STEPPING FORWARD
 
Interview by Minako Ikeshiro
 

   大ブレイク中のリアーナを始め、「ダンスホール」や「カリビアン」をキーワードにした女性アーティストが次々とシーンに登場して姦しい。性別以外は共通点がないくらい多種多様だが、ここでは「ジャマイカ産」にこだわって、レゲエ・ウーマン達の打ち出しと立ち位置をレポートする。

 タンヤの発言にあるように、ジャマイカでは女性の人口が男性のそれを大きく上回る。にもかかわらず、レゲエ界は半世紀近くも男性優位のまま。それが、ここ最近、異変が起きている。エッチだけど華に欠けるのがレゲエだったので(ファッション・アイコンもいないし)、昨今の若手女性アーティストの台頭は嬉しい限り。女性陣のタイプと音楽性が様々なのも、シーンの彩り効果としてプラスになっていると思う。個別情報のトップは女王。レディ・ソウは長年のBFでプロデューサーのジョン・ジョンと子供が欲しいそうで、子作り休暇に入るらしい。ソウのライヴァル(でも顔は似ている)タンヤ・スティーヴンスは、インタヴューからも窺えるように絶好調。カルト・ムーヴィー『Shotta』を摸した「These Street」のヴィデオも高品質で、展開が楽しみ。(『Shotta』はDVDで正式にリリースされる上、続編の話も出ているとか。スプラガ人気、復活!?)。ダンスホールの現場で一番ホットなのがマッカ・ダイヤモンド。島内外のビッグ・イヴェントから、クラブのダンスまで精力的に動いていて、見かける確率が段トツで高い。アルバム『Money-O』は要チェック。彼女ほどではないが、レディ・Gやクィーン・ポーラなど中堅勢も活躍中だ。

 この下の世代に属し、海外からの注目度が高いのがアップタウン/お嬢系のアーティスト。タミー・チン、アレイン、クリス・ケリーあたりが筆頭株で、音楽的にもヴィジュアル的にもアメリカのアーティストを意識し、45をカットしつつ、プロモーションの中心にPVを据え、曲と外見、イメージをセットにして売り出している。ジャマイカでケーブル/衛星放送がいっきに普及し、BET、MTVのほか、レゲエの音楽チャンネルが3~4つあるところに、ソカも流すMTV傘下のTempoも加わってソフト不足気味なくらい。その需要に応えるように、カメラ映えする女性アーティストが一気に出て来たワケだ。一足先にデビューを飾ったタミー・チンはイギリス系と中国系の血を引き、バックアップしているプロデューサー集団のサウス・ソウルはフロリダで結成された国際派。ダンスホールをベースにしたポップ・レゲエが詰まった『Out Of Many..One』(これ、ジャマイカのスローガンです)が日本でも好評を博している。

もう一人のお嬢系、アレインはR&Bマナーでも歌えるのが強み。アメリカ生まれでジャマイカで育ち、またアメリカでソングライターの修業をして出戻ったというややこしい経歴の持ち主で、ピアノの素養もある。"Seasons" の「No Ordinary Love」のヒットで名前を覚えた人も多いだろう。一昨年辺りからヴィデオが流れているクリス・ケリーや、コンピューター・ポール肝入りの3人組MBCは、日本盤で先行デビューするという展開。『My World』を間もなくドロップするクリス・ケリーはネリー・ファータードとマネージメントが同じとか。ジャマイカでのヒットはヴァイブス・カーテルと組んだ、映画『Fame』主題曲使いの「Live Forever」。この一群より前から活動をしているサシャはラテン圏の島々でかなり人気があるし、ソウとの「Loser」でリリックのセンスの良さを見せたセシールにも期待したい。系統的にはソウやマッカに続きつつ、世代的には後者に入るのがスパイス。マッドハウス所属、デイヴ・ケリーの秘蔵っ子で、"85" リディム「Fight Ova Man」で浮上。今年の「サンスプラッシュ」にキャット・ウーマンの格好で登場した、キャラクター勝負のDJだ。ほかに注目DJとてして、ビーニ・マンの嫁、ディエンジェルもいるし、夏、ジャマイカで見かけた双子DJも気になる(名前を調査中)。

 ザッと紹介しただけでこれだけいるのだから、来年はさらに勢力マップが変わるかも。いや、面白くなって来ました。

" Money- O"
Macka Diamond
[Greensleeves / GRELCD284]


" Out Of Many...One"
Tami Chynn
[Universal / UICU-9030]


" My World"
Kris Kelli
[Pony Canyon / PCCY-01801]


"Make Boys Cry"
M.B.C.
[Toshiba EMI / TOCP-66599]