Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND
Levi Roots
Greetings Friends,
●先月のコラムでDesmond DekkerとRuddy Thomasの訃報を伝えたが、今月も同様の悲しいニュースをお知らせしなければならない。伝説的なルーツ系シンガーであり、Cultureを30年間以上も牽引してきたJoseph Hillが8月中旬に死去した。ドイツをツアー中に心臓発作を起こしたらしい。彼の死はレゲエ界にとって大変な損失だ。70年代初頭にStudio Oneに才能を見出され時から、彼は生まれ育った田舎で培われたルーツ音楽のスタイルを頑なに守り続けてきた。HillはFreddie McKay、Clifton Gibbsらと共にSoul Defendersの一員としてデビュー。同時期にデビューしたアーティストにはThe Selected Few、Vin Morganらがいるが、その中でHillだけが今まで音楽界生き残った。
これは一重に、日常生活や預言、政治、言い伝え、そしてユーモアといった題材を熱い血の通った音楽に仕立て上げる事ができた彼の才能による。HillはCultureに属していたが、このグループはほぼ彼の名前とイコールで結ばれるだろう。それほど彼の存在は他のメンバーを圧倒するものだった。Albert WalkerとKenneth Dayes、それにHillのオリジナル・メンバー3人は『Two Sevens Clash』『Babylon Bridge』『Africa Stand Alone』『Inter-national Herb』『Cumbolo』『At Work』など数々の名盤を残した。しかし、Hillこそがこのグループの看板をAriwaのBlack Steelらと共に掲げ続けたのだ。ほんの一握りの熱狂的なファンを除き、他の2人がステージに上がっていなくても全く分らなかっただろう。彼の死はレゲエ音楽業界のみならずこの世界にとって大きな損失だ。ラスタ・レジスタンスに深い理解を示し、沢山の人々に愛されていた男は数々の名作を残して去っていった。信じて欲しい、誰も彼の代わりはいない。
●King JammyのドキュメンタリーDVDがVPからリリースされた。VPのウェブサイトで是非チェックして欲しい。全てKingstonで撮影された映像にはNinjaman、Admiral Bailey、Wayne Smithらのインタビューが含まれている。面白い事に、この映像を撮ったのはOlivier Chastanというフランス人だ。彼は86年に母国を離れアメリカに移り住み、04年以来VPのミュージック・ヴィデオを撮影している。このDVDはジャーナリズムの観点ではなく、あくまで商業的な目的で作られたものだが、この種のドキュメンタリーは皆無に等しく一見の価値があると思う。
●Levi Rootsは、若い時にCoxone Outernational SoundでDJとして研鑽を積み、自身のプロダクション及びConquerorレーベルを80年代に旗揚げした。彼はMikey GeneralやEarl Sixteenらのアーティストを育てたが、トラブルを起こして軽犯罪者用の刑務所で短期間過ごす不運に見舞われた。出所後、DJというよりもヴァイタリティ溢れるシンガーとして音楽シーンにカムバックを果たした。そして、アルバム『Free Your Mind』がヒットし、彼のSoundboxレーベルからは、Leviのプロデューサー手腕のお陰で次々と才能あるシンガーがデビューしていった。先日、僕は彼から貰った電話で彼の新しいビジネス、"Rastaraunt”の事を聞かされ少々驚いた。
この商売は名前から想像できる様な飲食店ではなく、一風変わったパフォーマンスの事を指し、既にジャマイカでかなりの人気を得ているらしい。簡単に説明すれば、"Rastaraunt"とはLeviがギターの弾き語りをしながら(ボンゴ奏者がいる場合もあるらしい)、ジャークチキンやアキー&ソルトフィッシュなどの料理を作るというショーらしい。その上、彼自身が開発したLeviブランドのペッパー&ジャーク・ソースを使い実演販売をしているというのだ。ある意味ポスト・モダンなパフォーマンスはジャマイカの裕福な人々の結婚披露宴やパーティのアトラクションとして人気だそうだ。最近ではSky TVや新聞を始め、様々なメディアで取り上げられ、Sainsbury'sスーパーのような食品小売会社も注目し始めているようだ。サイドビジネスとして始めた事がLeviの新たなサクセス・ストーリーに成りつつある。詳しい情報はwww. reggaereggaesauce.comで…。
●8月下旬まで息子のフランスでの学校探しで忙しく、絶対に観たかったEnglandでのライヴを見逃してしまった。僕が以前住んでいたKent出身のヴェテラン・バンドIntensifiedが、僕の1番好きなシンガーの1人、Alton Ellisのバックを務めたコンサートだ。スカ・リヴァイヴァル・ブームの中に現れた彼らは、今では貫禄さえも漂わせ、ジャマイカ音楽の正統派バンドとしてUK中にその名を轟かせるまでに成長している。両者のスケジュールの都合でリハーサルを設ける事ができなかったらしい。しかし、そのショーは、僕の友人でAltonのNo.1ファンであるLaul(彼は所有している川用のボートにAltonの名前を冠するぐらい熱狂的だ)が、生涯観たAltonのステージで最高のものだったと太鼓判を押しているのだ。LaulはIntesifiedの音楽をからかい半分しか聴いた事がなく、いつも辛口な評論ばかりを口にした事がない男なのだ。ホーンを全面にフューチャーしたバンドは、繰り返しになるが、ぶっつけ本番で偉大なシンガーとの共演に挑んだのだ。
彼らは、Altonが過去に共演したどのバックバンドよりも生命力漲るサウンドで偉大なシンガーをサポートした。Laulによれば、特に「Dance Crasher」は、彼が床にひれ伏すほどの神がかり的ともいえる素晴らしい出来栄えだったらしい。Intesifiedは、Altonを始めとするファンデンション・シンガーが必要とする過去のオーセンテックなサウンドを奏でる数少ないバンドの一つだ。ドイツの興行会社GroverはIntesifiedについて僕と同意見を持っているようで、彼らのヨーロッパ本土のツアーを計画しているらしい。もし、それがダメなら僕がなんとか自分の力で彼らを本土へ上陸させるつもりだ!
Till Next Time, Take Care...
(訳/Masaaki Otsuka)