう、おめでとう、2000年。
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