Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND

Judah Eskender Tafari


Greetings Friends,
   
●信じられないことに、1980~1990年代にかけて僕がレビューしたチューンのいくつかは、レアで高価なコレクターズ・アイテムになってしまっているのだ。Tenastelinの「Commercial Bwoy」(Vibes Sounds)とSound Irationの「Seven Seals」(Mystic Red Corporation)の2つに加えMr Modoレーベルの全てのオリジナル7インチなどがそうだ。UKレゲエの本国以外の国での評価の高さに起因して、UKレゲエ・アイテムの方が本家ジャマイカのものより高い値段で取引されているようなのだ。これは、80年代に起こった国際的なレゲエの大ヒットを牽引したスター達ではなく、地に足の着いた活動で確実にファンの心を掴んできたUKアーティスト達のお陰だと思う。今の熱心なリスナーはそれらの堅実なアーティストが初めてマーケットにリリースしたチューンをなんとしてでも購入したいようなのだ。これが発売以来10年から15年しか経過していないディスクに常識では考えられないような高値が付く背景ではないだろうか。

●Studio Oneのファンには朗報だ。Heartbeatレーベルからたくさんの復刻リリース(それも全てボーナス・トラック付きだ!)に加え、Soul Jazzからも複数タイトルがリリースされる(Freddie McGregorの「Bobby Babylon」はマスト・アイテムだ)。 Studio OneビギナーにはHeartbeat『Best Of』シリーズから選りすぐった60曲を収録したボックス・セット『Very Best Of』がオススメだ。興味深いリリースとしてはSoul Jazzからの『Studio One Groups』と『Studio One Rude Boy』もある。これらにはなかなかお目にかかれないレア・チューンがいくつか収められている。『~Groups』にはThe Viceroys「4 The Struggle」、The Flames「Solid Foundation」、Carlton and The Shoes「Happy Land」、The Royals「Pick Up The Pieces」とThe Gladiators「Jah Jah Go Before Us」が、『~Rude Boy』にはKeith McCarthy「Everybody Rude Now」、 Skully「Mr Foundation」「Simms」「See Them A Come」、Dudley Sibley「Run Boy Run」とOwen Gray 「Ballistic Affair」がそれぞれ収録されている。もし、全ての曲を7インチで持っていたとしても、これらをCDで持っていれば便利だろうし、7インチを持っていない場合は2タイトルとも購入するのが望ましい! 僕が唯一不満な点はどちらのジャケットにもThe Wailersが使われているということ。これはレコード会社の戦略なのだろうか?

●初回プレスがわずか1,000枚だったDelroy Witterのアルバム『Mawamba Dub』が彼のD-Royレーベルから18年振りに復活した。この作品はラヴァーズ・モノとしてよりも、Dennis Bovellによるトラックの素晴らしさが評価されている。Bovellの音楽はUKレゲエのレベルを本家ジャマイカのものと同じ水準までに引き上げているのだ。80年代、Sugar Minottが『Mawamba Dub』からのトラックを使用したのだが、Minottのヴォーカル・スタイルにマッチしなかったのと、トラック自体がそれほど流行らなかったという理由で、Witterは注目を集めることはなかった。しかし、『Mawamba Dub』は年月が経っても輝きを放ち続ける名盤であることに変わりはない。

●パリに店を構えていたフランスを代表するレゲエ・ショップ、Blue Moonが25年の歴史に幕を閉じた。DJのPascal Soalhat、DJ/RappersのPablo Master、Daddy YodやSuperjohn、若き日のFrenchieらフランスにおけるレゲエのパイオニアがかつて出入りしていたショップだ。Blue MoonはBob Marley以外のレゲエをフランスに紹介した立役者であり、パリのレゲエ・コミュニティの中核を担っていたのだ。その上、オーナーのFanny FeenyはBlue Moonレーベルを立ち上げ、 Oku Onura、Burning Spear、Culture、Gregory Isaacsらのチューンをリリースしてきた。ネット・ショッピングとネット上で公開される無料の音楽ファイルの横行が新たな犠牲者を生んでしまった。パリのような大都市に店舗を借りて、在庫を持ち人件費を払いながら商売することはもう時代遅れなのだろうか? Blue Moonの閉店は本当に辛い。一時代が終わった気がする…。

●今年のグラミー賞のレゲエ部門には様々なカテゴリーに計40作以上のアルバムがノミネートされた。この中にはBuju Banton、Beenie Man、Ziggy Marley、Sly and Robbie、そしてUB40など常連に加え、Roger Robin、Saxon Soundのベテラン・シンガーCoco Tea、Big Youth、Macka Diamond、Voicemailらのサプライズが含まれていた。いままでのグラミーの傾向から分析すれば、僕はZiggy Marleyがアルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞すると踏んでいる。
 Till Next Time, Take Care...
 
(訳/Masaaki Otsuka)


Pablo Master and Daddy Yod - Paris 1988