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RING RING RING GOES TO EU TAKENOVER BY MARI!
アムステルダムでワイルド・スタイル!:堀内麻理インタヴュー
 
Photo by Mari Horiuchi / Interview by Hiroshi Egaitsu
 

 

 堀内麻里というアムステルダム在住のフォトグラファーを紹介しよう。彼女はファッションやミュージシャンの撮影を中心に活動をしているが、ライフワークとして、グラフィティとライターの姿を長期に渡り写真に収め続けている。雑誌『WOOFIN'』上で不定期連載している「Breaks em Down!」でその一部を見る事ができる。
 

 
●グラフィティという言葉から、まず議論が始まるような傾向もあります。
 「〈ヒップホップ〉ぐらいに広義ではありますよね。ポストグラフィティなんて言葉もありますが、グラフィティというカテゴリーに収まりきらない表現方法をするアーティストが増えているのが現状です。そもそもグラフィティという言葉の起源はイタリアで壁にメッセージやスローガンを描いたもののことをいっていたようですが、いつの間にか『サブウェイアート』に載っているようなアメリカで起こった表現スタイルの総称として認識されているのが現状だと思います。私の場合はスプレイ缶を使わずして作品を作っているいわゆるポストグラフィティも一緒に、グラフィティと括っていますが、あれはグラフィティでこれはグラフィティじゃないとかは個人の主観で分類すればいいのでは?」
 
●なぜ、そして、いつ写真家としてグラフィテに興味を持ったのでしょうか?
 「90年代に『Style Wars』のビデオを見て衝撃を受けました。もともとヒップホップの熱心なリスナーでもあったので自然な流れでこのドキュメンタリー映画に出会いました。それ以前はグラフィティの雰囲気やアティチュードだけを楽しんでいてスタイルの違いをたいしてわかっておりませんでした。その後世界各国のグラフ雑誌を買っては、レターを解読したり、好みのスタイルのピースなどを見て胸をときめかせていました。ある日、PVの素材撮りの仕事で単身ベラルーシに行く機会があり、フランクフルトでトランジットのため一泊しました。その移動の際に電車の窓から延々と続く巨大なピースの数々を見て『なんだ、これは!』と衝撃を受けました。百聞は一見にしかずとはまさにこのことで、一瞬にしてこのシーンをドキュメントしようと決めました。ちょうど自分の人生の転換期だったので、アムステルダムに引っ越しをして自然と環境が整いました」
 
●ライター達と密着することによって、それまでとグラフィティについての考え方は変わったでしょうか?
 「別に密着なんてしてません。友達の多くが日常的に壁に描いているので縁があれば撮影するという具合です。いろいろなピースを見ているうちに、どれがどう凄いのかなど、自分の好みのピース等、目が肥えてきました。『WOOFIN'』で02年からのグラフィティライターのフォトストーリーについて言うなら、毎号違った切り口で撮影し、ライターたちとあれこれ相談して特別なページを作っていくのはとても楽しいプロセスです。ピースそのものだけを載せるのではなく、一種のポートレート写真/フォトストーリーです。興味のあるライターは友達の友達だったりするので出会いたい人に自然に出会える環境にいるのだと思います」
 

 
●尊敬するライターは誰でしょうか?
 「DONDI、LOOMIT、ZEDZ、DELTA、POINT a.k.a. CAKES、POET、OSGEMEOS、NUG、CAT22、SMASH137、OKUDA、KANE……たくさんいます」
 
●都市環境の点からグラフィティについて?
 「グラフィティが街にあること自体、今の世の中の都市カルチャーの自然な姿なのではないかと思います。街からタグやピースがきれいさっぱりなくなり、道にはゴミ一つ落ちておらず、全ての人が社会模範に従ってロボットのように生きる社会こそまさにSF小説の世界となり、不気味な世界になると思います。アムステルダムをはじめ、多くのヨーロッパの都市ではストリートにタグがあること自体が自然な現象だと多くの人が認識していると思うのです。ベルリンの街なんか見てると思うんですけど、街自体がもうグラフィティから逃れることが不可能な状態です。このような質問をされるということはグラフィティが環境汚染をしていると捉える人がたくさんいるということなんでしょうね。そういえば数年前、なぜかオランダの都市のゴミ問題のシンポジウムのためのスライド上映用に撮影を依頼されたことがありました。環境問題に携わるお偉いさん方が集まって講演中にひたすら汚いものの写真がスライドショウとして映し出されたわけですが、ピースやスローアップの写真は入れませんでしたが、スタイルのないタグは環境汚染の見本として容赦なく入れておきましたが(笑)」
 
●グラフィティを学問的なアプローチで捉えていこう、という人々に言うことは?
 「社会学のテーマとして研究するに充分値すると思いますが、いろんな意味において膨大な労力が必要だと思われます。芸術の分野ではもっと評価されるべき。ヨーロッパの多くの美術館ではライターたちの作品を扱ったりしますが、所蔵するという動きは本格的にはじまっていないように見受けられます。それはストリートで、無料で素晴らしい作品が閲覧できる環境があるからきっとそれに甘んじてるのではないかと。ギャラリーでは少しずつ扱うところが増えてきました。今のうちにライターたちの作品を安く買っておこうというアートバイヤーたちが動き出しているようですね。世の中がグラフィティをおもしろがっているというのはいいことなのではないでしょうか」

 以前記したよう、ベルリンのアレクサンダープラッツ、スイスのバーゼル、そしてエストニアのタリン、で目にした光景を僕は忘れない。カッセルからデュッセルドルフへ列車が近づいていく時の風景を忘れない。彼女は、忘れないだけでなく、何かを始めた人なのだ。
 

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