Review by TAKASHI FUTATSUGI
1. Lil' Flip / I Need Mine (Warner)
テキサスはヒューストン(H-タウン)の若き帝王=リル・フリップ、“アサイラム”移籍第一弾。例の『I Need Mine』('04)の仕切り直し盤ではあるが、殆ど新曲なのでご安心あれ。メロウなタッチからごりごりのヒューストン系(?)まで、揃えられたビーツも高水準ならば、主役のラップも更に味わいを増し、A-タウンのライヴァル=T.I(ビーフは終結)もウカウカしてられない感じ? ライフ・ジェニングスからリック・ロス、カミリオネア、マイク・ジョーンズ、ネイト・ドッグス、Z-ロウらfeat.アーティスト陣との絡みもバッチリでしょう。
2. MIMS / Music Is My Savior (EMI)
「ディシイワアアイホッ!」というシンプル極まりないキメ文句で一躍“時の人”となった新星ミムズのデビュー作。マイアミのブラックアウト・ムーヴメントが中心となるサウンド・プロダクションはサウス色が強く、“NYの新世代MC”らしい“主役”のMCとしての身体能力の高さを引き出している。ラトーヤが登場する曲での表情も印象に残るが、本誌読者的には例の全米No.1ヒット曲「This Is Why I'm Hot」の、ジュニア・リード+シャム参加版がお勧め!「Ring The Alerm」のフレーズも…。
3. Timbaland / Timbaland Presents Shock Value (Universal)
泣く子も踊らせるサウンド・イノヴェイター=ティンバランド、久々のソロ名義作。便宜上、このコーナーで扱ってはいるが、全曲ラップ物ではない。と言うよりも“ロック”を含めて、今のポップ・ミュージックの最先端なモンスター・アルバム。デンジャとの共同制作曲を含め、エスニックな音源からシンセのオーケストレーション、80'sリバイバル系、更にはロック・アーティストとのコラボまで、作った本人がショックを受けたという程“鳴り”のいい作品。ジャスティン・ティンバーレイクとネリー・ファータドも勿論“がっつり”参加。
4. Bone Thugs-N-Harmony / Strength & Loyalty (Interscope)
早口&ハーモナイズ・ラップ、と云えばボンサグ。スウィズ・ビーツの“フル・サーフェス”に移籍して放つトリオ編成での本作は、気合い十分の脱力フロウが相変わらず気持ちいい好盤。スウィズは敢えて1曲に集中したようで(feat.でも1曲参加)、その他、プリティ・ボーイ&ブラッド・ヤング、エイコン、J.D、ウィル・アイ・アム、DJトゥーンプ、インディヴィデュアル等が好サポート。ジグソー「Sky High」ネタでぶっ飛ばされるオープニングから、エイコン、マライア+バウワウ、トゥイスタ、ザ・ゲーム+ウィル・アイ・アムらとのそれぞれのコラボまで、熱烈なファンの人以外も楽しめる内容に。
5. Consequence / Don't Quit Your Day Job (Sony)
既にキャリア12年、だが決して遅咲きではないスキルフルなMC、コンシークェンスの正式な(?)デビュー作。従兄弟であるQティップのススメでATCQに関わってたものの(「Stressed Out」他)、その後、紆余曲折を経てカニエ・ウエストの“G.O.O.D.”のアーティストとなったライム・フェチの彼は、余程その新天地が居心地良いと見た。そのいいヴァイブとサンプリング・ベースのあったかいサウンドが溶け合った何とも得難いムードのある1枚に。ビートは本人中心で、カニエ、ヤングロード、カリーム・リギンズらも尽力。
6. Red Man / Red Gone Wild (Universal)
ティンバランド制作「Put It Down」がヒット中の赤男、実に6年振り(!)となるソロ6作目をドロップ。いつの間にかレジー君(キャラクター)も別物に変わっているが、中身はご心配なく! エリック・サーモン、ピート・ロック、スコット・ストーチ、DJクラーク・ケント、そしてロックワイルダーと、新旧面子が顔を揃えた本作は、本人(=ザ・マスコット)制作曲を含め、ハッチャケ過ぎず、シブ過ぎず、と今の彼のスタンスをよく表した形の力作となっている。ラジオ的な構成は相変わらず“バカ”だが、ラップ・アルバムとしての精度もあがっているのでダマされないよーに。
7. O.S.T. / RZA Presents Afro Samurai (Victor)
岡崎能士作の漫画→アニメ『アフロ サムライ』のサントラ。音楽の担当は『ブレイド3』のコミック版での絡みもあったRZAで、例によって例の如くウータン・クランばりのマッド・ループや、特にこうしたサイドワークで披露する機会の多いソウル趣味等、彼らしい味付けでこのカルチャー・ミックス作品を盛り立てている。注目はQティップ、タリブ・クウェリ、ビッグ・ダディ・ケインそれぞれのfeat.曲で、ボビー・デジタル作品では見られなかった展開も…。日本盤は岡崎監修のアートワークが 美 。
