Moominのセカンド・アルバム『Moments』が7月28日に発売されて約1ヶ月経った9月に彼自身初となる全国主要都市5ケ所を廻るツアーが行われた。今年は9月といっても日本全国残暑のおかげで、各地ともまるでこのツアーのために秋の訪れが遅らされているかのような天気の良い日が続いた。今回のツアーは7〜8月のクラブ・ツアーとは異なり、バンドを従えてのライヴ形式によるもので、結果から言ってしまうが、観に来れたクラウド達には生演奏と絡むMoominとその仲間達のショウにかなり満足したはずだ。
ここでその仲間達を簡単に紹介してみると、日本のレゲエ界では一目置かれている面子が集まったのに気付く。ゲスト・シンガーとして元トキワの歌姫であり、Moominとは旧知の中でレーベル・メイトでもあるPushim。そして「Guidance」、「Happy
& Free」では欠かせない日本屈指のレゲエDJ、Chozen Lee(札幌、東京のみ)。同じく日本屈指のDJで軽快かつ勢いのあるコンビネーションを魅せてくれた三木道三(大阪のみ)。さらに脇をガッチリ固めるMoominバンドの面々。ベースに前号で紹介済みの海の家Oasisの店長であり、日本No.1ダンスホール・バンドと呼声の高いホームグロウンのTanco。そしてV.I.Pバンドの一員でありMoominの曲を数多く手掛けているギタリスト堀口馨とキーボードの外池満広。ドラムに元ジーザスでリトル・テンポのライヴでは欠かせない大石孝司。パーカッションに同じくリトル・テンポのライヴでも活躍の田鹿健太。コーラスにはBird、Sugar
Soul、Acoなどで大忙しのAsatoと、元スーパー・バター・ドッグで現在UAのツアーに参加中の山口めぐみ。と、名前を挙げてみるととても豪華な顔ぶれだ。
ショウの内容の方は、何度かMCを挟みながら、Moominのファーストからセカンドまでほぼ全ての曲をテンポよく聴かせていった。ショウの中盤「過ぎゆく時間の中で」からPushimが登場し彼女のソロ曲を2曲披露している間、Moominはステージから下がらずコーラスを楽しそうに歌っていた。そして再びヴォーカル・マイクはMoominの元へと戻り、4曲歌い終えると札幌、東京会場のみChozen
Leeがゲストでフィーチャーし、「Happy & Free」、「元気でなにより」、「Guidance」と立て続けに客を沸かしつつ、彼独特のメッセージあるMCを混ぜて会場に一体感をもたらした。他の会場でこれらを観せられなかったのは本当に残念。それと急遽、大阪だけ三木道三が登場し「Summer
Riddim」を行なうこととなり夏の「横浜レゲエ祭パート2」以来のコンビネーションを披露してくれた。
今回のツアーの目玉曲としては、11月20日に発売を控えている「My Sweetest」の日本語リリック・ヴァージョンもその一つ。初めて聴くこのヴァージョンにどの会場のファンも噛みしめる様に聴いていたのが印象的だ。ここでその曲が入るCDの説明を加えると「My
Sweetest (Japanese Version)」と「Wing」それぞれのオリジナル・ミックスとリミックスの計4曲で、リミックスはオリジナルと同様に屋敷豪太が担当している。どちらもオリジナルとは違った雰囲気で気持ちの良い仕上がりだ。
話を戻し最終の東京会場で行ったアンコール後の「Move On」では、初の試みであるPushim、Chozen Leeを交えて「Soulful
Dance」を「Move On」の1ヴァースと2ヴァースの間で挟むというライヴでしか味わえない贅沢な曲が聴けた。ラストの曲はみんなお馴染の「Moonlight
Dancehall」で締めくくり、約2時間に及ぶライブの幕は閉じた。
5会場全部をこの目で観て廻ったがどこも素晴らしく、そして心から楽しめた。Moominを支える出演者を含めるツアーのメンバー全員も、もちろん同じ気持ちであっただろう。これは以前からMoominと出会った人は誰もが感じることであると思うが歌やリリックはもちろん、彼の温厚で皆から愛されるキャラクターが自然と周りの人々をそうさせるのだ。これは彼の性格を知らないクラウド達も曲と曲の間のMCなどから感じとれたことだろう。今回のようなバンドでの大きな単独ライブは当分ないが、各地方のクラブ等の現場でMoominの名前を目にしたらぜひ覗いてみて欲しい。なぜなら彼は僕らを本当に楽しませてくれるから。(青木真哉)