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Riddim 200号を記念して、本誌執筆者と編集部で90年代を代表する
レゲエ・アルバムを選定。この10年間で何が生まれ、何が残ったのだろうか?

【SELECTORS】
●ランキン・タクシー
…日本人レゲエDJのオリジネイター。彼が主宰するTaxi-HiFiは今年15周年。現役バリバリのサウンド・オヤジ。
●石川貴教…初代Cisco Music Jamaicaのマネージャーとして94〜95年までジャマイカ在住。現在はReggae Shop Gloria店主。本誌で「Raw Singles」他執筆。
●水野智之…学生時代、横浜でTasteeを立ち上げた張本人。その後Ciscoに入社しレゲエ担当に。本誌では「Rhythm Trk」他、コアな記事を執筆。
●小磯 謙…90年にOverheat入社。数々のレゲエ・コンサートを企画制作。レゲエのみならずヒップホップにも精通。現在はMoomin、Pushimを担当。
●大場俊明…90年にOverheat入社。97年に「Riddim」二代目編集長に就任。

【1990年】

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SHABBA RANKS / GOLDEN TOUCH
[TWO FRIENDS / GREENSLEEVES]

MAXI PRIEST / BONAFIDE
[VIRGIN]

DENNIS BROWN / UNCHALLENGED
[MUSIC WORKS / GREENSLEEVES]

ASWAD / TOO WICKED
[ISLAND / MERCURY]

THRILLER U / ON & ON
[OVERHEAT]

石川:やっぱミュージック・ワークスな年じゃないですか。
ランキン:ニンジャマン、シャバ・ランクス、デニス・ブラウンってもう永久保存の人ばっかり。シャバの『Rapping with The Ladies』なんて現代のヨゴれなコラボレーションの先駆けですよね(笑)。デニスの『Unchallenged』もデボラ・グラスゴーもマキシ・プリーストの『Bonafide』もアスワドの『Too Wicked』もミュージック・ワークスだよね。それにホームT、ココ・ティ&シャバの『Holding On』もあるじゃん。もうハズせないじゃないですか。
水野:やっぱミュージック・ワークスは買い集めてましたよ。当時は凄く聞きましたね。
ランキン:ミュージック・ワークスって言えば2フレンズもね(笑)。
小磯:マイキー・ベネットね(笑)。
石川:シャバの『Golden Touch』は全部2フレンズだよ。
小磯:そうそう、この時代はスタジオがミュージック・ワークスで、マイキー・ベネットがオケ作って、ミックスがスティーヴン・スタンレーみたいなパターンですよ。
石川:この時代はジャマイカからの7インチって殆ど入んなくて、グリーンスリーヴスかVP経由の12インチだから細かいとこが分かりづらいんだよね。
ランキン:まあ、どっちみち1位はシャバで2位は「Close To You」が入ってるからマキシ、3位はミュージック・ワークス+デニスってことで『Unchallenged』。デニスなら『Over Proof』でもいいんだけどね(笑)。
石川:スリラーUは次点ですね。
大場:とにかく90年はミュージック・ワークスとシャバ・ランクスの年ということで。

【1991年】

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NINJAMAN / BOUNTY HUNTER
[DIGITAL-B / OVERHEAT]

BARRINGTON LEVY / DIVINE
[MANGO]

PINCHERS / BANDELERO
[JAMMYS]

FREDDIE McGREGOR / NOW
[STEELY & CLEVIE]

LINTON KWESI JOHNSON / TINGS AN' TIMES
[LKJ]

大場:この年はランキンさんが『ワイルドで行くぞ』でメジャー・デビューした年ですね。
ランキン:これは自分だから番外ね。やっぱりニンジャマンの『Bounty Hunter』(唄いだす…笑)。これでしょう、もうニンジャマン1位。
石川:90年末の「Sting」でニンジャとシャバが対決してニンジャが勝つんだよね。この年の末にニンジャとスーパー・キャットもやってる。あっピンチャーズいいじゃないですか、『Bandelero』。この時ジャマイカに行ってたんですけど「バンデレーロ、バンデレーロ」って凄かったですよ。
ランキン:ジャマイカン・ロカビリー(笑)。メキシコのプレスリーみたいな雰囲気で(笑)。
水野:ジャケットも凄かったですよね(笑)。
ランキン:シャバの『As Raw As Ever』は邦題(生でヤりたい)が良かったですよね。
大場:バーリントン・リーヴィの『Divine』も出てますよ。
ランキン:『Divine』は凄いっすよ。ハズせません! フレディ・マクレガーの『Now』も好きですけどね(唄いだす…笑)。
水野:ミュージック・ワークスに代ってペントハウスが出てきた時代ですよね。ウェイン・ワンダーとか凄い記憶に残ってる。ペントハウスから出てたライヴ盤とか流行ってましたよね。
石川:この年は「Love I Can Feel」が出た年だから、7インチも日本に入りはじめて…やっぱりペントハウスの年だね。でもデジタルBのアドミラル・チベット『Reality Time』とかギターの音がいいLKJ『Tings An' Times』もいいですよね。
小磯:今だに売れるって言ったら『Divine』だよね。
ランキン:今出たニンジャ、バーリントン、ピンチャーズは学術資料じゃなくて、今でも現場で受けて家でも聞けるからね。もう決まり。

