SPRAGGA BENZ
LIVE GOOD
 
Interview by Minako Ikeshiro /Photo by Devon Chin
 

 90年代から常にいい位置につけ、一目を置かれているスプラガ・ベンツから久々のアルバムが届いた。超充実作のタイトルは、『Live Good』。バッドマンのイメージは崩さないまま、「豊かに生きよ」とのメッセージが似合ってきたレッドスクエアの番長に話を聞いた。
  
●90年代後半になってドレッドロックスを伸ばしてラスタになりましたが、きっかけがあったのでしょうか?

Spragga Benz(以下S):いや、それは特にない。いろいろな出来事の積み重ねで自然になった。それまでに教わった世界の出来事が嘘っぱちだって気づいたのは大きかったかな。2000年の最後、世紀が変わる時に大事件が起こるってみんな言って恐れていたのに、何も起こらなかったろ? そもそも時間だって人間が決めた計り方だし、世の中をリードする人やメディアが都合のいいように解釈していたんだ。
 
●ルシアーノやケイプルトンらはまずジャーありきで、リリックでも全面的に押し出すしますが、あなたは得意のギャル・チューンやバッドマン・チューンはずっと続けていますね?

S:俺は言葉を売ろうとしていないから。俺は自分の人生を例えにしてみんなに伝えている。今回は「豊かな人生を」というのを、俺を経験を元に伝えている。
 
●90年代のキャリアでターニング・ポイントだと思うのは?

S:90年代にDJを始めてすぐに成功したのは大きかったね。薦められるままにマイクを握ったら、あっという間に人気が出てびっくりしたよ。
 
●キャピタル・レコードからメジャー・デビューしましたよね? 振り返ってみてどんな経験でした?

S:俺はビジネスに参入したばかりで音楽業界の仕組みをほとんど知らなかった。夢中で作った曲が売れて、彼らに気に入られて契約した。問題は、音楽に対して情熱を持っていた人と、決定権を持っていた人達とは別だったってことだ。計画されていたプロモーションはほとんどされなかった。そのうち、キャピタル自身が買収劇に巻き込まれてしまったんだ。
 
●本名はカールトン・グラントですよね? 周りの人にカルロスって呼ばれているのはなぜ?

S:母さんが付けたニックネームなんだ。カルロス・マルコムという人気のあるアーティストが昔いて、その人からもらった。
 
●フォクシー・ブラウンと付き合っていたことについて聞いていいですか?

S:付き合っていたのは本当だよ。二人とも別々の方向に進むことになったんだけど。
 
●キマーニ・マーリーと一緒に出演した『Shotta』は前評判が高かったのにお蔵入りになり、正規版がないままカルト・ムービーになっていますが、最近また話題になってますね。

S:正式にDVDが出る話は聞いた。第二弾の話も出ているけど、それも意味がある場合だけやるつもりだ。
 
●アルバムの話をしましょう。既発曲が半分以上占める構成にした理由は?

S:俺の曲はラジオやダンスでかかっていても、CDに収録されていないケースが多いから、まず前からのファンの要求を満たしたかったんだ。結果的に、今まで俺を知っている人だったら確実に楽しめるし、このアルバムで初めてきちんと聴く人は、ちゃんと俺の全容が分かる仕掛けになったと思う。
 
●「Move That Body」など、今回はポップなレゲエもやっていますね。

S:そういう気分だったんだ。あれはドラム・パターンも俺のアイディだよ。
 
●「Don't Lie」はブラック・アイド・ピーズのカヴァーですが、ヒップホップやR&Bはどの程度聴いていますか?

S:大して聴いてないよ。ラジオもあまり。ABBAやジャーニー、エア・サプライなんかの昔のヒット曲を聴いているんだ。
 
●「Rasta Wine」は肩の力を抜きつつ完成度が高いのがヴェテランらしいですが、曲によってDJのスタイルは変えてます?

S:あまり考えないで自然にやっているよ。こんな感じかな、って自然にやった方がうまく行くんだ。
 
●「Knock It」はフリスコ・キッドが参加してますが、彼は長年の友達?
S:そうだよ。今週末に彼が主宰する子供向けのコンサートに出演するし、クリスマスの俺のイヴェントにはやっぱり彼が出てくれるんだ。長年、そういう関係を築いているファミリーだね。

 
●アサシンも弟分ですよね? ほかに親しいアーティストはいますか?

S:そんなに多くないよ。あまり社交的ではないから。
 
●「Bedroom Slaughter」ではヴァイブス・カーテルと組んでいますが、仲直りしたのでしょうか? それともケンカになる前に作った曲でしょうか?

S:ケンカになる前に作ったんだ。
 
●彼に対してどんな感情を抱いてますか?

S:何の感情もないよ。
 
●彼にインタヴューした時、あなたとアサシンのことについて尋ねたら「どちらも敵だが、DJとしてはスプラガをリスペクトしている」って言ってましたよ。

S:奴はバッドなDJだ。それは間違いない。ただ、ふだんの振る舞いは少し落ち着く必要がある。まぁ、DJとしてすげぇと思っているから曲を作ったわけだし、実際にこの曲の出来には満足している。
 
●ドン・コルレオーニが手がけた「Vanity」はどんなコンセプトの曲ですか?

S:人生で何が大事か考えろ、という内容だ。金に振り回されずに人生と神についてよく注意を払うのが大事なんだ。金のために魂まで売る奴がいるけど、死ぬ時に結局持っていけないものだろ? がむしゃらに働いて自分の国を築いても、楽しまなかったらそれを受け取る子供の方だって嬉しくない。それより、信仰を持って毎日を大切に過ごして、気に掛けるべき人達をケアする方がよほど重要なのに、それに気がつかない人は本当に多い。
 
●次の目標は? S:何だろうね? もっとアルバムを作りたいかな。
 
"Live Good"
Spragga Benz
[Victor / VICP-63680]