1999年9月号


1.ROYAL SON OF ETHIOPIA / SIZZLA

[XTERMINATOR / GREENSLEEVES /GREL255]

Xterminatorからの前作『Kalonji』から約半年、さらにパワーアップしたSizzlaのニュー・アルバムの登場。やっぱりSizzlaは、タダものではない。歌にも磨きがかかり、切なくても、どこか力強く聞こえる彼のDJに鳥肌立ちまくり。正にレゲエである。Lucianoも「In This Time」で参加していて、またその曲が超ヤバイ。その他激ヤバの未発表曲も多数収録されていて、もうチェックしないとダメだよ!![輸入盤](坪木良典)


2.FIONA'S MOMENT / FIONA

[JOE FRAISER / VP / VPRL2095]

現在の女性R&Bシンガー全てに共通する何かを持ってるような気のするこのフィオナ。自分のキャラを分かっているんでしょうか。モニカのカヴァーとか古いR&Bのカヴァーをやっているが、一昔前のUKのラヴァーズにありがちな“カヴァー=原曲が良く耳ざわりが良い”だけではなく、Soulと言い切る程の物かどうかは解らないが、それに近い強さを秘めてる感じがする女性シンガー。お薦めです。[輸入盤](鎌田和美)


3.TELL DEM / ROD TAYLOR

[WSP/ WSPLP-016]

ロッド・テイラーと言えば、70's中期〜80's初期にジャマイカで活躍したベテラン・シンガー。当時から彼はルーツやラヴァーズを唄う硬派シンガーだった。ヘンリー・ジョーンズやUKを中心に活動をしていたマイキー・ドレッド達の下で数多くのレコードを残したのは有名。そんな彼ががUKのWSPレーベルより久々の新作。サウンドは勿論硬派なデジタル・ルーツ・サウンド。リリックもコンシャス。[輸入盤](長井政一)


4.OPEN THE IRON GATE 1973-77 / MAX ROMEO

[BLOOD & FIRE/ BAFCD-027]

オリジナルは75年にUKでリリースされた『Revelation Time』。殆どの曲がLee PerryのBlack Arkスタジオで録音された曲で、本人によって編集された物。それが後に『Open The Iron Gate』というタイトルでUS盤で再発された物の初CD化。このアルバムにだけ「Melt Away」の12"ヴァ−ジョン等を収録。当時の政治状況の中で反体制的なメッセージを込めた彼。今で言うSizzlaみたいな存在?[輸入盤](前田和彦)


5.THE MEANING OF LIFE-BEST OF THE HEPTONES 1966-1976 / THE HEPTONES

[TROJAN / CDTRL-423]

Caltonの音源からJoe Gibbs、Lee Perry等、様々なプロデューサーと組んだ作品の中から編集されたベスト盤。優しげなLeroy Sibblesのアルト・ヴォイスと包み込むようなEarl MorganとBarry Lle-wellynのコーラスが絶妙で曲を叙情的に聞かせてくれる。特にCalton時代の極上ロック・ステディ・ナンバーやStudio One以後のナンバーは、かれらの数多ある作品のなかでもトップ・レベルだろう。[輸入盤](前田和彦)


6.FROM BEGINNING TO END / V.A.

[CONCIOUS / DBHD011CD]

UKルーツ・レーベル、コンシャス・サウンズが今迄にリリースしてきたシングルを編集したコンピ。1stシングルから、最近の物、ダブプレート・スタイル物など色々。93〜96年にUKのサウンド・システムで人気だったTenastelin「Can't Touch Jah」、Denny Red「Original Formula」、King General、Manasseh、Culture Freeman等々。レーベルの歴史を物語る24曲入り。因みに収録曲のシングルは全て廃盤。[輸入盤](長井政一)


7.TAXI DJ LINK / V.A.

[VP / VPRL2098 ]

スライ&ロビーの圧倒的なカッコ良さと、いけてるヤバめのDJのチューンがオンパレード。美味し過ぎて書き切れない事ばかりの好内容のアルバムだ。久々にこのアルバムで "Fed Up" を聴いてすっかり惚れ直しました。最近の日本の音楽シーンの動向からしてもヒップホップDJにも強くお薦めしたいチューンばかりを収録。ちなみに「Many Many」のリミックスのオケは「My Jamaican Guy」を使用。[輸入盤](鎌田和美)


8.STREET SWEEPER ROUND TWO / V.A.

[STEELY & CLEVIE / VP / VPRL2097]

"Bag Pipe" との2ウェイ・アルバムが記憶に新しいが、今なおジャマイカ内外で旋風を巻き起こしている怪物リディム、"Street Sweeper" の1ウェイが遂に登場。驚く程“単純”で、恐ろしい程に“斬新”なこのトラックは、スティ・クリの仕事で、「さすが!」の一言に尽きる。ブジュ・バントン、ケイプルトン、スプラガ等、激ヤバ・チューン満載。間違い無く'99年を代表するトラックになるであろう![輸入盤](児玉雄大)


9.KINGS OF DANCEHALL VOL.1 / V.A.

