HAKASE-SUN meets MITSUHIRO TOIKE
KEYBOARD KINGS
 
Interview by Takeshi Miyauchi / Photo by Sho Kikuchi
 

Hakase-sun(写真右)と外池満広(左)。ともに、数多くのセッションで無二の存在感を放つ、レゲエ・キーボード奏者。そんな二人が、互いにソロ・アルバムを同時期にリリースする(Hakase-sun『Le Ciel Bleu』、外池満広『My Jamaica』)というのをきっかけに、ありそでなかった対談が実現!
 
Hakase-sun(以下Hakase):じゃあ、僕らの出会いから話そうか?(笑)
外池満広(以下外池):大学生の時だよね? 僕が自分のレゲエ・バンドのママ・アフリカをやってて、HakaseがムスタングA.K.A.で。
Hakase:原宿のロサンジェルスって小さいライヴハウスで対バンして、そこで外池君を初めて見て。ピアノの上にオルガンを置いて、なんか中腰で弾いてたよね。
外池:僕はその当時フィッシュボーン好きで、逆にHakaseがフィッシュボーンっぽい事やってて。お互いに「自分の他にこんなヤツがいるのか?」って感じで見てたよね。
Hakase:だから、出会いは古いんだけど……同じバンドをやる事はまずないから(笑)。
外池:それに微妙に行く道も違う感じもあるしね。その辺はお互いの作品に色濃く出てると思いますね。
 
●お二人ともレゲエをやる前からキーボードを演奏されてたんですよね?
外池:いや。でも、僕は最初のバンドからレゲエだったんです。ファンクも好きだったから、途中ちょっと浮気もしたけど。
Hakase:ファンクもレゲエも、基本的に刻みが基本だからね。
 
●レゲエって音楽の中で、ずっとキーボードを続けてきた理由は何ですかね?
Hakase:裏打ちを楽しんでやれるかっていうところがポイントだよね。あの単純作業を(笑)。ま、裏打ちだけなら誰でも出来るんだよ。だけどそこに微妙なタイム感とか力の入れ具合とかあるわけ。
外池:ドラムは突っ込んでビートを打って、ベースがそれを後ろに引っぱって、その合間をパキンパキンと鉈で割るみたいな感じでピアノがビシバシ入る、と。
Hakase:スウィート・スポットが必ずあるんだよね。
 
●そういうのはいつ頃から面白みが分ってきたんですか?
Hakase:いや、ここ最近ですよ。10年ぐらいかな。
外池:いいリズムを紡ぐ人と一緒にやると、自分もこういう事しなくちゃっていうのがハッキリしてくるからね。
Hakase:まわりもレベルの高い人達が集まってくるから、自分も高まるっていうのもあるしね。

●そんな二人が、時期を同じくしてソロ・アルバムをリリースする訳ですが。
Hakase:外池くんのアルバムをちゃんと聴いたのは今回初めてで。色んなバラエティもあるし、やってる方向が近いかなって。凄く楽しいアルバムだったよ。
外池:ありがとう。これ、もともとはDJで呼ばれた時にダブプレートを作って、こんな曲があったら盛り上がるけどなっていうのをコツコツ作りためてたのが元になってて。Dry & HeavyやJungle Rootsで発散できてる部分はあるけど、それだけじゃなくて、違うチャンネルもレゲエにはあって、それを表現したいなって。
 
 Hakaseの今回のアルバムを聞かせてもらって、あらためてロマンチストだなって感じたね。弾いてる姿が目に浮かぶというか。ジャッキー・ミットゥの後期の、『At Wackies』でやってる打ち込みのリズムでやってる様なのを思い出して、いいなって思ったり。
Hakase:自分のアルバムっていうのは、自分のリディムでやりたいんですよね。自分の肉体感覚でリディムを打ち込んで、そこに自分がキーボードを乗せる。
外池:「どういうのがレゲエのキーボードですか?」って訊かれても、最近じゃそういう精神的な事しか答えられなくて。レゲエって、普通に譜割りとか譜面で説明できるけど、むしろプレイのフォーマットよりも、スピリットが大切だと思うんですよね。基本ができれば、あとは“どれだけルードボーイであるか?”というか。“レゲエのリズムで、自分がどれだけ突っ張るか?”みたいなね。
 
●お二人とも、レゲエそのものはもちろん、機材へのこだわりも強いですよね?
Hakase:二人で話す時は、ほとんどが機材の話(笑)。俺も外池くんも古い楽器が好きだよね。
外池:もともとは自分の好きだったレコードと同じ音を出したくてコレクションが始まった。それら楽器の音色からフレーズがインスパイアされてって、という事は多いですね。
 
●その楽器の音から連想される旧き佳き名盤だったり、時代の音だったりを今のサウンドに置き換えるわけですね。
外池:それにいい音でやると、簡単なフレーズでこそ表現できる、レゲエの説得力がより出るから。世の中にはどんな楽器でも自分をプレゼンできる人がいるけど、僕は自分の好きな楽器で、自分が大好きな音だけでやってみたいなっていう気持ちが強くて。
Hakase:そう。自分の好きな音だけで散りばめたいっていうのは、ソロの醍醐味だからね。
 
『Le Ciel Bleu』
Hakase-sun

[Nowgomix / NGCA-1030]


『My Jamaica』
外池満広

[Grand Gallery / GRGA-30]



ALBUMS OF THEIR FAVOURITE KEYBOARD KINGS



Selected & Text by HAKASE-SUN

"Africa On My Mind"
Harold Butler

[Aquarius]
ジャケ写のフェンダー・ローズがポイント。あやしいシンセとか鍵盤の音もいっぱい入ってるけど、それ以上にめちゃくちゃタフで美しいルーツ・アルバム。絶対聴くべき。



"Wishbone"
Jackie Mittoo

[Summus]
スタワンのほっこり激渋のジャッキーももちろん愛してますが、このアルバムはイケイケノリノリ、ファンキーなオルガンが聴けて。燃えます。



"Caribbean Sunset"
Gladstone Anderson

[Overheat]
高3の時買って聴きまくったアルバム。ギターチャキチャキでご機嫌すぎるトラックに殴りこみをかけるグラディのピアノ。このタイム感だけは未だに真似できません…JAの人間国宝。




Selected & Text by MITSUHIRO TOIKE

"Showcase"
Jackie Mittoo

[Sonic Sounds]
不動のマイ・ベスト・ワン。気力/魔力共に充実の一枚。キーボード・プレイからほとばしるルードボーイ・スピリットはいつでも生きる勇気をくれる。



"Mr. Music"
Pablov Black

[Studio One]
ルーツ・レゲエでは珍しいシンセサイザーもの。意外なほどコンテンポラリーなアレンジでありながらしっかりレゲエ。モンド感全開のニクい一枚。



"Fire Corner"
The Dynamaites feat. Winston Wright & King Stitt

[Clan Disc]
少ないフレーズで作る印象的なメロディがレゲエの特徴の一つとするならば、ジャッキーよりもこちらの方が濃いかも。ファルフィッサ・オルガンでModヴァイブビンビン。


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