BOOM BAP
Lower ManhattanにあるSOB'sへの入場を待つ人々の列は一区画先まで続いていた。次世代のラップ・スター、Dizzy DrakeがHot97FM主催の「Who's Next」ショーケースに現れるからだ。TVドラマ『Degrassi』に出演していたAubrey "Drake" GrahamはカナダのToronto出身のシンガー/ラッパー。まだメジャー・レーベルと未契約の彼だが、その注目度は非常に高い。彼が作ったLil Wayne とKanye Westを808風にブレンドしたテイストのミックス・テープ『So Far Gone』は今年一番の出来と評判だ。実は、そのWestも今晩のショーを観に来ているし、Atlantic、Interscope、Def Jamといったレーベルの重役たちがDrakeと契約しようと会場に詰めかけている。Bun-Bにいたっては自らステージにあがり、この若いラップ・スターを祝福していた。それにDrakeを観に来ていた女性たちは、オレが過去のラップ・ショーで遭遇したどの観客よりも粒揃いだ。満員の会場では誰もがBlackBerry(スマートフォン)を使ってTwitterにアクセスしているように見えた。Drakeはネットのお陰でここまで有名になれたわけで、これも"自然な"現象だろう。彼は待望のニュー・アルバム『Thank Me Later』について、ショーの後で語ってくれた。彼は雄弁な若者なので、コメントをそのまま掲載することにしよう。
「オレはこの新作のアイデアを、ラップを始めた時から考えていたんだ。これを聴けば、『The Room For Improvement』『Comeback Season』『So Far Gone』といった昔のテープと比べ、オレがどれだけ成長したのかわかると思う。常に進化し続けること。それが一番大事なことさ」
「サウンドや曲の構成もオレ独自のスタイルが確立できていると思う。『So Far Gone』の制作を担当したのはオレのエンジニアの40で、Fiest、Lykke LiやDaft Punkを聴くことから始めたのさ。コード進行やメロディを拝借したりして、新しいヴァイブスを探そうと思ったんだ。40は夢中だったね。彼がスタジオで『Lust For Life』『The Calm』なんかをかけるので、そのビートに合わせてリリックを書いたよ。あれは面白い経験だった。また、あのようなグルーヴを見つけたいよ」
「Kanye、Pharrell、Ryan LeslieそしてAndre 3000と仕事が出来るのはエキサイティングなことさ。オレのマネージメント・チームは最高だよ。WayneをマネージしているCortez Bryant、Kanye をマネージしているG. Robersonがついてくれている。だからオレのチームにはKanyeとWayneが一緒にいるようなものなんだ」
「オレは大物プロデューサーと一緒にスタジオでレコーディングした経験がないので、彼らと仕事をすることがとても楽しみだ。オレは自分の耳に絶対の自信を持っている。音楽が良いか悪いかは自分で判断するのさ。経験豊かなミリオン・セラー・アーティストが『Drake、これはイマイチだね』なんて教えてくれなくてもいいんだ」
「でも、オレはちゃんと第三者の意見を受け入れるさ。ただ、誰にも頼りたくないだけだよ。たとえKanyeのような天才がそばにいても『Kayne、こんな感じでいいかな?』なんて絶対にきかない。アーティストは自分の意見をしっかりと持たなければいけないんだ。Wayneが次作のエクゼクティヴ・プロデューサーだけど、たとえ彼が『これはヒドイな』と言っても最終的に音楽的な判断をするのはオレ自身さ」
「オレは音楽業界ではルーキーなんだ。今までは自分の音楽をタダであげていた。$10〜$15を出してみんなオレの音楽を買うわけだから、オレはそれに見合ったものを作らなければならない。熱心なファンには特別なアルバムを届けなければいけないよ。次のアルバムによってオレのことを初めて知るリスナーもいるだろう。オレをすでに知っている人は、『TVドラマに出ていたラッパーだ』と思う人もいるかもしれなし、このアルバムを聴いてオレを初めて知る人は、3年前にオレが初めてドラマに出演したのを見た時と同じ感覚を持つかもしれないだろう」
「このアルバムが傑作になることをオレは信じている。このプロジェクトについてオレが言えることは『あとでオレに感謝してくれ』(タイトルが『Thank Me Later』なので)ということだな。なぜって? それは聴けばわかることさ」
TEXT BY ROB KENNER
アメリカの『VIBe』マガジン、VIBE MEDIA GROUPのエディター・アット・ラージとしてREGGAEコラムを執筆中。HIP HOP/REGGAEに深い愛情を持つ。
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