[ARTISTS ONLY! / AOR022]

Jammy'sから久々(?)大ヒット・リズム・トラック "Bada Bada" の1Wayアルバム。リズム制作は、突如として現れた謎の軍団Ward 21のAndre "Suku" Grayなる人物。Bushmanのアルバムや本作品でもミキシング・エンジニアとして活躍しており、今後要チェックの人物である。元気のなかったJammy'sだが、全盛期のようにダンスホールを盛り上げてくれれば今よりも更におもしろくなっていきそう。[輸入盤](坪木良典)


10.THE CROWNING OF PRINCE JAMMY / V.A.

[PRESSURE SOUNDS /PSLP25]

ジャミーズといえば、未だに "スレンテン" のイメージが強くて、それ以前の作品は忘れられがち。だから意外と初期の名曲群は入手困難だったりする。本作をじっくり聴くと、プリンス・ジャミーがタビーの一番弟子だったことやルーツとダンスホールを結ぶ重要なレーベルであったことを再確認。今聴いてもカッコイイ音ばかりなのでぜひチェックを。プレッシャー・サウンドならではのニクいセレクション。[輸入盤](鎌田和美)


11.フライング/キャロル・トンプソン

[ビクター / VICP-60781]

昔のファンにはラヴァーズ・ロックの歌姫的印象が強いキャロルだが、近年の『フル・サークル』や『ソングバード』等でイギリスならではのクールなクロスオーヴァー的作品を発表してきた彼女の3年ぶりの新作。本作でもUKソウル的なスムーズなリズムを中心にした構成。レゲエも3曲収録されているが違和感は全く無い。初夏の風のような爽やかな涼し気な美声は何にも変わってないので、昔のファンにもお薦め。(大場俊明)


12.クーラー・コンディションズ/スノー

[ビクター / VICP-60775]

資料がないので詳細は分からないが、スノーの3年ぶりの新作は明らかに変わった。どういう心境の変化かは分からないが、いきなりロックである。しかも淡々と唄っている。しかしよく聞き込めば、その裏には当然の様にレゲエ、ヒップホップの土台は垣間見れるし、アルバム後半からは昔のスノーそのものだ。あのバッド・ボーイ然とした彼はここにはないが、何かふっ切れたものを感じる。まずは聴いて判断してみて。(大場俊明)


13.モーメンツ/ムーミン

[ネオサイト / ESCB2010]

「かけがえのないもの」「Ride On」という最新2大スマッシュを収録した、待望の2ndフル・アルバム。GotaとのUK録音や、三木道三を交えてのJA録音が完璧なら、デヴ・ラージとの最新トラックも有、とグルーヴィ・シンガー=ムーミンは色んな "風/空気" を運んでくれる。期待通り、今回のステップも大きい。この夏の話題を独占する気持ちいい歌声と音がここにある。鳴々ビールが美味い。(二木 崇)


14.スルー・ザ・イヤーズ/ジャネット・ケイ

[ソニー / SRCS8964]

日本での「Lovin' You」大ヒット以来数多くリリースされたジャネット・ケイのベスト盤だが、本作は79年の大名盤『Capricorn Woman』から99年の最新曲2曲を含む、彼女の20年間に及ぶ活動の集大成的記念盤だろう。やはり初期の音源は文句の付けようななく完璧。それに比べてしまうと90年代のソニー制作のものは凡庸に聞えるが、決して悪くない。Kodama & Gota名義で発表されたシングル曲も収録。(大場俊明)


15.レゲエFM VOL.6/V.A.

[オーバーヒート / OVE-0067]

賢明な本誌読者は同シリーズが決してなんちゃってコンピ物と同一性質だとは思っていないだろう。何せコレはCDでレゲエを楽しむ最良のフォーマットとして、88年の『OB'sレゲエ・コネクション』以来、合い間に『アイリーFM』を挟んでずっと守られている暖簾なのだから。で今回は、16曲中12曲が初物となる格別にオイシイ内容。歌モノ中心で、ゆったりじっくり聴かせてくれる。僕にとってOBの声=夏。必携。(二木 崇)


16.ダ・リアル・ワールド/ミッシー・エリオット

[イーストウェスト/ AMCY-7041]

97年に「スゥパ・デュパ・フライ」でデビューして以来、マライヤ、ホイットニー、ジャネット・ジャクソン、SWV、トータル等々、全世界の音楽マーケットをティンバランドと共に震撼させてきたミッシーが、2ndをリリース。猛烈な貫禄も兼ね備え、フロウ、ライムの使いまわしのスリルが向上。当然、女版バスタ・ライムと思える様な奇声は健在、聞くものをパーティへと誘い込みます。(柾虎)