【1992年】

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SUPER CAT / DON DADA
[SONY]

GARNETT SILK / IT'S GROWING
[DIGITAL-B / OVERHEAT]

BUJU BANTON / MR. MENTION
[PENTHOUSE]

SHINEHEAD / SIDEWALK UNIVERSITY
[WEA]

STEELY & CLEVIE / PLAY STUDIO ONE VINTAGE
[STEELE & CLEVIE / P-VINE]

大場:メジャー・デビューがキーワードとなる年ですね。
小磯:どこのレコード会社もレゲエ出してっていう年だ。みんな「レゲエ・バブル」って呼んでた時代。ある意味豊作な年だね。
石川:そうそう、凄い売れたんだよね。
大場:JCロッジもソニーから『Tropic Of Love』を出してるし…。
小磯:トミーボーイがレゲエやってたんだよね。それからソニーから出たコブラの『Hard To Wet, Easy To Dry』は「Flex」が入ってる。
ランキン:う〜んシャインヘッドですね。「Jamaican In NY」、もうオバケ。あとブジュ・バントンの『Mr.Mention』とスーパー・キャットの『Don Dada』はハズせません。
石川:ブジュは超イケイケの時代。「Love Me Browning」も「Batty Rider」も入ってるし。
小磯:この頃のペントハウスって安定してて黄金時代じゃないですか。あっ、ガーネット・シルクがいるじゃん。取りあえず7インチは買ってたからね。そう言えばガーネットが出るまでラスタって全くいなかったよね。
ランキン:おっ、スティーリー&クリーヴィの『Studio 1 Vintage』もあるぞ。これ「No, No, No」が入ってますよ(唄いだす…笑)。
小磯:若い人に良い物聞いて欲しいって意味ならそうだね。
水野:この当時ってもう7インチが結構日本に入ってきてて、ジャマイカ制作のアルバムってシングル寄せ集めって感じなんですよね。だからメジャー物のアルバムの方が作品としては面白かったですね。
石川:もう『Don Dada』。メジャーだし。
全員:(パチパチパチ)

【1993年】

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BUJU BANTON / VOICE OF JAMAICA
[MERCURY]

CHAKA DEMUS & PLIERS / TEASE ME
[ISLAND / MERCURY]

BERES HAMMOND / FULL ATTENTION
[XTERMINATOR / VP]

3.TROUBLE FREE / KASHIEF LINDO
[HEAVY BEAT / OVERHEAT]

JR. TUCKER / LOVE OF LIFE TIME
[VP]

大場:一般的にはUB40の「好きにならずにはいられない」とか「Cool Runnings」がヒットした年ですね。あの『100% Reggae』シリーズもこの年の年末から出始めたんですよ。あと「Reggae Super Bash」がスタートしてイエローマンとかも来日しましたし、サウンド・システムも結構来日してますよね。
小磯:結構難しい年ですね。メジャー的にはパトラな年だ。でもメジャー組は殆どスベったんだよね。
ランキン:ジュニア・タッカーの『Love Of Life Time』が出てますね、今は聞かないけどね。チャカ・デマス&プライヤーズの『Tease Me』って「Murder She Wrote」が入ってる奴ですね。「Bam Bam」が流行った年ですか。
小磯:「Bam Bam」って今だに受けるでしょ。ヒップホップ勢にも受ける。
水野:エクスターミネイターもファイヤー・ハウスからスライ&ロビーに代えて、それから「Bam Bam」がヒットしてって…スラ・ロビ系の音が来た年ですね。
ランキン:もうブジュの『Voice Of Jamaica』ってな年ですよ。
石川:もう1位はこれですね。デイヴ・ケリーのマッドハウスが売れ出した年でもあるよね。それとカシーフ・リンドの『Trouble Free』も凄くいいじゃん。よくダンスで聞いたもん。
水野:今から聞くならベレス・ハモンドの『Full Attention』もいいんじゃないの。
石川:この年はビーニマンとバウンティ・キラーが出てきた年ですよ。
小磯:そうだ、とりあえずバウンティが凄いって言ってて、ジャマイカで出てるレコード全部買った(笑)。
石川:あとシャギーの「Oh Carolina」ですよ。
全員:(どよめき)
ランキン:あっ、この年は子育てで忙しかったんだ。

