1999年12月号

BE I STRONG / SIZZLA [XTERMINATOR / V P / VPRL1563]

エクスターミネーター音源の本作は、全てシングル未発表曲で構成されている。ハッキリ言ってかなりの秀作。最近「シズラはもう終わった」的な発言を耳にすることもあるが、それは単に初めて彼の声を聞いた際に感じた心に叫びかけてくる衝撃的なスタイルに慣れてしまったというだけで、彼の奥深いところに流れている信念を感じとれない人達のたわ言に過ぎないのだ。それを見事に実証した作品。[輸入盤](根岸誠)

ONE MISSION / CAPLETON[J&D / JDCD-0013]

「モーフィヤ、モーフィヤ」で島での人気も過熱中のCapletonのニュー・アルバム。とは言ってもここ1、2年の新旧織り交ぜたベスト盤的内容です。“Manatee”や“Henfield”といった少しマイナーなレーベルからの音源もあるが、どの曲もダンスで人気の曲ばかりで、吠えまくりのDJが冴え渡っている。後半の4曲はナゼかAnthony Bが収録されていているけど、影が薄いのが少しさみしい気も。[輸入盤](坪木良典)

REALITY CHECK / LMS[GERMAIN / VP / VPCD1565]

モーガン・ヘリティジの弟分にあたるLMS。ペントハウス、HMGなどからのシングル・リリースでにわかに人気が出てきた注目グループだが、早くもファースト・アルバムをリリースした。弟分だけに、どことなくモーガン・ヘリティジに似たところもあって、彼らが好きならきっと満足いただけるアルバムである。ペントハウスとの共同プロデュースで、サウンドも極上。本当にいいアルバムですよ。[輸入盤](板倉隆也)

SCARED FROM THE CRYPT / SCARE DEM CREW
[TVT / TVT6640-2]

暴れん坊の不良4人組Scare Dem Crew、1stアルバム。個々の作品のヒット曲、4人揃っての元気一杯の曲等々、彼らの魅力がギッシリ詰まっています。未発表の「Scare Dem Soca」は超はじけまくっていておもしろいですヨ。そしてビックリしたのは「Natural Sensi」、なんとデジBのあのトラックです。聴けば貴方も「こんなのあったんだ〜」と思うでしょう。ダンス・ファンは要チェックの1枚!![輸入盤](坪木良典)

ROOTS & CULTURE / AL CAMPBELL
[REGGAE ROAD / JET STAR / RRPRLP2]

このアルバムはヤバいっすよ。アル・キャンベルの最もおいしい頃(個人的にネ)の作品集。録音はチャンネル・ワン・スタジオ。なぞの多い80年代初期のサウンド・システムでヒットしたあの曲、この曲のてんこ盛り。日本ではあまり注目されることは少ないシンガーではあるが、ジャマイカ、イギリスなどでは絶大なる人気を誇るシンガーである。「Jahovia」「Jah Love」などの名曲いっぱい![輸入盤](板倉隆也)

ROD TAILOR / ETHIOPIAN KINGS 1975-80
[PATATE RECORDS / PRP003]

パリのパテイト・レコードよりリリースされたベスト・アルバム。今でもUKそしてヨーロッパ等各地にあるサウンド・システムでは定番アイテムとして知られている曲がズラーっと一同に登場。バックバンドにレボリューショナリーズ、ルーツ・ラディックス。ミックスはキング・タビ−スタジオでオーナーのキング・タビ−、そしてサイエンティスト、プリンス・ジャミー。その手の人達にはハズレなしのアルバム。[輸入盤](長井政一)

HEAVYWEIGHT DUB / KILLER DUB / INNER CIRCLE & THE FATMAN RIDDIM SECTION
[BLOOD & FIRE / BAFCD029]

今ではすっかり和んでしまったインナー・サークルだが、70年代、ジェイコブ・ミラーが在籍してた当時はヒリヒリするような名作をいっぱい出していた。お馴染み、Blood & Fireからの本作は、そのインナー・サークル/ファットマン・リディム・セクションに焦点を当てた傑作ダブ・アルバムの2 in 1。オリジナルは77年の『Killer Miller』と78年の『Wanted』。ミックスはマキシミリアンとジャミーが担当。[輸入盤](大場俊明)

VP RECORDS 20TH ANNIVERSARY / V.A.
[VP / VPRL1568]

僕は昔、レゲエのLPは全てVPから出てるモノだと思ってました。そんな米、レゲエの会社最大手VPの20周年記念盤。79〜99年まで一年を代表する、全20曲。ガキだったJr. TuckerからMr.Vegasまで特別なテーマに沿っての選曲では無い分、バラエティに富んだ内容。時代の移り変わりなんかも見えてきたりして、レゲエが好きだったら必ず持っていなければいけないような気にさせられる2枚組。[輸入盤](鎌田和美)