17.ライティングス・オン・ザ・ウォール/デスティニーズ・チャイルド

[ソニー / SRCS8942]

「ノー・ノー・ノー」の4人組みが2ndアルバムをドロップ。コンセプトはアルバム・タイトル同様、「(Hand)Writing On The Wall=災いの前兆(聖書)」と「恋愛から生まれる苦悩」を足して、彼女たちなりの「戒律」を歌の前に説いている。そこが今までのアイドル・グループとはどこか違う匂いを発している。彼女達のリリックに深みをつけているのはミッシー、ダリル・シモンズ、ロドニーのトラック。(柾虎)


18.ザ・ワンダー・No.8/ハニーズ

[マーキュリー / PHCW-1040]

UKのR&Bチャートをじわりと昇り、最終的に1位を獲得した実力派グループ。その実力はフォクシー・ブラウンが最近シングル・カットした「J.O.B.」の中でも聞ける(シングル・ヴァージョンのみ)。彼女達は音楽に対し非常にフレキシブルな姿勢なので日本でも売れそうな気配だ。日本企画のみDJ Wataraiのリミックスが入っているので、要注意。ちなみにDJ Wataraiはこの作品で初めて楽器を自分で弾いたそうだ。(柾虎)


19.ベイビー/F.O.H

[ヴァイブル / VIBLP-F001]

CiscoのR&Bフェアで配られていたテープに、日本人男性グループが入っていたのを覚えていらっしゃるだろうか? 名前はFake Jamと、Full Of Harmonyがあったはずだが、F.O.Hは後者の新しいグループ名。聴く人によって感じ方が違うから敢えて名前を簡略化したらしい。いわゆる日本でR&Bと言われる音楽シーンでなかなか男性モノが出ない中、彼らがパイオニアとして頑張ってくれる事に期待する。(柾虎)


20.アロハ・ポリドール/フィッシュマンズ

[ポリドール / POCH-1809]

残念ながら佐藤伸治は亡くなってしまったが、彼が遺した物は計り知れない。きしくも追悼盤となってしまったメディア・レモラス時代のベスト盤に次いでリリースされたポリドール時代のベスト盤(SMAPに提供した未発表曲含む)。この時期メンバーはたった3人になってしまったが、彼らしかできない音楽道を見つけた時期でもあり、密度の高い曲が並ぶ。きっと僕は一生彼の唄を鼻歌し続けるだろう。(大場俊明)


21.ジャクスタポーズ/トリッキー

[マーキュリー / PHCW-1706]

トリッキー4枚めのアルバムとなる今作はDJマグスとグリースを共同プロデューサーに迎えての一枚。デビュー以来ずっと放ち続けてきた独特のカリスマ性と野性味たっぷりのパンクなスピリットは未だ健全、なおかつそれが音楽的に消化され進化しているところがトリッキーのミュージシャンとしての素晴らしさだと思う。ゴールディーと並ぶキャラクターと音楽性が同化したアーティストとして最高の存在。(高橋晋一郎)


22.オール・システムズ・アー・ゴーン/プレゼンス

[ポリドール / POCP-7405]

活動歴の長いチャールズ・ウェブスターがマッシヴ・アタックの作品でヴォーカルをとっていたシャラ・ネルソンとサラ・ジェイ、同じくフィンリー・クェイのアルバムにヴォーカリストとして参加したスティーヴ・エドワーズを率いて始動したプレゼンスのファースト・アルバム。ジャジーなハウスやマッシヴっぽいロー・ビートものと絡む彼らの歌声の相性は完璧で正当派UKクラブ・ミュージックといった趣。(高橋晋一郎)


23.オルタレッド・アイ/オーディオ・アクティヴ

[ドリームマシン / HDCA10007]

オーディ・アクティヴの傑作アルバム『Return Of The Red I』のリミックス・アナログ・シングル3枚をここにコンパイル。リミキサーとして登場するのは、お馴染みエイドリアン・シャーウッドからエイジアン・ダブ・ファウンデーション、ジオデジック、ロン=パリらといった面々。中でもシャーウッドの手掛けた「Kick The Bong Around」のダブ・ミックスの深さと美しさは絶品で、まさにダブのお手本のような1曲。(高橋晋一郎)


24.スプリング・トゥ・サマー/チャリ・チャリ

[ファイル / FRCD-081]

数々のコンピレーションへの参加やリミックス・ワークで知られる井上薫のプロジェクト、チャリ・チャリが待望のファースト・アルバムをリリース。クラブ・ミュージックのテイストを含みつつもジャンル・レスに展開していくサウンド・スケープはチャリ・チャリならではの独壇場。シーンが切り替わるように姿を変えていくその音楽模様に新しいスタンダード観を感じることができる興味深い作品。(高橋晋一郎)