Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND
Greetings Friends,
●レゲエ・ビジネスこの春一番の話題は、Chris Cracknellが自ら設立したGreensleeves Recordsを去ることだろう。同社は1年ほど前に売却されたが、新たなオーナーへのスムースな事業の移行を監督並びに、レーベル30周年記念に関する様々なプロジェクトを用意するためにCracknellは1年間同社に留まっていたのだ。同じくレーベルの創立者であるChris Sedgewickが経営の責任者だったのに対し、Cracknellはレーベルの音楽的な方向性を決めるA&Rのヘッドだった。僕はこのレーベルがリリースした全てのタイトルに精通しているわけではないが、レゲエの名盤・名曲を再発する余力があったのにもかかわらず、80〜90年代に流行モノばかりを発売していたレーベルの姿勢には疑問を感じる。しかし、同レーベルが世界最大のインディーズ・レゲエ・レーベルであることは間違いなく、それは賞賛に値することだと思う。新たな経営陣がどのようにレーベルを発展させていくのかはまだわからない。ただ、Trojanのように大量のコンピレーションをリリースし、オマケのように時々オリジナル・アルバムを発売するようなレーベルにはなって欲しくない。僕が80年代にロンドン『Echoes』誌で働いていた時に、編集部員達は「電話の話がつまらない奴トップ10」を密かに作っていた。Chris Cracknellはいつもそのリストにランキングされていたのだ! これは彼がレーベルのPRにいかに熱心であった(たまにはしつこいくらいだった)かを物語る確たる(?)証拠だろう。僕がジャマイカに住んでいた頃、彼は昼夜にかかわらず平気に1〜2時間も電話で喋りまくっていた。彼の引退後の人生に幸福を願う。
●そのGreensleevesが、レーベル創立30周年を記念し、昔の音源にリマスターを施し、ボーナス・トラックを付けて売れ筋アーティストのコンピレーションを多数再発売した。その中で最も興味をひくのは非常にレアなディスコ・ミックスを収録したWailing Soulsの『Most Wanted』だろう。詳細はwww.greensleeves.netで。
●僕は自分が観ることができなかったライヴのことについて考えたり、話したりすることが好きではない。しかし、ロンドンのWembley地区で開催されたLarry MarshallとEric 'Monty' Morrisが看板アクトを務めたショーのことは恥をしのんでリポートしなければならない。僕にはこのライヴについて全く情報が入ってこなかったのだから、ほぼシークレットに近かったに違いない。この二人を観るためならどんな遠くても行きたかった。残念無念だ。
●以前、Coxsoneの下でサウンドマンとして働いていたLevi Rootsが自ら開発したペッパー・ソースで一儲けしているというニュースを伝えたと思う。そのLeviがイギリスのBBC・TVの『Dragon's Den』というバラエティ番組に出演した。この番組はイギリス版『マネーの虎』といった趣向で、出場者は投資家相手にオリジナルのビジネス・アイデアを“セールス”し、事業を立ち上げる資金を獲得するといったものだ。その代わり投資家は利益が出た時にいくらかの割合でそれを分配してもらう仕組みになっている。Leviは“Reggae Reggae Sauce”の素晴らしさをカリプソ風に歌いながら登場し、投資家の興味を惹く。彼の人柄とソースの味の良さが決めてのとなり、Leviは見事に資金調達を達成するのだ。その後、彼はイギリスで昼のワイド・ショーに出演し『Dragon's Den』出演以来、ビジネスが順調にいっていることをアピールしていた。彼の言葉とおり、“Reggae Reggae Sauce”はイギリス全土の主要スーパーマーケットの店頭に並んでおり、新製品も続々登場予定らしい。Leviは20年程前にFred Locksの大ヒット「Voice Of The Poor」をアレンジした「Poor Man's Story」を歌っていた。誰が今の成功を想像できたのだろうか? おそらく、彼の音楽活動はソースの売上と反比例するように縮小していくだろう。それは少し残念だが、彼の新たなビジネスにGood Luck!
●エンジニア&プロデュサーのGussie PがNegus Rootsの音源を使ったダブ・セレクション『Firehouse Dub Volume 1 (Sip A Cup Meets Negus Roots)』をリリースした。このアルバムは往年の名曲に現在流行りのスタイルを融合させたもので、イギリス、ジャマイカ両方のフレイヴァーを効かせてあるらしい。ご自分の耳でお確かめあれ。
●Soul Jazz RecordsからCoxsone DoddのStudio One音源からセレクトした『Studio One Kings』がリリースされた。アナログではかなり高値なレア・チューンも含まれている。“Solomon”リディムをフィーチャーしたJohnny Osbourneによるディスコ・ミックス、「Water More Than Flour」や Devon Russell「Roots Natty」、Freddie McGregorによるBob Dylan「I Shall Be Released」のカヴァー、Larry Marshall「I've Got To Make It」などが収録されている。安易なタイトルが少々気になるが、内容は素晴らしいアルバムだ。是非チェックして欲しい。
●Lee Perryが彼のBlack Arkスタジオで録音したSlickersのアルバムを、フランスのMakasoundから再発売するらしい。
●Bob Marleyという名前を人々がどのくらい乱用しているかを確かめたければ、バハマのNassauにあるMarley Resort and Spaのウェブサイト(www.marleyresort.com)をご覧あれ。宿泊料金を見る限り、金持ちだけを念頭においているようだ。なんとも恥ずかしく、腹立たしくもある。
Till Next Time, Take Care......
(訳/Masaaki Otsuka)