JAH WARRIOR SHOWCASE / V.A.
[JAH WARRIOR / JWCD015]

イギリスのJah Warriorからのニュー・コンピレーション。今回はヴォーカル、MC & ダブ・ヴァージョン付きのショウケース・スタイル。ラインナップされた面々はテナステリン、ヒューイ・アイザッチャー、アフリカン・シンバ、トニー・ルーツ、カルチャー・フリーマンの6アーティスト。スプリング・リバーヴがギンギンに効いたダブ・ヴァージョンが脳ミソにグイグイ…。7インチも同時発売している。[輸入盤](長井政一)

300% DYNAMITE! / V.A.[SOUL JAZZ / SJRLP43]

ソウル、ファンク等をキイワードに集められたレア曲集の大人気シリーズ「Dynamite!」の第三弾。ちょっと視点を変えて聴いてみるとこんな選び方も有りという曲ばかり。それが逆にレア・ソウルなんかをあさってる人にはレゲエへの入口にもなるだろうし、面白いんじゃないでしょうか。普通に考えれば節操が無いような気もしますが、なかなか手に入らない曲も結構入っているので要チェックです。[輸入盤](鎌田和美)

5THエレメンツ/バウンティ・キラー
[ビクター/ VICP-60768]

以前本誌インタヴューでも答えていた通り、今回は自身のバックグラウンドに立ち返った、かなりハードコアなダンスホール路線で統一。ファンが他ジャンルとのコラボレーションに注目しているこの時期に、こういった1枚をドロップさせること自体が鋭い認識力と判断力であって、常に他より数歩抜きんでている証明。まあ、そんな堅い事を抜きにしても、自然に毛穴が開いてしまう位、男臭さ満点の1枚。(根岸誠)

いろいろないろ 2000 パーティ・ミックス/V.A.
[TDKコア / GST-CD001]

98年春に発売された女性アーティストによるオムニバス『いろいろないろ』の続編。実は本作、レコード会社のゴタゴタでお蔵入りしそうになったが、プロデューサーのシスター・カヤの底力で、やっと日の目を見れることになったもの。タイトル通りバラエティ豊かだが、ノンストップなだけに統一感が出て楽しみ倍増。トラック・メイカーには上代学、持田雅昭、森俊也といった安心できる人材を起用。(大場俊明)

ビッグ・ショット '99/V.A.[ジェム・トーン / HMS-10]

今年7月に新宿ロフトで行われた同タイトルのスカ・イベントの模様をパックした作品。参加アーティストはスカパラを頭に、Cool Wise Men、Sideburns、Ska★Rockets、Silver Sonicsと本誌でもお馴染のバンドばかり(残念ながらDeterminationsは未収録)。イベントには僕も足を運んだが、超満員の会場の熱気とそれに応える演奏者達のヴァイブスがビシビシ伝わってくる。粗削りだがスリル満点。(大場俊明)

ディーヴァズ・ライヴ/V.A.[BMG / BVCA-21055]

ブランディー、ホイットニー、メアリーらが一堂に会したチャリティー企画によるライヴ盤。上記の旬な人々によるお馴染みのヒット曲の再演が本作の売りであることに異論はない。ただ、その荒々しくもふくよかな表現力でもって、ロックとカントリーとR&Bを合わせ飲んでしまうティナ・ターナーとチャカ・カーンの熱唱に、まずはリスペクトの念を禁じ得ない。「根っこあっての先鋭」を強く感じさせる盤だ。(石澤伸行)

イン・リターン/ショーラ・アーマ[WEA / WPCR-104572]

2年振りの2作目。D・インフルエンス等のUK勢に加え、ジャーキンス兄弟、ベイビーフェイス、アリ・シャヒードといったUSトップ・クリエイター陣が脇を固める。こんな大舞台でも、彼女は飽くまで制作に対するこだわりを見せ、その歌唱においてもメロディを丹念に辿ることで彩りを加えるという効果を狙っている。デビュー以降に彼女が掴んだはずのものが、静かではあるが確実に息づいた作品だ。(石澤伸行)

レイヴ・アン2・ザ・ジョイ・ファンタスティック/
[BMG / BVCA-21060]

殿下がアリスタに移籍して最初の新作。チャック・D、メイシオ、イヴにシェリル・クロウといった外向きなゲストを招きながらも、プロデューサーのプリンス(?!)が繰り出す音には、ヒネたファンクネスがたっぷり仕込まれていて
どこか原点回帰なベクトルも感じさせる。ダンスの享楽! 唯一無二のラヴ! ある年代にとっては薄気味悪くも体が先に反応してしまうはずのデジャヴ的魅力が、本作には満ちている。(石澤伸行)

ジャゼイ/ジャゼイ[ユニヴァーサル / MVCU−24063]

