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299    COLUMN    UK REPORT

Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND

Maxi Priest ; the glory days of 1987
 
Greetings Friends,
 
●ネットショップの影響で、店を畳んでいるのはレコード・ショップだけではない。昨年倒産した老舗ディストリビューター、Jetstarのように流通業界でもその影響を受けている。ネットで全てを仕入れるショップのバイヤーなら、今のように売主、買主の顔が全く見えない流通形態に抵抗はないかもしれない。しかし、ネットでは実際に商品を手にとって検品するわけにはいかないのだ。それに、コレクター御用達のレコード・フェアー(掘り出し市)のようなイベントも激減している。だが、ネットのダウンロードが伸びたため、昨年音楽業界では、シングル販売数が過去最高を記録したらしい。この統計は、黒々と光るレコード盤を買いたいという消費者や、かつて1,000枚ほどのプレスで、その存在を世に知らしめることができたマイナー・レーベルにとっては無意味だ。レゲエ業界がこの潮流をどのように乗り切っていくのか、まだ見守っていく必要がある。まだ結論を出すには早すぎるかもしれないが、現状は決して良い状態とは言えないだろう。
 
●約20年にわたる長期ブランクの後、ヴォーカル・グループThe Congosが活動を再開、人気が再燃焼中だ。彼らが注目され始めたのは、Blood & Fireから再発売された『Heart Of The Congos』の再評価によるところが大きい。オリジナル発売時の流通事情が悪かったため、再リリースでこのアルバムを初めて聴いたリスナーが多かったのだった。このアルバムがきっかけとなり、ドイツのビールCMに彼らのヒット・ソング「Children Crying」が採用されたのだった。2年前に再結成し、ライヴや再結成後のアルバム『Swinging Bridge』で高評価を得ているグループにとって、CMソング契約はサクセス・ストーリーのほんの一部でしかないだろう。僕は、まだ彼らのステージを観ていないが、アルバムはヴォカール・ユニットとしてのクオリティの高さをうかがうことができる、素晴らしいものだ。彼らは現在、新作アルバムをレコーディング中であり、ライヴの日程も着々と決まりつつある。
 
●Lucianoがジャマイカ政府から「Hero's Dayアワーズ」において、「Order of Distinction (OD)」(勲章)を受賞した。彼は昨年末に、ジンバブエの独裁首相Mugabeを単に彼が黒人だからという理由のみで応援し、世の不評を買ったばかりだった。Alton Ellis、Ernest Ranglinらの大御所アーティストのOD受賞は彼に比べればずっと後のことだったし、Coxsone DoddやDuke ReidのOD受賞は昨年になってのことだった! Lucianoは受賞後に、「歯がなくなり、白髪が増える前にODを受賞できたのはうれしい」とコメントしている。果たして、彼はODに値する価値をジャマイカ音楽に残しているのだろうか?
 
●Stephen Marley、Sly & Robbie、Burning Spear、Lee Perry、Toots(The Maytals)らが今年のグラミー賞のレゲエ部門にノミネートされている。インターナショナル・リリースされたレゲエ・アルバム自体が少ないので、アーティストのノミネートの選考もさぞかし楽なことだろう。
 

Tyrone Taylor
 
●残念なことにTyrone Taylorが12月にキングストンで死去した。彼の死はある意味で予期できることであったのだが、死因が前立腺癌と聞いて少し驚いた。僕が1990年代前半にTaylorに会ったとき、彼はドラッグの過剰摂取による症状で見るも憐れな状態だった。当時のジャマイカの音楽業界では、ドラッグが蔓延していたのだ。彼は何度も復帰のための努力をし、声の調子を一生懸命整えていたこともあった。しかし、2度の発作に見舞われるなどの不運にあい、復帰は夢と消えてしまった。ガンに侵されてしまった時点で彼の身体は相当弱っていたはずだ。ジャマイカの医療は金がモノを言うシステムであり、彼が適切な治療を施されたとはとても思えない。Tyroneは偉大なシンガーになる資質を備えていながらも、単に「Cottage In Negril」をヒットさせた“一発屋”としてしか認識されないことだろう。彼の早すぎる死を非常に残念に思う。
 
●かつてSaxon Soundのシンガーとして、またCautionでヴォーカルを務めたMaxi Priestは、一体どこで何をしているのだろうか、と思っている方々も多いだろう。しかし、彼は今でも、約20年前に最も有名なレゲエ・アーティストとして知られていた頃と変わらない、精力的な活動を続けている。彼は幾多のレーベルに移籍を繰り返しながら、以前と変わらないペースで曲作りを続けているのだ。しかし、現在在籍するレーベルの一つ前のレーベル、Relentlessは、いわゆる80年代後期のMaxiサウンドに固執するあまり、彼のアーティストとしての成長を全く認めず、彼の新曲をリリースしようとはしなかった。そこで、彼はこの未リリース音源を集めたアルバム、『Refused』(タイトルもその名の通り、拒絶された、断られたという意味)をドイツのPeppermint Jamから発表した。このアルバムはMaxiの公式ウェブなど限られたところでしか購入ができないが、是非一聴してほしい。Maxiがこれまで培ってきた多様なスタイルが詰まった力作だ。今年中には前述のレーベルから“公式”なニュー・アルバムがリリースされるだろう。彼の益々の活躍に期待する。
 
●アメリカ議会図書館は、The Wailersのアルバム『Burnin』を永久保存することを決定した。同図書館は、このアルバムがその歴史性、芸術性、そして社会に対する文化的価値、以上3点において、永久保存に値する基準を満たしていると発表している。この審査基準はグラミー賞のそれとはまったく異なるものに違いない。僕は同図書館に対し最大級の賛辞を送りたい。
 Till Next Time, Take Care......
 
(訳/Masaaki Otsuka)

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