1999年9月号

1.DJ TATSUYA / Adjustment

最近ではあの画期的ネタ曲シンクロ・ミックス・テープ『Terminator Serching』で知られるDJタツタによる "アジャストメント" 音源のミックス物。バイ・ファー・ザ・ドーペストにリトル、タツタがかつて在籍したラディカル・フリークス等お馴染の曲にロック・ティー、DJベース、ジジイジャイらの新作ブレイクをブレンドしたその構成がまず面白い。キック・ザ・カン・クルーとリョウ、NGヘッドの幻の共演曲も入ってるし味のあるミックスで最後まで一気に聴ける。CD盤も有り。ジャケもかなりグッとくる。


2.ノリエガ / Melvin Flynt Da Hustler
[トイズファクトリー]

"Superthug" の大ヒットと数々の客演仕事でトップMCに成り上がったノリエガが満を持して放つ約1年ぶりのソロ第2弾。例の十八番フレーズ "What What!" に代表されるハイテンション・フロウと、ハスラーズ・ライフを綴ったリリック(タイトルに注目!)は、ノリエガ以外の何者でもない。制作陣にネプチューンズ、EZエルピー、トラックマスターズ、スウィズを、客演陣にムッソリーニ他、彼率いるサグド・アウト・クルーの面々を配し、ノリエガ唯我独尊状態。ビーツの新しさにも目を剥く快作。次はカポーンとのコンビでの2作目か?


3.DJ SPINNA / Rawkus Presents Heavy Beats Vol.1
[Rawkus]

ジャケに思わずニンマリくるスピナのビーツ物。とは言え例のエミネムとの「Watch Dees」(何とマッドネスネタ)や、その他ミッシン・リンクスやアパニB&クウェリをフィーチュアしたトラックも4曲収録。正直なトコロ、 "メリー・ジョイ" からのビヨンド・リアルのコンビやポリリズム・アディクツのアルバム等に比べると、彼らしい宇宙的プロダクションは影を潜めてるし、クオリティもマズマズ。ただ、クール&ザ・ギャングネタのシングル曲「Rock」はトラックスとして十分楽しめる。あと同銘柄からのCo-フロウのインスト新作はマジヤバです。


4.スウェイ&キング・テク / ディス・オア・ザット
[ユニヴァーサル]

西海岸で圧倒的な支持を誇るヒップホップ・ラジオ・ショウ『The Wake Up Show』のホストを勤めるスウェイ&キング・テクとメインDJ=レヴォリューションの3人が番組さながらに新旧音源をミックス。RZA、エミネム、ファラオ・モンチ、KRSワンら9MCによる話題の「The Anthem」を始め、ダイレイテッド・ピープルズ他地下物や、エクスクルーシヴ、そしてEPMDらのクラシック物がバランスよくミックスされ、かなりの中毒者からビギナーまでが楽しめるのがイイ。レヴォリューションのコスリも激凄。


5.アグリー・ダックリング / フレッシュ・モード
[ヴァージン]

気の置けないリリースの続く "バッド・マジック" からの第一弾アルバムは矢張り、このロングビーチ出身の白人3人組。本人達曰く、ジュラシック5辺りと仲がいいそうで、それはコーキー(マイス『On The Corner』等で有名)の描くオールド・スクール丸出しのジャケ絵が伝わってくる通り。とにかくさまざまな先達へのオマージュを含んだシングル曲 「Now Who's Laughin'」を耳にして欲しい。そのピュアな心根=ヒップホップ馬鹿ぶりにニヤリとくる筈だから。どこかファーサイドを想わせる "風通しの良さ" が気持ちいい好盤。


6.シャカゾンビ / ジャーニー・オブ・フォーサイト
[カッティング・エッジ]

『Big Blue』に続いてシャカ待望の2nd作が到着。そのシングル曲や、キミドリのカヴァー、ロリ・ファイン(コールドフィート)の悩ましいVoをフィーチュアした曲に、ミュージアム・オブ・プレート=サイコリーとの世にも美しいジョイント、ダボ、XBS、スイケンとのマイク・リレーとこれだけヴァラエティに富んだ内容ながら、全体通してタイトに聴こえるのだから恐れ入る。トラックメイカーとしてレヴェルアップしたツッチーに、より各々の役割分担がハッキリしてきたヒデボウイオースミ。2MC。彼らの "日常" の集大成となるこの "旅路" は本当に魅力的だ。