【1994年】

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SANCHEZ / MISSING YOU
[DIGITAL-B / OVERHEAT]

BOUNTY KILLER / NOT ANOTHER WORLD
[JAMMYS / ALPHA ENTERPRISE]

DAWN PENN / NO NO NO
[BIG BEAT / EASTWEST]

..........

..........

大場:ドーン・ペンの「No, No, No」がラジオ・ヒットして、オーバーヒートで来日公演した年です。テラー・ファビュラスもメジャーで『Yaga Yaga』を出してます。
ランキン:この年の12月にガーネットが死んだんでしょ。
全員:(…溜め息…)
水野:シングルが流通してきてアルバムの印象が薄くなってきた年ですね。
大場:そう言えば、渋谷にレゲエ・ショップ・シスコが開店した年ですよ。
小磯:デジタルBがもう不動の地位を築いた辺りだよね。シングル至上主義って感じかなあ。フージーズもデビューしてるよ。
ランキン:バウンティもルシアーノもアルバム出してるじゃん。
小磯:個人的にはサンチェスの『Missing You』がいいな。バウンティはどれを選んだらいいか難しいな。
石川:僕は全部好きですけどね(笑)。トラックでは「Pepper Seed」がヒットした年ですよ。もうサンチェスとバウンティでしょ、この年は。

【1995年】

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LUCIANO / IT'S ME AGAIN JAH
[ISLAND JAMAICA / MERCURY]

BUJU BANTON / TIL SHILOH
[ISLAND / MERCURY]

GARNETT SILK / LOVE IS THE ANSWER
[CUTTING EDGE]

GARNETT SILK / MAMA
[ROOF INT'L / TACHYON]

..........

石川:ガーネットの『Love Is The Answer』でしょ。「Fight Back」入ってるから。
ランキン:ガーネットならルーフ・インターナショナル音源の『Mama』もいいな。「Mama」が入ってるでしょ(唄いだす…笑)。
水野:『It's Me Again Jah』[原題/Where There Is Life](ルシアーノ)。
ランキン:もうそれはハズせませんね。シャギーの「Boombastic」もオバケでしたね。
小磯:そう「Flex」の流れでね。ほんとNYでメチャクチャ流行ってた。
石川:『Til' Shiloh』(ブジュ・バントン)。
ランキン:これもハズせませんね。
石川:ココ・ティもあるでしょ、『How Dem Flex』。
小磯:デジBの奴でしょ。あれいいよね。
水野:僕としてはこの年はルシアーノですね。
石川:この辺からアルバムで選ぶのが難しくなってくるね。そう言えばこの年にジャマイカから戻ってきたんだ。楽しかったぁ。
水野:「Kette Drum」が流行ってて、今までにないラスタ系と言うか、ジャマイカの伝統的なサウンドが出てきたんですよね。
ランキン:うん、ゆっくりでも踊れるっていう黒人の感覚をはっきり出した年ですよね。要するに速くても遅くても踊れると。

【1996年】

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LUCIANO / MESSENGER
[ISLAND / MERCURY]

BOUNTY KILLER / MY XPERIENCE
[TVT / VIRGIN]

ANTHONY B / REAL REVOLUTIONARY
[STAR TRAIL / GREENSLEEVES]

COCOA TEA / ISRAEL KING
[VP]

EVERTON BLENDER / WORLD CURRUPTION
[STAR TRAIL / GREENSLEEVES]