8. V.A. / The Hyphy Movement-Compiled By DJ Shadow (Rush!)
US西海岸を中心とするアッパーなムーヴメント、ハイフィーの魅力をビシっとまとめたベスト・コンピが到着。コンパイルした人物は、ご存知DJシャドウ。自身の新作『The Outsider』で、御大E-40からキーク・ダ・スニーク、ナンプといった同シーンの中心人物をfeat.し、彼流のハイフィーを聴かせてくれていただけに実に説得力のある重要曲をしっかり押さえた内容であるのは言うまでもない。MDMA等なくても十分にハイになる電子音+血圧高めのラップのオン・パレード。DVD+仕様のナンプのアルバム(国内盤)も要Check!
9. DJ Drez & Marty Williams / The Complete Moon Bay Sessions (Miclife)
ヒップホップを軸に幅広いセレクションのミックス・テープで着実にエンスーを増やしていたLAのDJ/プロデューサーのドレッズと、彼との旧知の仲であるヴェテラン・ジャズ・ピアニスト=マーティ・ウィリアムスのコラボ作。そのココロは…Jazz! ドレッズならではのビート・センス及び上ネタ使いと、25年のキャリアを誇るマーティの黄金の両手が繰り出すインタープレイ、そしてプロジェクト・ブロウド関係のMC達のヴォイス・パフォーマンス、その全てが“Kool”。まずはビリー・ホリディ「Don't Explain」のリメイクを聴いて頂きたい。
10. Twigy / akasatana (Rush! / Toy's Factory)
20周年記念作(後付け?)『Twig』に続く最新作に全てのトラックを用意したのは何とプレフューズ73。ヒップホップ的な視点を忘れないその1人プロジェクト、プレフューズのスコット・ヘレンは、自作にGFKやエル・Pらを招いたり、ダイヴァースの後押しをしたりという粋な動きも見せていたが、本作は“それ以上”の効果を上げているのでは、とさえ思える素晴らしさ。肩の力を抜いたラップで凄味を漂わせることが出来るコトバの芸術家=Twigyの存在感がド真ん中にありつつ、盟友Hi-Dや、YTR★、Rino、D.L、D.O、Keyco、デル、アロエ・ブラックといったゲストも意味あり気に光ってる超ヒップホップ・アルバム。
11. Big-O&DJ Watarai / Straight To Next Door (Cutting Edge)
“Intro”の「いくぜワタボー…いつもの俺たちのスタイルで…」で思わず息を飲む語りからこのX-ラージなMCとビッグ・プロデューサーの初共同名義作の幕は開く。Shakkazombieの一員として、又ソロでもアルバム・リリースのあるBig-Oは、そのヒップホップ以外の何者でもないキャラクターの中に“リリシスト”としても色をしっかり装備しているハイ・スペックなアーティストだけに、今作もグッとくる要素だらけの会心作に。そんな彼のファットなハイ・トーン・ラップを支えるWataraiの含蓄ありつつも時代性を弁えたトラック群も勿論強力の一言。客演はMuro、Dabo、OC他。
12. Dosmoccos / Moccos Most Wanded (Handcuts)
九州男児のホット・コネクションが心血を注いだ2nd。餓鬼レンジャーのポチョムキンaka随喜と、Volcano PosseのKen-1-Low、そしてDJ Mo-Rikiからなる彼らは、“Funk”と“熊本弁ラップ”をキーワードに活動してきたが、東京に移住した後に制作された今作では後者へのコダワリが薄まり、よりフリーキーな“進化”を遂げている。Coma-Chi、Ultra Naniwatic MC's、東田トモヒロ、スピーチ・デフェクトらゆかりゲストと、DJ Uppercut、DJ大自然、GP、Shin-Skiらトラックメイカー陣も華を添えたRap!Rap!Rap!の本気アルバム。