7. シンゴ2 / 緑黄色人種!
[メリー・ジョイ ]

『Tags Of The Times Version 2.0J』にも収められたシングル曲「Ecdysis」の衝撃さめやらぬ内に、CD2枚組の超大作が完成。テラコッタ・トループス=Mr.ブックナー、キャピタル、DJノザワとシンゴの作り出す世界はこれまでの作品とは異なるもので、狂ったファンク臭と諧謔精神丸出しのサウンド・コラージュ(スレンテンも登場)が鼓膜にまとわりついてくる。またバイリンガル・スタイルで知られる彼だが、今回は徹底して日本語表現に拘っており、教師を刺す少年の話「少年ナイフ」など驚愕のリリック満載、の問題作。勿論僕は断固支持。


8.D.J.KEN-BO / ストライク・ア・ナーヴ
[KSR]

トップDJ=Ken-Boの手によるトラックス物ミックスCD。クルックリン・クランやクラッシュ・サウンズ他のフロアを沸かせたあの曲この曲がズラリ29曲(因みにオーラス30曲目はエクスクルーシヴ物?)。普段こうした "声ネタ系インスト" は、つなぎ的に使われるが、こうしてクイック・ミックスで立て続けに聴いても十二分に楽しいし、素直に盛り上がれる。タイトル通り "神経直撃" モノ。素直にパブロフの犬になれない人は、 "夜遊び" 不足と診断。


9.J-88 / The Look Of Love
[Groove Attack]

毎回アートワークの冴える独 "グルーヴ・アタック" の「Superrappin」シリーズから(因みに今回はR.S.C.のスパイディー・Dが登場)のNewはメジャーからの初アルバムも控えているスラム・ヴィレッジの変名=J―88のトラック。ジェイ・ディーらしい "ゆらぎ" が感じられるビートはひたすら心地良く、上ネタのメロディの美しさも夏の終わりを感じさせてくれる。またジェイ・ディー自身によるリミックスの方は彼の初期仕事を思わせるフシもあり、共に◎。


10.V.A. / Organized Rhymes Vol.2
[The Union]

"ユニオン・レーベル" 発の「オーガナイズド・ライムス」シリーズ第2弾は、OC、キング・T、AZの3曲入り(因みに前回はグールーとチャンネル・ライヴのカップリングだった)。例によって各々プロデューサーのクレジットは無く、OCとAZの哀愁系ストリングス物のトラックはかなり似た印象。正直、共にビートの弱さは否めないが、AZの方は注目のハーフ・ア・ミルとかなりスリリングな絡みを見せてくれる。意外と一番耳残りが良かったのは、渋いピアノ・ループ物で淡々と語るキング・Tだった。


11.BIG L / We Got This
[Flamboyant]

生前の文字通りラスト・シングルとなった。「Ebonics c/ w Size Em Up」をドロップした同レーベルより未発表曲が。表題曲はロスト・ボーイズ(フリーキー・ター、R.I.P)のミスター・チークスをフィーチュアしたトラックでビッグ・Lならではのフロウの切れ味が楽しめる。あと自身の制作による「The Heist」は一人掛け合いのハード・ボイルドな仕上がりで、最後に収録された名曲「Day One」のアムステルダムでのライヴは目玉とでも言うべき "熱さ"。本当に惜しい人を亡くしてしまった。『Black Mask』収録のDITC名義曲も要チェック。


12. REQUIEM / Requiem
[Reality Records]

強烈なダミ声で人気のトラことゴア・テックスと、共にMuro「Weekend Funk#7」にフィーチュアされたスウォード、そしてムーミン「Move On(Remix)」やオースミ、スイケンの曲への参加でも知られるマッカチン…とシーンを代表する新世代MC3人がニセ者MCを黙らせる超強力カット。以前からよく組んでいた彼らだけに、コンビネーションも申し分なく、各々の個性と高いスキルが爆発している。ワタライのいつになく攻撃的なトラック、D.O.Iの的を得たミックスも最高。