Review by TAKASHI FUTATSUGI
1. Buzzer Beats / Buzzer Beats Presents Buzzer Beater Vol.1 Mix Up By DJ Celory (Ultra-Vybe)
晋平太、DaboやR&Bアクトへのハイクオリティなトラック提供で注目を集めている東京の3人組トラックメイカー・チーム=Buzzer Beatsの自身の名義での初音源集。Taro Soul、晋平太、Bomb Skill、代参セクター、秀といったイキのいいアーティストを中心に28トラックもの大容量で一気に聞かせる限りで、彼らが今シーズンのブザービーターになる可能性も十分に感じさせてくれる仕上り。フリースタイルでは、Dabo、YoYo-Cらも参加。
2. Pretty Ricky / Late Night Special (Warner)
マイアミの人気者カルテット(1人だけシンガー)が満を辞して放つ勝負作の2nd。ヒット曲連発、アルバムもミリオン、というデビュー作時点で既に華のある存在だったが、この2枚目は更に内容が濃い。ネクスト・ジョデシィなる形容も大袈裟ではないドラマ感の強さ&歌い込みといい、サウス・アクトらしいラップの絡みといい、今作で突き抜けた感アリアリ。ミュージック・ロイヤルが中心となったサウンド・プロダクションもサウス・マナーと、キラキラ感のちょうどいい混ざり具合で、イマドキのアイドル・グループとしてはこれ以上のモノはちょっとないのでは?というカンジx
3. Steph Pockets / Can't Give Up (Victor)
B・マーリィの血を引くフィラデルフィアのフィメールMC、ステフの3rd。日本では既に2枚のアルバムや来日公演でしっかりファンを掴んでいる印象の強い彼女はご存知の通りマルチな才能の持ち主。つまりミュージシャンシップの強いラッパー、であるのだがその魅力が最もストレートな形で出たのが今作のタイトル曲ではないだろうか?“夢を諦めない”というテーマの下、彼女の資質に最も近い、というかリスペクトの対象であるスピーチを呼び込んだ同曲は不屈の精神力とそれを支えるヒップホップ・スピリット(特に3rdヴァース!)が強く胸を打つ名曲だ。 アルバム・トータルとしても骨太だと思う。
4. Lushlife & The Age of Imagination Quartet / Order of Operations Instrumentals (Miclife)
カニエ+『Pet Sounds』のマッシュアップ盤、そしてそのセンスの高さを遺憾なく発揮した1st『Order Of Operations』でヒップホッパーとしての総合力を見せつけたラッシュライフの新作が到着。今作では何と、自身がジャズを専攻していた際の恩師でもあるジャズメン(カルテット)と共に、生音の魅力を最大限に活かしたインスト・ヒップホップを展開している。そのスケール感の大きさは、彼自身の才能+カルテットの(ジャズ及びラッシュライフへの)愛情溢れるプレイの賜物、なのだろう。Levitatorzとのコラボ新録という最高のボーナスも有。
5. Moka Only & Atsushi Numata / Moka Only vs Numata (P-Vine)
本誌でもお馴染み、NY在住のDJ/プロデューサーNumataと、「Live From Rio」等で知られる多作なカナダ人MCモカ・オンリー(元スウォールン・メンバーズ)がガップリ四つに組んだ本気のコラボ・アルバム。この2者の“縁”については、沼田氏のライナーノーツを参照して頂くとして……とにかく、ここには古くからのヒップホップ・ファンには少し懐かしくもあり、確実にFreshな“ヒップホップらしいヒップホップ観”が渦巻いている。黄金律そのもののビーツとライムの融合。その他に何が必要?という感じの快作。
6. Azzurro / 10000 Light Years From Home (White Stone)
Ill Soundのアルバムを挟んで、ソロとしては約4年振りとなる2ndが完成。インストである事に意味がある珠玉のビーツは、Azzurroそのものであるとしか言い様がなく、今作でも自己最高記録となる“トビ”を見せてくれる(←Dubという意味ではなく正にタイトル通り)。クールなるものを心得ながらも、そこにガス燈の灯を持ち込んでしまう(?)、うねりと温もり、そして奥行きのある蒼の世界はひたすら(ヒップホップとして)心地良いものだ。Shigeru TanabuのギターをFeat.したシングル曲「Nagisa」の置きドコロも含め全体の流れも素晴らしい!
