Rebel Familia
Guns Of Riddim
 
Interview by Hajime Oishi / Photo by Rebel Nishi
 

最先端のダブ・ミュージック、または21世紀のレベル・ミュージックを標榜するRebel Familia。アリ・アップらゲストも迎えた久々のニュー・アルバム『Guns Of Riddim』は、重低音ベースとトラック/ダブ・ミックスが複雑に絡み合う壮絶な仕上がりとなった。
 
凄い。サンプルの音資料をいただいてから数え切れないぐらい聴いているが、今もまた手の中がじっとり汗ばんできてしまった。Jumbo Maatchらが参加した2004年作『Solidarity』がコラボレーション・アルバム的性格の強い作品だったことを考えると、純粋なオリジナル作としては実に4年ぶりとなる『Guns Of Riddim』。2001年の結成当初の彼らのライヴには何か生き急ぐかのように音を叩き付け合っている印象があったが、今作はスペシャルなベースとスペシャルなトラックが結び付くことで生まれる化学反応を繊細に録音したようなムードがある。だからこそ、彼らの凄みが際立っているのだろう。そこにそびえ立つのは、まさに“Guns Of Riddim”=リディムの要塞。
 
 「あのときの俺らは自分たちを客観的に見れるような状況じゃなかった。2人の叫びみたいなものをそのままやっていたから」(秋本“Heavy”武士)
 「生のベースと合わせるなかで、必要なものと必要じゃないものを考えながらトラックを作り始めたところがあるんです。前はベースとトラックのブツかり合いが大きく作用してたと思うんですけど、今はそれがクロスさせようとする意識が高まってる。意見のブツかり合いと汲み取り合いの両方が今はあるんですよね。そこが一番大きいかもしれない」(Goth-Trad)
 秋本もまた「今まで以上の信頼関係もできてきたし、もう一歩踏み込んで作ることができた」と話す。彼らが見つめるのは、レゲエ・ミュージックの骨格でもある“ドラム&ベース”の最新型だ。
 
 「自分のなかではレゲエにおけるドラムとベースの結びつきや意味の深さをずっと求めてきてるんですよ。だから、今も打ち込みっていう意識はまったくない。俺のなかでGoth-Tradのトラックは生のドラムと同じ感覚だから」(秋本)
 
 秋本はこう続ける。
 「今も俺はレゲエのベーシストだと思ってるし、今もレゲエを追求してる。レゲエやダブってのは本当に必要最低限のものでできてるし、レゲエはそこで勝負してるから、その分ひとつひとつの音が研ぎ澄まされていないといけない。そういう意味でGoth-Tradのトラックはより洗練されてきてるし、一音一音の意味が強まってると思う」(秋本)
 
 重要なのは、東京で唯一のグライム〜ダブ・ステップ・パーティー「Back To Chill」を開催するなど精力的なソロ活動を展開しているGoth-Tradの手腕が、Rebel Familia本隊の活動にもいい影響を与えていることだろう。「“新しい音楽を作る”っていう感覚が一番重要だと思ってる」とGoth-Tradは話すように、ここにあるのは流行追随型ではない新しい音楽の形。そこには彼らの明確なヴィジョンが表現されている。そんななか印象的だったのは、秋本のこんな言葉だ。
 
 「ミュージシャンである前に人間という意味で、どんな人間が音を出すのかが重要になってくると思うんですよ。音を出す前の人間のエネルギーの部分、そこが強くないと何も表せないから」(秋本)
 
 音の強さと説得力。それを結成以来追い求めてきた彼らの元には、強いエネルギーを発するパフォーマーがズラリと揃った。秋本みずから手紙を書いて口説いたというマックス・ロメオ、「信頼するメッセンジャー」(秋本)というShing02、ライヴの定番である「Gladiator」の進化ヴァージョンに迎えられたStruggle For PrideのImazato(!)、そして驚きの参戦、スリッツ〜元ニューエイジ・ステッパーズにして近年再始動したアリ・アップ(!!)。
 
 「リアルな世界を知ってる人間が作ってきた音楽、本音を言うための音楽??レゲエにせよヒップホップにせよパンクにせよ??それを同じリングに上げるのは俺らでしかできないと思ったから」(秋本)
 冒頭に書いたように、今作は凄い。だが敢えて強調すれば、彼らのライヴもまた凄い。
 
 「唯一信じてるのは、俺ら表現者と受け手の二者関係だけ。ライヴに来てくれるヤツらのことを本当に愛してるし、そいつらのためにはどこまででも行ってやると思ってる。ライヴでは俺らの持ってるもの全部を出すんで、特別な時間としてライヴに参加してほしい。みんなの厄を全部払ってやるぐらいのつもりでやってるし、ライヴが終わったらみんなピュアな気持ちでまた明日から頑張れるように…」(秋本)
 新しくてオリジナルでタフ。少々不器用なまでに我が道を歩み続ける彼らの姿が筆者にはどうしてもレゲエ的に思えてならなかったのだが、どうだろう?
 
「Guns Of Riddim」
Rebel Familia

[Positive Productions / HMS-61]