マンゴとギネップスのシーズンが終わっても、ジャマイカはあつい。今夏インフレで犯罪も多発したが、イベントはポジティヴであつかった。特に毎年恒例のイベントが大きくなっているのが頼もしい。
『スーパージャム』…Nasのノーショーにも関わらずボンティでMash Up。
『チャンピオンズ・イン・アクション』…飛び入りのケイプルトンがブジュとラバダブ。
『ヒップホップとR&B』…K―Ci&ジョジョ、ワイクレフ・ジーン、ノーティバイネーチャー等の出演で成功。シリーズになりそうだ。
『バスティンルーズ』…ビーニが米国スター、ウェズリー・スナイプスをステージに招いた。キマニ・マーリーのステージは期待外れで街中にあふれるキマニ広告が泣くぞ。
『サンフェス』…例年の常識をうち破り2晩連続ダンスホール・ナイトを設けビーニの出る「Zim Zimmerナイト」(ショッキング・ヴァイブス・クルー、ベガス、ゼブラ他、アイドル系又は女の子に人気のDJ軍)とボンティの出る「Can't
Believe Mi Eyeナイト」(ケイプルトン、ブロ・バントン、スケア・デム他男の子に人気の一癖ありそうなDJ軍)と上手く分けたもんだ。「インターナショナル・ナイト」もブジュ、モーガン・ヘリティジ、ゲストにドゥルー・ヒルをよんで最後はグレゴリー・アイザックスらがデニス・ブラウンをトリビュート。今年も納得のラインナップだった。来年こそは来てね。
こういったレゲエのヴァイブスを拝借しようと前代未聞のミーティングを行ったのが首相PJ Pattersonである。祝日をふやしたり、ガンジャ解禁を考慮するふりをしてみたり、一般大衆に少し媚を売る傾向にあるこの首相の開いた討論会。議題は「犯罪とレゲエの関係」。「レゲエ」は国民に影響を与える一番の強い源であり、ジャマイカの慢性的な社会問題である犯罪を鎮静させる助けとなる要素をもつとし、会にはレゲエ界を背負って立つプロデューサー、アーティスト等が招かれた。
ジャマイカのレゲエ、特にダンスホールは社会をうつし出す鏡である。ダンスホールは犯罪に影響し社会で起こっていることがダンスホールでうたわれる。今年のヒット・チューンで暴力的な歌詞と問題になったのはこの欄でも取り上げたボンティの「Anytime」、シリアルキッドの「Shotta」、ベビーシャム「Desperate
Measures」そしてボンティの「Look Into My Eyes」。Sum-Festのボンティのステージでもウケたこのチューンが最近RJRとFame
FMで放送禁止となった。デイヴ・ケリーのリリックスで“検問”に引っ掛かったのはビーニの「スラム」「オールド・ドッグ」、フリスコ・キッドの「ラバーズ」、ボンティの「エニタイム」はクリスマスキャロルの如く聴かれた。その「エニタイム」の騒動さめやまぬ間に「エニタイム」の続編とも感じとれる「Look
Into My Eyes」以下が問題箇所とされる。
●「唯一の友達はこの銃さ」
"The only friend I know is the fun I have"
●「脅しじゃないよ」
"This is not a threat"
●「ナインはここだよ、心配かい?」
"Now you see the nine. Are you norried yet?"
●「どうして僕の腹ぺこ顔がこわいの?」
"Why are you afraid of my hungry face?"
●「それとも腰のふくらみ(腰に差した銃のこと)がこわいのかい?」
"Or is it this thing bulging in my waist?"
「僕」が誰かに「ナイン」をつきつけている図にも見えるし、「僕」のことを気にかけている誰かに現実を告白しているようにも聞こえる。どちらにしても
"I" と "You" はこちら側とあちら側の違う世界に生きている者と感じさせる、すぐ近くに住んでいるのに。ジャマイカの社会を如実にあらわすセンシティヴでどこかせつないリリックスだ。
皆様、このリリックスをどう感じる?