7. Dabo Presents B.M.W. Vol.1 - Baby Mario World / V.A. (Toshiba EMI)
エリアもスタイルもジェネレーションも異なるアーティストたちを集めたDaboプロデュースによる“日本語ラップ・ショウケース・アルバム”。一部(自由帳)を除けば、Dabo本人のラップも全曲で堪能出来るので、彼自身の新作と捉えても何ら問題ないと思う。と言うか…今だからこそこういった“シーンの外に知らしめる必要がある見本市”を開こう、という気概に満ちていて、聴いていて何か力(=Force)を貰えるような…。ただのサプライズ・パーティに終わらない“実”のある何かがあるに違いない、色んな風景の見えるアルバムだ。
8. Macka-Chin / Last (Virgin)
異色を極めるBな冒険家Macka-Chinの3枚目。全曲でがっちりマイクを握っている、という訳ではないのは勿論ワケがある。その理由は、一つ一つのサウンドスケープ、そしてアルバム・トータルのパノラマ感に触れてみれば自ずとワカるだろう。Montienの盟友でもあるTinaや、Deli、Dabo、Mikris、Asian Star、Opec、Yoshiko Sakata(琵琶奏者)といったゲストの配置もそうだが、主役が紡ぎ出す確信のある音空間と、言葉遊びの向う側に見える真実にヤラレること必至だろう。最高ケッ作!
9. Kashi Da Handsome / Dime Pieces (Rush! / Toy's)
昨天下一ハンサムなB-Boy=Kashiの初アルバムは何と“客演集”。だが、録れたてのソロ新曲から始まるやや変則的な内容の本作は、変化球を得意としながらも直球的魅力を備えたMC/トラックメイカーとしての彼の“良さ”を伝える好パッケージ、となっている。ソロで初めてfeat.されたShakkazombie「What U Want?」から、ビートの制作も担当したNitro「ナイバビFive」といった“絡み名曲”、Muro、Geekの作品に入っていた1人曲に、FlickとしてライムをキックしたI-DeAの曲等々、納得の選曲!
10. Candle / 街角ジゴロ (Mary Joy)
「不条理で理不尽な実体験をニヒルに描写するマシーンでありながら、哀しい気分で感情的に懺悔するギャップが顕著なニュータイプ(機械とソウルの共生)」と紙資料にあるが、アルバムを聴き終えた後、ナルホドそういうことか、と一人合点した。“街角ピエロ”で昨秋デビューしたこの特異なフリースタイラーはそれだけ面白い存在だ。“聴き取らせる力”の強い、ギョッとするほど鋭い言葉を吐く彼はクラウン的要素のある語り部というか、とにかく今までいなかったタイプのMC。Vector Omega、KK等国内外のビートメイカーの仕事ぶりも強力でコンセプチュアルな一枚に。
11. Tomogen / 06 Out Side (KSR)
4人組となって活動中のDoberman Incからソロ一番星Tomogenの1stがFocus Int第一弾として登場。関西きっての人口密集地で、それ以上に人間臭い街=尼崎をこよなく愛し、何よりもラップするのが好きな天然B-Boyの彼が、“ストリート”というキーワードにとことん拘って作り上げた本作は、その“尼”並に濃ゆい、程良くドロんこい内容となった。制作陣はHi-At Productionを始めBach Logic、Akio Beats、Tramp、Zetton、PBLで、客演陣も博多、静岡勢を含めた仲間オンリー。兎に角その詩心と独特なフロウの妙を味わって欲しい。「生きて泳げ!」。
12. Aktion feat. Zeebra / Still Neva Enuff (Pony Canyon)
俳優、サーファー、映像監督、MC(UBG)と4つの顔を持つ真のアーティスト=真木蔵人またの名をAktionがソロ名義では初のEPを遂にドロップ! タイプライターが用意しておいた沸点の高いバンギン・ビーツを完全にモノにした印象の表題曲はタイトルからも分る通り、Zeebraとの「Neva Enuff」の続編であり、アンサーでもある。“夢を諦めんな!”というメッセージは、それをまた違った角度から実体験を含めて胆振出した、Subzero制作「Ash to ash Dice to dust」にも繋がっている。表題曲のGas Crackerzリミックスもドープ!