1999年11月号  

Greetings Friends.
●今月はまず8月初めに東ロンドンのVictoria Parkで行われた「Reggae Sunsplash」の話題から。ここUKで「Reggae Sunsplash」が開催されたのは87年(Clapham Commonにて)以来。長いこと待っただけ価値あるショウと成りえただろうか? 答えはイエス、そしてノーである。メディア関係の人間を含む観客全員が会場の中に入るのにかなり苦労した事を除けば、私個人としては何年も会っていなかった友人、シンガー、ミュージシャン、プロデューサー達に会う機会に恵まれただけでも足を運んだ価値は十分にあったと言えるが、この日のために30ポンドも払った一般の観客や、満員御礼にならなかったプロモーターにとっては少々気の毒な結果となってしまった。
 なぜならどう考えても安直で、ケチったとしか思えないアーティストのラインナップだからである。例えばダンスホール部門の出演者は全員グリーンスリーヴス/メインストリート系で、Red Rat、GoofyそしてHawkeyeだったが、彼らのファンの年齢層は16〜25歳位と若く、こうした若者には30ポンドというのは大金だった。こんな額を問題なく払える25歳以上の大人は、若者向けのアーティスト達に興味がなく、もっと大物を期待していたが、その大物スターのラインナップと言えばMarcia GriffithsやGregory Isaacs等だった(因みに故Dennis Brownも含まれていた)。だが彼らは他のショウで毎年定期的に観れるのである(毎度お馴染の事だが、Gregoryは姿を現さなかった。トラブルが少なく信頼のおけるアーティストをもっと低予算でよべたはずなのに、なぜ最初から問題が起こりそうなアーティストに無駄金を使うのだろう?)。
 私も含め会場にいる誰もが期待していたMorgan Heritageだが、早い時間帯のアーティスト、Asian Dub Foundation等にかなりの時間を割かれてしまった結果、ラスタ・ロイヤル・ファミリーには僅か数曲演奏する時間しか与えられなかったのだ。
 だが、ちょっとだけ美味しい所もあった。ショウのトリを務めたWyclef Jeanは厳密にレゲエ・ファンしかいない会場(しかも予想より少ない観客)だったにもかかわらず、Ky-mani Marleyをヴォーカルに「No Woman, No Cry」を演奏するなど実にエキサイティングなパフォーマンスを観せてくれた。またUKレゲエ・アーティスト総勢50名によるDennis Brown追悼メドレーやBrinsley Forde(元アスワド)によるDennisの「Promised Land」の朗読は本当に素晴らしかった。
 ウォーミングアップとしてはまあギリギリOKだったと言えるが、結論から言うと全体的にとても段取りが悪かったし、金銭面で成功したとは言い難く、果たして来年はどうなることやら…。
●もう一人ラインナップに名前があったのに出演しなかったのは、UKのベテランMC兼シンガー兼プロデューサーのKing Soundである。「Reggae Sunsplash」の数週間前にコカイン所持で逮捕されたとのこと。だから暫くの間、彼にお目にかかる事はないだろう。彼は以前にも似た様な容疑で刑務所行きとなっているのに、いまだに懲りてないらしい。
●8月中に行われたもうひとつのビッグ・ショウは、毎年恒例の「Jamaican Independense Celeb-lation」である。今回のラインナップはいつもの様に2つの全く異なる客層にアピールする不思議な内容だった。だが、どちらもこの会場を埋め尽くす数には至らず、普段この会場で行われるショウの観客数を下回る結果となっってしまった。
 その名前通りに本当に金持ちで、Junior ReidとJoseph Hillを足して2で割った様なルックスのシンガー、Rich Kidは良い感じでショウのオープニングを務めたが、もう少しインスピレーションを感じさせる芸名を付けられなかったのだろうか? でも受けは結構良かった。その次に本来もっと注目を浴びても良いと感じている自然体シンガー、Wayne Wonderが会場を徐々に盛り上げていき、Lady Sawへとバトンタッチ。まず彼女はシリアスな音楽ファン(特にラスタ集団)に向かって自らの下品さを前もって詫びた後、いつものとてつもないスラックぶりを披露。15分位は楽しめたが、それからも永遠に止まらず、話す内容もエスカレートする一方で、私は少々ゲンナリしてしまった。
 彼女のために時間が押してしまったため、温厚な巨人、Fred Locksは時間のない中でパフォームしなくてはならなかった。彼は21年振りにロンドンのステージに立つというのにあんまりである。それでも彼独特なしゃがれ声と舌ったらずなスタイルで「Black Starliner」「So Jah Say」「Love And Only Love」「Voice Of The Poor」を含む名曲ばかり6曲を熱唱、私や会場の全員が笑顔でアンコールを呼び求める中、ステージを後にした。後で彼と話をした感じから推測すると、このリスペクトすべきシンガーにまだまだ期待出来そうである。30年前に兄弟で組んだThe Lyrics(主にStudio Oneでレコーディングを行っている)からスタートした彼の音楽人生だが、今だ彼のヴォーカルの才能は衰えを知らない。
 ラストはMighty Diamondsが登場し、観客全員が合唱するという、いつも通りの盛り上がりで締め括られた。最近レコードではあまり業績が良くない彼らだが、ライヴでは会場をわかせる実力がまだまだある様だ。
●Little Royのニュー・アルバムが2枚リリースされる。一枚はルーツをベースにした作品のセクション、もう一枚は未リリースのヴィンテージ作品や長い間入手不可だった70年代のTafari作品を含む『Little Roy And Friends』である。期待しても間違いないだろう。
●現在UKに滞在中であるDJ/プロデューサー、Jah ThomasのMidnight Rock Productionから近々、多くの7インチ再プレス盤やTrinstan Palma、Little John、Barry Brownらのアルバムがリリースされる。また彼は今年末にジャマイカに戻り、新しい作品の制作に取り掛る予定とのことだ。
 それではまた次号。Take Care.
(訳/有賀由紀子)