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Hidden Treasure
Discovering Vintage Reggae Vol.6
 
Text by Yasushi Ishibashi
 

 
前回、前々回とは趣を異にして、シングル音源の再発品を軸に紹介する。アルバムを残さずとも、シングル数枚で輝きを放ったアーティストは少なくない。ああ素晴らしきシングルの世界…。ほんの数分、塩化ビニールの溝に刻み込まれた“魂の一芸入試”を聴き逃すな!!!
 

 
 Wackie's再発シリーズでお馴染みのBasic Channel。そこのサブ・レーベルBasic Replayが2004年からリイシューしてきた12" をまとめた『Basic Replay』が、耳の早いリスナーやショップのバイヤーの間で話題沸騰となった。デジタル・ルーツ〜ダブを中心とした内容で、まさに今このタイミングだからこそジャスト! 世に埋もれた楽曲を新たな切り口と同時代感覚で掬い上げる、そんなコンピの醍醐味を体現した、絶頂期の英Soul Jazzレーベルにも匹敵するセレクトが素晴らしい。
 
 一曲目Ackie「Call Me Rambo」がとにかく強烈! ピストルのSEから始まり、気だるいスモーキーな語り調のヴォーカルが入ってきた瞬間にやられる事は間違い無い。この格好良さはどう表現したものか……、身にまとった雰囲気と言ってしまえばそれまでだが、それ以上説明のしようがないのもまた事実。その他にもI Jahman Levi「I Am A Levi」、Jackie Mittoo「Ayatollah」など幽玄にたゆたうダブ・サウンドが、いつもとは違う深みに連れて行ってくれる。

 もっと濃厚な12" 音源を浴びるほど聴きたい方にはこちら。2003年のリリースだが、Trojanの無数のコンピの中でも抜群の内容でありながら、当時全くと言っていい程紹介されなかったコンピレーション盤『Haul & Pull Up Selecta』をあえて取り上げたい。“Heavyweight Dancehall 1979-82”の副題そのままに、70年代末から80年代初頭にかけての、まだルーツ・フレイヴァーを色濃く残した初期ダンスホール・チューンがてんこ盛りだ。激しいワン・ドロップにキメキメのダブ処理、しかもほぼ全てが12" ヴァージョンなのでBarrington LevyやTriston Palmerらのヴォーカルは勿論、後半のダブやDJでもドップリと浸って欲しい。
 

 2007年のベスト再発シングルの一つCreole「Jah Creation」も忘れてはならない。超重量級のトラックに乗っかる静謐なヴォーカルが逆に凄みを感じさせる、Jah Shakaの大のお気に入りチューンだ。しかもこれ、重量盤なのだから堪らない! Tシャツもオンスが重い程有り難がる、アメカジ全盛期に十代だった小生にとって、重さとは絶対的な品質の証だった。7" のくせに100g近くありそうな(過大妄想込み)分厚い盤に心躍らせた事は言うまでも無い。
 
 同じく英Pressure Soundsから出ている7"、Joe Higgs「Let Us Do Something」「Freedom Journey」も要チェックだろう。アルバム収録とはヴァージョン違いで、ボンゴの乱れ打ちに渋いホーンが乗っかる後者のB面は特に愛聴した。ちなみに、同時発売となるアルバム『Life Of Contradiction』は、同レーベルとしては異例中の異例と言えるUKオリジナル・ジャケ、オリジナル収録曲(CDはボーナス2曲追加)での再発。Joe Higgsの生前から足掛け10年を越える再発プロジェクトが実った形で、レーベル・オーナーPete Holdsworthの敬愛の念をひしひしと感じる好仕事だ。
 
 ならば、この流れでBim Sherman『Tribulation』も紹介せずにはいかないだろう。自身のレーベルScorpioやSun Dewからリリースされたシングル音源をまとめたPeteなりの追悼盤とも言えるが、ジャケットや念入りに選び抜かれた各曲の素晴らしさに、注がれた愛の細やかさを感じてならない。New Age Steppersがカヴァーした「Love Forever」なんて、ヴォーカル〜DJ〜ダブを収録と至れり尽くせりで、Jah Wooshが“Children Singing The Love In The Ghetto〜”とカット・インするDJヴァージョンが特に煙い。そして最後は、切な過ぎるステッパー・チューン「My Woman」に男泣きして締め、が正統派のルーツ・マンだ。

 柔らかく飛ばされたい方にはGladiators『Studio One Singles』がお薦め。もともとフランスのブート盤で発売されていたものを、米Heartbeatがリマスタリングして正規盤として再発売したいわく付きのコンピレーション盤だ。Albert Griffiths率いるルーツ・グループの世界進出以前のStudio One音源7"/12" をコンパイルしており、アルバム『Presenting』との重複は無し。耳当たりは良いのにザックリ感のあるガッツ溢れる演奏に、柔らかいヴォーカルが最高の名曲揃いだ。

 そうでは無く滅茶苦茶に蹂躙されたいMなあなたには、アコースティック録音シリーズ“Inna De Yard”でお馴染みの仏Makasoundからリリースされた、歯応えあり過ぎの強烈DJコンピ『Rub A Dub Soldiers』が良いだろう。Channel One産のキンキンに張り詰めた、目眩がする程ダブ処理の効いたトラックに、Ranking JoeやBrigadier Jerryらの曲者どもが水を得た鮫の如く喋る、喋る。きっつい、むせかえるようなレゲエを聴きたい時はやはりDJだな、と改めて感じた一枚だ。

 ここまでは海外盤ばかりだが、“レゲエ愛国”日本も負けていられない。新宿Open校長、レゲエ夜回り先生ならぬ夜遊び先生こと工藤Big "H" 晴康氏の監修によるDennis Bovell音源のコンピ『British Core Lovers』『Arawak Label Showcase』(5月予定)、『British Pure Lovers』『British Roots Rockas』(6月予定)が発売される。本人によるリマスタリングも魅力だけれど、何より校長のセレクトが濃過ぎ! まだ仮のトラック・リスト、ダイジェスト盤CDしか確認していないが、Errol Dunkley「A Little Way Different」のDJヴァージョンやJanet Kay「Silly Games」のヴァイオリン・テイクなどなど、驚愕のレア音源をこれでもかと言うほど満載しており、既に私のルーツ心は期待ではちきれんばかり…。特にDennis Bovellのルーツ・サイドを凝縮した『British Roots Rockas』を大プッシュしたい。

 字数の都合で紹介しきれなかったが、綺麗なカラー盤で一挙に再発されたTop Deck の7"、ジャケ付きで正規再プレスとなったLee Perry「Disco Devil」(UK Trojan/12")、カップリングされたダブ「Black Horns」の凄さに失禁者続出のWayne Jarrett「African Woman」(US Wackie's/10")、人がわらわら居るイラストのカンパニー・スリーヴが楽しいGreensleevesの12" 各種など、2007年から2008年にかけてシングル再発が充実していた。ここ数年でネット配信やミックスCDが音楽の接し方、聴き方を変えてしまったが、仕方の無い面もあるにせよ少なくともチューインガムのような扱いは御免だ。シングル曲に、そしてレゲエにちゃんと向き合った上で楽しむという事、根っ子となる部分だけは決して外して欲しくない。


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