Hidden Treasure
Discovering Vintage Reggae
Text by Yasushi Ishibashi
Lee Perry研究家、David Katz氏主宰の復刻レ-ベルAuralux。2005年上半期を代表する『Jack Ruby Hi-Fi』以降も、Roots Radicsの火花散るワン・ドロップが心に刺さる『Barrington Levy In Dub』等、快調なリリ-スで他の追随を許さない。そんなAuraluxの近作は、ダブの深い沼に誘う危険極まりない作品だ。まずは、Prince Jammy vs. Crucial Bunny『Dub Contest』、いわゆる“ダブ対決盤”の中でも一、二を争う格好良さで、Black Uhuru「Sun Is Shining」、Abyssinians「Satta Massa Ganna」と言ったディ-プ・ル-ツを更に深く高らかに昇華させたダブに放心必至。さらに全ダブ・ファン待望の『Dub Landing Vol.1 & 2』。Linval Thompsonプロデュ-ス、Roots Radicsの演奏による1980年/1981年に発表された2枚のダブ盤をカップリングしたもので、これも今年を代表する再発だろう。なお、“2 in 1ではなく、単独で出して欲しかった”というル-ツな貴兄に朗報!年末にオリジナル・ジャケットで『Vol.1』と『Vol.2』に分けてLPが発売される予定となっている。
一方の雄、“レゲエ博士”Steve Barrow氏は、U Royとのツア-等で多忙を極めた為か、Hot Pot、Blood&Fire両レ-ベルとも寂しいリリ-スだった。それでもSkin Flesh & Bones、Revolutionariesによる1975年発表の『Fighting Dub』を決める辺りは、流石の一言。これは、真のダブ好きなら蕩ける事請合いで、70年代末~80年代初頭の激しく、攻撃的なダブでは無く、手練ミュ-ジシャンによる極上の演奏を、Errol Thompsonのミックスでぐぐっと旨みが引き出された、聴く程に沁みる名盤と言える。
しかし老いても盛んなSteve Barrow、“イコライザ-”というDee-Jay専門再発レ-ベルの設立を宣言。一発目はGeneral Echo『Rocking And Swinging』だが、“Dee-Jayだけ?”“売れるの?”と関係者の間で話題騒然となっている。
ここ数年、David Katz(=Auralux)とSteve Barrow(=Hot Pot、Blood&Fire)の二極構造と化した再発業界だが、Badda Musicも忘れてはならない。D.E.B.音源を精力的にリイシュ-してくれたのも記憶に新しいが、今年は更にD-Royレ-ベルの作品を順次再発してくれるようだ。D.E.B.音源としては、当時未発表に終わったJunior Delgadoの幻のデビュ-作『Brothers』を世に送り出す。切なくもまだ粗さの残る青いヴォ-カルとヘヴィ-なトラックによって、直情的なル-ツ名盤となっている。
そして気になるD-Roy音源では、1978年にリリ-スされた、ル-ツ、ラヴァ-ズの硬軟取り混ぜた至高のダブワイズ『Mawamba Dub Warrior』が遂に再発される。
英国中心のレゲエ再発だが、フランス発のCrazy Joe(Joe Gibbs Europe)が今、俄然熱い。名ダブ・シリ-ズ『African Dub All-Mighty 1~4』、Dennis Brown『Visions Of 』等の同レ-ベルの代表作を、素晴らしい音質で続々と再発している。中でも白眉は、70's Dee-Jayとして人気の高いTrinityの大名盤『Three Piece Suit』だろう。内容、レア度、ジャケットのどれを取っても三ツ星級の作品で、“Real Rock”使いの「Kingston Two Rock」から「Mr.Bassie」、そして表題曲「Three Piece Suit」と続く流れで、何度も卒倒しそうになる。今後はJoe Gibbs & The Professionals『State Of Emergency』、Culture『Two Sevens Clash』(Joseph Hill追悼!)!)のリマスタ-盤を予定しており、ますます目が離せない。
これもフランスから突如再発されたPablo Gad『Hard Times』。牛の前で本人が座っているだけの、イナたく、意味不明なジャケは惜しくもスタイリッシュに変更されたが、極上の音質と言い、内容と言い、これは絶対に紹介したい。Aswad、Capital Lettersらと並ぶUKル-ツを代表する彼が1980年に発表した大名盤で、「Black Before Creation」「Crisis」などなど、曲名だけでル-ツ野郎をピンコ立ちさせる・・・。勿論、名前負けなどあり得ない強烈なル-ツ・チュ-ンが満載されていて、愁いを帯びた鉛色の声が揺れる、揺れる。最期はヴォ-カル、コ-ラス、トロンボ-ン、パ-カッションが渾然一体となって至福へと導く「Gun Fever」で心置きなく飛べば良い!!!
ここ最近、ル-ツな映像作品が充実してきている。ファンにはお馴染みの『Roots, Rock, Reggae』が、装いも新たに国内盤化されたのも嬉しかったが、Linton Kwesi Johnson(以下、LKJと略)のドキュメンタリ-『Dread Beat An' Blood』が至高の一枚だろう。1979年に英国で制作された本作は、16mmフィルムによる画像の若干の粗さが当時の不穏な空気感を増幅し、知性とク-ルな情熱に溢れたLKJの雄姿と相まって非常にスリリングな作品となっている。特に1978年にリリ-スされた同名のデビュ-・アルバムの録音風景、Dennis Bovellとのミックス作業、はたまた投獄された黒人の釈放を求めるデモにおいて、警察署の前で彼に捧げた詩を朗読する場面では熱いものがこみ上げてくる。
そうそう、Dennis Bovellと言えば、絶頂期の作品群がリマスタ-で一挙に再発されたのも話題となった。『Strictly Dub Wize』なども良いが、やはり真打ちは、自身のレ-ベルRamaで発表された4枚のオリジナル作品をそれぞれ2 in 1 CDにまとめた『Ah Who Seh? Go Deh! + Leggo! Ah-Fi-We-Dis』『Scientific,Higher Ranking Dubb + Yuh Learn!』だろう。Rama音源は、英Pressure Soundの編集盤『Deceibel』で部分的に聴けるようになったものの、未だ不完全な紹介のされ方だったが、これで溜飲を下げたファンも多い筈だ。ル-ツ・ダブ色の強い『Ah Who Seh?~』とラヴァ-ズ色の強い『Scientific~』とそれぞれに趣きは違うが、私は前者を圧倒的にお薦めする。
ここまではオリジナル作品の復刻盤を紹介してきたが、編集盤では、設立10周年となるPressure Soundの威信を賭けたディ-プ・ル-ツ集『More Pressure Vol.1』、ル-ツ・ダブ・Dee-Jayという切口からスタワンを掘り下げて来たSoul Jazzの一つの集大成と言えるSound Dimension『Jamaica Soul Shake Vol.1』が素晴らしい。一方、コンピの代名詞と言えるTrojanは新たな展開を見せており、極上かつレアなアルバムを限定プレス(シリアル・ナンバ-入り)で復刻する“Trojan Fan Clubシリ-ズ”を始動。既に数タイトルが出ているが、踊りださすにはいられないHippy Boys『Reggae With The Hippy Boys』がお薦めだ。
スペ-スの都合上泣く泣く外した作品もあったし、説明し尽くせなかった所も多々あり、本当に駆け足での紹介になってしまったが、掲載作品に興味を持つ人が少しでも居ればこれほど嬉しい事は無い。レゲエの獣道に是非とも足を踏み込んで頂きたい。