大場:「Riddim」で「日本人の年にしたい」と銘打った年ですね。実際アキ&ソルトフィッシュが日本に戻ってきて『ナー・テク・バック』を出したり、Kodama & Gotaの『Something』が出て往年のファンがたまげた年です。ランキンさんも『Watating』を出してますよ。でもこの年はルシアーノの『Messenger』でしょうか?
ランキン:俺がプロデュースした日本人オムニバスの『Large Up』が出たんだ。個人的には『Watating』も忘れられないですけどね。人には薦めませんけど(笑)。
石川:「今夜はB13」ですね(笑)。いいですよね。
小磯:バウンティ・キラーのメジャー盤『My Xperience』もあるじゃん。アントニーB(『Real Revolutionary』)もあるし。
ランキン:エヴァートン・ブレンダー(『World Corruption』)もあるし(唄いだす…笑)。
水野:ココ・ティの『Israel King』とかは?
石川:バウンティ、ルシアーノでいいじゃない。
ランキン:まず間違いないですね。
石川:う〜ん、普通の人が聞くなら『Messenger』じゃないですか。アンソニーBもエヴァートン・ブレンダーもいいけど。
ランキン:うん、30年後に人に薦めるならバウンティじゃなくてルシアーノですからね(笑)。ここはバウンティには2位に甘んじてもらいましょう(笑)。この年はルシアーノががっちりしてきたのを喜ぶ年ですよね。

【1997年】

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SIZZLA / BLACK WOMAN & CHILD
[DIGITAL-B / VP]

SIZZLA / PRAISE YE JAH
[XTERMINATOR]

BUJU BANTON / INNA HEIGHTS
[PENTHOUSE]

ANTHONY B / UNIVERSAL STRUGGLE
[STAR TRAIL / VP]

THRILLER U / YOUTH
[CUTTING EDGE]

水野:もうこの年はシズラですよ。
石川:シズラの『Praise Ye Jah』と『Black Woman & Child』の二つでいいんじゃない。あとブジュの『Inna Heights』。
小磯:『Inna Heights』はペントハウスか。アイランドともめてペントから出たんだよね。
石川:メジャー組ならUB40の『Guns In The Ghetto』とスリラーUの『Youth』も良かったですけどね。あとココ・ティのモータウン盤『Holy Mt. Zion』も曲は古いけど良いですよ。
ランキン:シズラと同じ「Black Woman & Child」ですね。
水野:結構ラスタですね。
小磯:ベンジ・マイヤーズの『Intimate Relationship』も個人的には好きなんだけどな。
大場:モーガン・ヘリティジも『Protect Us Jah』を出してるけど…。
小磯:うん、でもこれは次のアルバムへの布石だからね。次のは凄いけど。この辺りのデジタルBはメチャクチャ安定してたからね。
大場:メイン・ストリートも頑張ってますよ。レッド・ラット『Oh No It's Red Rat』とかイギリスのティーンズにも人気があったし…、でもアルバムとなるとちょっと難しいかな。
ランキン:若い人に薦める時、このシズラの二つはどっちも欠かせないよね。まあ、完全にシズラとエクスターミネイターにやられたって年ですね。

【1998年】

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BEENIE MAN / MANY MOODS OF MOSES
[SHOCKING VIBES ]

BOUNTY KILLER / NEXT MILLENIUM
[TVT / VICTOR]

JAH MALI / EL SHADDAI
[PENTHOUSE]

COCOA TEA / ONE WAY
[XTERMINATOR]

............

大場:この年は日本人のアルバムが前年よりもググっと出た年ですね。ムーミン、パパボンのメジャー・デビュー盤やアキソル、ハセT、それとドライ&ヘヴィ。オムニバスも凄く出てる。
小磯:でもここに日本人が食い込むのは難しいよね。
ランキン:バウンティ、ビーニ、ジャー・マリ、ってとこに食い込むのはねぇ、誰だ?って感じかな。
石川:俺はバウンティ(『Next Millenium』)だな。
小磯:トピック的にはビーニでしょ。「Who Am I」だよ。
ランキン:ビーニ(『Many Moods Of Moses』)はシングル寄せ集めにしては豪華ですよね。そろそろ君臨させないと…。でも瞬間風速なら絶対バウンティでしょ(笑)。
水野:シングル寄せ集めってのは気になるけど、ビーニは確実に人気がありますからね。ここら辺でやっぱりビーニでしょ。あとモンスター・シャック・クルーみたいに、何人かまとまってるのが流行ってましたよね。
ランキン:モンスター・シャックもヒット曲が立て続けだしね。
石川:バウンティ以外ならベレスの『A Day In The Life』かな。ココ・ティの『One Way』もいいんだよね。
ランキン:あとジャー・マリの『El Shaddai』もね、タイトル曲と「Real Issue」だけなんだけどね。
水野:この年ってラスタ系がちょっとしぼんできて、90年代前半の雰囲気になってきたんじゃないですかねえ。
石川:でも日本の現場的には凄く盛り上がって良かったんじゃないですか。
ランキン:イベントがでかくなってきたよな。俺もマイティ・クラウンと二回クラッシュしたんだ。
石川:来日アーティストが少なかったんだよね。だから逆に日本の現場が盛り上がったのかもね。