フロリダはオーランド出身の4人組優等生コーラス隊。この地域性はそのままグループの素朴な性格へとつながっているが、ジェイミー・ジャズや元トゥループのスティーヴ・ラッセルらによるヴァラエティ豊かな楽曲も手伝って、練られた声の重なりを駆使した鮮やかな身のこなしが際立つ男衆だ。メロディックな曲によくマッチする甘い感触も、確かなスキルに裏打ちされたものだから、ダレることがない。(石澤伸行)

ライヴ・フロム・ザ・ブリーディング・エッジ/カーティス・マントロニック[カッティングエッジ / CTCR-13125]

昨年初のソロ・アルバムで前線復帰、今春にはアンダーワールドと来日し多くのオールドスクール/エレクトロ・マニアを狂喜させた彼の新曲、ライヴ、リミックスをまとめた事実上の2ndアルバム。中でも圧巻なのは中盤〜後半にかけての生録トラック。畳み掛けるエレクトロ・ビートとヴォコーダーに失神者続出!? キャッシュ・マネー、ディージェイパンクロックのリミックス曲も◎。因みに彼、JA生まれだっだりする。(二木崇)

シンプリー/TEK 9[ソニー/ AICT-114I]

今や数多くのプロジェクトを手掛ける4ヒーローのディーゴによるソロ・ユニット、テック9。ソウルやジャズをベースに持ち、デトロイト・テクノを愛しブレイクビートをクリエイトするディーゴが彼のもう一つのベーシックであるヒップホップにピントを合せたアルバムをリリースした。タイトル通り贅肉を削ぎ落とした骨格としてのヒップホップ。芯は太い。これでまた一つディーゴの視野の広さが証明される。(高橋晋一郎)

キープ・イット・アンリアル/ミスター・スクラッフ
[トイズファクトリー/ TFCK-87986]

9月の“Ninja Tune Night”でのプレイが記憶に新しいマンチェスター生まれのブレイクビーツき◯がいの2ndが日本盤で初登場。今回もダウン・テンポのまったりしたトラックで和ませてくれる。歌入りの「Honeydew」はミリタント・ビート(彼はビム・シャーマンも手掛けた事有)で、ルーツ・マヌーバ参加曲はファンキーなヒップホップと一筋縄ではいかぬ構成も流石。ジャケ絵そのままのユーモア・センス溢れる怪作。(二木崇)

エイプ・サウンド/NIGO[トイズファクトリー/ TCCC-88227]

Nigoのアルバムが遂に全貌をみせた。参加メンバーのマニー・マークやベン・リー、コーネリアスからスチャダラのボーズ、四街道ネイチャーのKZAにジェームス・ラヴェルといった顔ぶれに囲まれ彼自身はドラムを披露し、そして勿論このアルバムのトータル・ディレクションも担当。圧倒的な人気を誇るA Bathing Apeのヘッド・クリエイターが作り出すカラフルなサウンド・メイキングはバランス感がやっぱり絶妙。(高橋晋一郎)

99/9 '99 野音/トーキョーNO.1ソウル・セット
[スピードスター/ VIJL-60042]

日本全国11ヶ所13公演行われた9 9/9ツアーのファイナルとなる今年6/26の日比谷野音でのライヴを収録したドキュメント・アルバム。普通のバンドでもなく、勿論単なるヒップホップ・チームでもないソウル・セットの独自の方法論が素晴らしい成熟をみせるナイス・ステージ。グルーヴもメロウもポエトリーもソウルセット・カラーで身にまといながら今まで誰も見つけられなかった到達点に辿り着いてしまった。(高橋晋一郎)

トゥ・カム…2アナザー・ヴァージョン/サイレント・ポエツ[トイズファクトリー/ TFCC-882225-6]

先に発表された彼らの6枚目のアルバムを2枚のリミックスCDに…という企画盤。エンジニアの渡辺省二朗とのコラボレーションによりエフェクティヴなダブ・ミックスを施した一枚と4ヒーローやビョークのアルバムへの参加で知られるエバートン・ネルソンによるストリングス・アレンジを全面に取り入れた一枚という構成。もともとがダブ・テイストなだけにダブ×ダブでより実験的な音空間が誕生している。(高橋晋一郎)

ニューラテネアーズ 2/V.A.[P-ヴァイン / PCD-23032]

コビキティのラテン、アフロ・キューバン、ボッサ・サウンド専科ニューラテネアーズ発のグレート12吋盤集第2弾。前回はジャザノヴァ、ビートレス、カール・クレイグといった面子に目を奪われた人も多いだろう。今回もカプリースやピーター、そしてカームやスノウボーイのジュー・クラウゼ・ミックス等、ハウス・ファンも納得のニュー・クラシック集に。これが最先端のエレクトリック・ミュージック。[輸入盤](二木崇)