1999年12月号

DJ CAM / Voo Doo Tape(Inflamable)

ロード・フィネスもDopeなBeat Maniaと認める仏国のアブストラクト派?DJカムが自身のレーベル "Inflamable Records" からドロップした最新Mix Tape。してその内容はオリジナル・トラックから「Nautilus」等のネタ物、MOP、ミスター・スクラッフまでと実に幅広く、エクスペリメンタルな展開を基調としつつも、ラップ、Vo物がいい場面で顔を出す構成で、ストリクトリー・ヒップホップ・ヘッズにもお薦め。ドクトクの味のあるカットも満載。

THE ROOTS / The Roots Come Alive(ユニバーサル)

今世紀最高最期のライヴ・ヒップホップ・バンドの最新作はその本領発揮のライヴ盤。録音はNYに地元フィリー、パリ、チューリッヒ、の各々の会場でのベスト・テイクを生の臨場感を損なう事無く丁寧にエディットしたもので、コモン参加の「Love Of My Life」や「You Got Me」ではツアーに帯同されたオリジナル・アーティストのジル・スコットが歌ってたりと見ドコロも多く、ライヴのみのマテリアルも存分に楽しめる。また終盤には「What You Want」他スタジオ新録3曲も配置。

MOS DEF / Black On Both Side(Rawkus)

今となっては伝説のUTD、そしてブラックスターを経て天才肌のソロイスト=モス・デフが初アルバムを完成させた。ウェルドン・アーヴィン(!)の生録盤のオープニングから、ダイヤモンドの濃いトラックでヒップホップの基本に立ち返る文字通りの「Hip Hop」、バスタとの「Do It Now」盟方クウェリとの「Know That」、プレミアのビートが熱い「Mathematics」、Qティップとの「Mr.Nigga」と全曲ハズレ無し。ブラックスターに続いてここまで黒いアルバムを作るとは…。モス・デフ恐るべし。

DJ REVOLUTION / R2K Version 1.0(Black Berry)

今や人気最高のスクラッチ・テクニシャン=DJレヴがミックスするアングラ・ショウケース。本コーナーでも紹介済みのプラネット・エイジアやDr ウープ、レブ「Forever」等の商売のウマい "ブラックベリー" 音源は元より、今年前半の文句ナシのスマッシュ=バンピー・ナックルズAKAフレディ・フォックスの「A Part Of My Life」やビッグLの遺作「The Heist」にラスコ、ルートパック、Drドゥーム、ボーイ・ミーツ・イーヴル(=ロイス・ザ5―9&エミネム)等、ツボを得た選曲と、斬新なカットでアッという間の64分。マタマタ彼にヤラレてしまった…。

RAKIM / The Master(ユニバーサル)

あの鮮烈なカムバック作から約2年で早くもソロ第2作が到着。今回も前作のキーマン=クラーク・ケント、プレミアの2人がしっかり "The R" を援護射撃している。中でもグッとくるのはその後者の作品。シングルで聴けた「When I B On The Mic」はプリモらしい疾走感のタイトなプロダクションで主役も活き活きしたフロウを披露。その他ではラゼール参加のビッグ・ジャズ制作曲や45キング制作曲も有。やはりこの人の世界観、スタイルは誰も真似出来ないと痛感。

PROMOE / Off The Record(Street Level)

今月の特選アングラ12吋盤。1枚目はジャケットが渋スギるプロモーのコレ。レゲエっぽい節回しからストレートなバトル・ライム(少々LLっぽい部分もある)まで、声色自在な新進MCのこの曲は、マーク&DJテクニックによるエレピのシンプルなループが格好いい。だが一番の目玉はマイティ・マイ(ハイ&マイティ)作のストリングス物クール・トラックでファンキーにセルフ・ボースティングを決めた「It's Promoe」辺りか。悲哀感漂う「Poor Lonesome Homeboy」もイケる。

APANI B / The Specialist(Infinity)

本誌にインタビュー記事が出た事もある要注目のオンナMC=アパニ・Bと、上のマイティ・マイとはイースタン・カンファレンス仲間となるラシードとC・レイズ・ワルツの3人の 'Microphone Specialist' が持てるテクニックとボキャブラリーを駆使して挑む強力カット。両面共にかなり壊れた感じの何か足りない(ようで実は足りている?)妙なビーツでいい。しかし制作者クレジットにはロブ・デニーロとカイザー・サザーランドというウソ臭い名が…。売り、は矢張りアパニ・Bの胸元をえぐる直球ライム。降参。

MIB / A.M.S. (ハードディスク)

CISCO発のジャンルの壁を越えた新レーベル "ハードディスク" からの記念すべき第1弾はS.D.P.のShincoのソロ・プロジェクト、その名もM.I.B.(Meguro Incredible Beats)。両面共にインストのブレイク・ビーツ物で、表題曲は馴染みのあるあのピアノ・リフにサイバーなベース・ラインが気持ちいいアッパー・トラックで、対する裏面曲はよりニュー・ウェイヴ・ディスコ色の強いディープ路線、共に後半の展開が面白い踊れる仕上がり。シンコの懐の深さを思い知る1枚。次はTsuchiだ。

2WIN DOPE / 非情の狼たち(フクロウ / ピュアサンド・ウエスト)
「Ghetto Red Hot」以来2年振りとなる "オリジナルあかいめふくろう" ことKensawと福井ゲットー・フレイヴァーのMC Ichi(元3Aブラザース)のジョイント(今回より2Win Dope名義に)。"非常の狼たち" は超ドープな暗黒ビートに更に研ぎ澄まされたMC Ichiのサイコなライムが乗る2Win Dope Style。併録の「Dope To Carry」もヤバさではタメを張る。又、日のみあの「Ghetto Red Hop(Feat.Jumbo March)」をカップリング。1999年最期のドープ・シットは本作に決定。

ノックターン / Nocturn Spark(Pヴァイン)

中々『オンナMC』に陽があたらない(というか育たない)シーンに風穴を開けたのは名古屋のホーム・ガールズ=ノックターン。ハスキーなシャンテばりの力強いスタイルで押しまくるMomoと、今っぽいライミングでニートなフロウをふりまくChibisachiのコントラストの効いたデュオは本当に今までなかったタイプ。MujinaのRyuji、アキソルの曲でも有名なレゲエ・シンガーMachacoやご存知、尾張名古屋のマーリィ・マールこと刃頭、DJ Olee Louのサポートぶりもバッチリのデフでフューチャリスティックなデビュー作。これぞ名古屋クイーンズ。