【1999年】

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Special Prise

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MORGAN HERITAGE / DON'T HAFFI DREAD
[DIGITAL-B]

LUCIANO / SWEEP OVER MY SOUL
[XTERMINATOR]

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V.A./ DIGITAL-B MEETS MIGHTY CROWN
[DIGITAL-B / OVERHEAT]

............

小磯:リズム的には「Street Sweeper」でしょ。
ランキン:そうだよね。「Street Sweeper」と「Bada Bada」。
大場:今年もシズラは『Good Ways』と『Royal Son Of Ethiopia』を出してますが…。
ランキン:でもシズラは98年にやれることはやっちゃってるんだから。『Good Ways』は好きだけど、流れとしてはもういいかなぁって。やっぱりモーガンの『Don't Haffi Dread』でしょ。あとシンギング・メロディの『Sweeter』、タイトル曲はなかなかいいですよ。
水野:だけどアルバムには、これって曲はなかったですよね。
ランキン:あと「Want You Back」だけだもんね。シングルだけだからなぁ。モーガンは半分以上シングル・カットですよね、デジB系かな。
小磯:これはもうモーガンでしょ。
ランキン:モーガン、次いでルシアーノの『Sweep Over My Soul』で決まり。3位はいらないかな。
水野:この後、バウンティの『5th Element』も控えてますしね。待とうって感じですかね。
小磯:観点を変えれば、古い曲が多いんだけど、『Mighty Crown Meets Digital-B』は今までと全く趣の違うってのがあったじゃないですか。その趣旨と同様のイベントをやったってのは意味があったんじゃないかな。
ランキン:横浜とかでやったイベントと併せ技で特別賞って感じだね。

【1990年代と2000年代】
水野:90年代っていろんな面で進化した10年でしたよね。アメリカの影響が強いから、レゲエらしくなくなってきたってのもある。だからレゲエならではの″いなたさ″ってのを感じる作品は、最近少なくなってきているとは思うけど、土壌は凄く出来上がってきてる。
ランキン:80年代は女の子がつまんなそうにしてて、男がエエカッコしいしてたと思うんだけど、90年代のレゲエは、80年代後半から引き摺ってるけど、女の子が喜ばなきゃもうつまんないって世界に突入してる。つまり女の子に優しいってのが大事なコンセプトじゃないかなって思うんだよね。ルーツだって若いギャルに受けるルーツじゃなきゃダメ。でもアルバム選ぶのは難しいなあ。
水野:レゲエはシングル至上主義だから、日本だとコアな人とそうでない人の差が凄く出ちゃうんですよ。だからアルバム単位だと″作品としていい物″と″時代を反映してる物″とは別なんですよね。それと新しい音源が必ずしもジャマイカから出るとは限らない。ジャマイカではまだ出てないのに、VPとかグリーンスリーヴスのオムニバスに入ってたりするから、オムニバス盤の形態もここ2年で変わりましたよね。
小磯:アメリカではVPがメジャーと対抗出来る位の力を持ってるんだよね。ビジネスにしても、ジャマイカでシングル出した後にアメリカのVPでアルバム出しちゃおうかなって、賢くはなってるよね。
水野:プロダクションがしっかりしてきちゃったから、逆に何でもありってのが薄くなったかも。
小磯:でもこの10年にはそういうのを跳ねのけるアルバムってのが出てるじゃん。基本はシングルだけど、確実に出てるよね。
ランキン:情報が少なかった時代の方が文化は発展するってのはあるよな。でも、それって俺らが勝手にジャマイカに求めてるだけだからなぁ。向こうにすれば何言ってるんだよって感じかもしれないけど。でもジャマイカは信じてますよ。新しい物に土着的な物を織り交ぜるバランス感覚って奴らしか出来ないしね。でも時々は世界をワッと言わせる様なムチャクチャをやってくれればOKですね。日本人がオケ作ってジャマイカ人が歌乗せてワーってなるなんて事も期待してますけどね。