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302    ARTISTS    H-MAN

H-MAN
ナカナカナイ
 
Text by Norie Okabe / Photo by Masataka Ishida
 

その強靭な喉と“ウケる”ことへの貪欲な精神が生んだ究極の話芸を武器に、全国行脚を繰り返すこと15年以上。現場で“盛り上げ番長”の異名をとるH-Manが新作『ナカナカナイ』を完成させた。純日本語DeeJayが生んだ真摯なレベル・ミュージック! 心して受け止めよう。
 
H-Manを“孤高のDeeJay”だと感じることがある。達観といえば大げさになるかもしれないけれど、そのどこか冷静さを持ち備えた立ち振る舞いは、他のDeeJayとは一味違った独特の空気をかもし出していると思うのだ。特に2007年のステージ・パフォーマンスは強烈だった。「まあ待て」といった具合で観客を焦らすように靴紐を結び直す真似をしたり、(ありもしない)ネクタイを結び直してみたり。そんな“簡単に飛んで跳ねさせるわけにはいかない”といったまるで手の平で転がされているような“貯め”感は、たまらなく痛快だった。散々ボスさせて、最後にスロウ・チューン「諸法無我」をしんみり歌うのも、やけに心に沁みた。誰もが踊り狂えるような曲を、誰もが踊り狂えるように歌うのが自然なことなら、H-Manはあえてそれを避けているようにすら思えた。予定調和的でなく、あくまで自分のテンポ、自分の話芸で勝負するスタイル。そうした何にも迎合しない頑なな姿勢が、孤高と感じさせるのである。
 
そんなH-Manから6枚目のアルバム『ナカナカナイ』が届いた。前作『諸法無我』では、これまでの生活を改め、神という壮大なテーマに臨んだことからか、類稀なストイックさを感じたが、今作はさらに研ぎ澄まされた空気感を体感できる非常にタイトなアルバムに仕上がっている。トラックは純ジャマイカ産で、なんとあのスライ&ロビーが10曲を担当。表題曲では“TAXI”を使用していたり、ダブ色の強い「八正道」など、レゲエど真ん中もありつつ、レゲエを熟知しながらも、その域に留まらない彼らならではの音楽的センスが発揮されたともいえる、新感覚のビートもぎっしり。本誌前号の『MO'FRESH』にて、H-Manは、そのトラックがびっくりするくらい良かったとし、「これで曲がダメだったらオレのせいだって、いい意味でヒリヒリしながら作った」と語っていたが、そうしたイイ意味での緊張感は実に大きく作品に反映されたようだ。歌い手とトラックと、どちらともなく合いの手を入れているような、抜群の間合い、密着感。長年で培ったDeeJayとしての勘の鋭さを痛感する仕上がりだ。さらにスティーリー&クリーヴィ。こちらは“Come Down”“Stalag”といったファウンデーション・リディムと、日本が誇る名曲「上を向いて歩こう」を爽快なダンスホールに仕上げた「上を向いて歩こう」(盟友Moominとのコンビネーション!)の3曲を担当。特に“Come Down”での「ダンガントーク」は、すでに現場で歌う様が目に浮かぶくらいで、今年のライブでは恐らく定番曲となるのではないだろうか。それほどH-Man“らしい”チューンである。偽装問題、宗教、行政など、社会を風刺するリリックの鋭敏さも増した。神、永遠、愛、光と影。そうした前作の延長線上にある特有の視点、解釈も奥深い。
 
「出鱈目」では“試験も免許もないから勝手に手を挙げ名乗るだけ”と昨今のレゲエDeeJayの風潮を斬っていて“一緒にされるの願い下げ”と結んでいる。それが容易に納得できるほど、この作風は唯一無二だ。それはそもそもタイトルが象徴しているのだけど……。そう、H-Manの表現法は一朝一夕に養えるものではない。孤高の域。“ナカナカナイ”のである。

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