セルフィッシュ・レーベルから8年ぶりにニュー・リリースのお知らせ。DJジャミネマンによる「サイドマン」! ジャミネマンは1998年の『Riddim』誌「アイランド・エクスプレス」、184号と185号「Dreams Come True」で紹介したキングストン在住日本人DJ、ゆーのー。
「サイドマン」とはジャマイカで、トラックの後ろに乗り、積荷や運搬配送の仕事をする人たちのことで、補助的な仕事をする人の総称でもある。ジャミネマン的にはサイドマンは、彼氏がいるとわかってて狙ってくるいたずら男。メインじゃないとわかっててその隙をつく第2第3彼氏。軽い恋愛のお相手、をさす。
Mi nuh miss, mi nuh mess, a nuh must miss girl. ミスはしない、混乱させない、絶対って訳じゃない。Miss yuh to Mrs. mi a mischievous. ギャルからミセスまで、ボクは悪戯好きなのさ。
ジャマイカ男の評判は、すこぶるいいとは言えないね。料理もアイロンがけもうまいし、ラフで力持ち。口は悪いけどやさしい。でも女にだらしない。リップ・サービス大得意。女と見れば声をかけずにいられない。何人もの女性を掛け持ちするイメージがあるが、真実なのだろうか。
私はここに、ジャメーカの男と女事情をみる。浮気とはちょっとちゃうねんな。ジャマイカで誕生する子供の約80%が未婚カップルの間に生まれている事実、が背景にありそう。ジャマイカは結婚率が低いのだ。恋愛して子供が生まれる、そのうち別れちゃうカップルもいる。お互いに別の相手ができてても、子供がいるから何かと会う用事もできる。そうすると、ときどきそうなる。これがベビーファーザー系サイドマン。昔の男系サイドマンもこれに然り。Still。恋愛や妊娠の結末が結婚というどこかの先進国と違って、この国はもっと個人主義でドライである。恋愛に社会的責任など介入しない。そのために恋愛度の熱は高くなる。ジャマイカ人は恋愛に貪欲で、男も女も恋愛にかける情熱は惜しまない。
Give mi likkle piece, no(ぎみりこぴーす、の)と、男が女に哀願するのを聞くよね。これ、ジャメーカ流ナンパの言葉。ふざけた言い回しだよ。「ちょっとだけちょうだい」=「ちょっとやらせて」。Likkle Pieceって何よそれ。
Mi nuh dis, mi nuh pest, pass mi pass. ディスはしないよ、悪さもしない、通り過ぎるだけ。
サイドマンは引き際がいい。トラブルは嫌い。メインマンのビジネスを邪魔しようとはしない。「ほな、メインマンによろしく」まで言っちゃう。サイドマンは基本的にマメ男で、女に都合のいいキープくんでもある。
ジャマイカはセックス産業がなく、あっても未熟なの。女の子にとっても簡単にいいアルバイトってのがあるわけでもなく、それが援助交際的サイドマンが存在する理由だろうか。
「あたしの彼はちっともお金くれなくってぇ」。So dem do it. ジャマイカの女の子的には、恋愛にお金が介入すべし。Easy nuh.
サイドマンは、倦怠期の隙をつく。メインマンにとっては怖い存在でもあるのよ、時に。See mi a seh. メインだと思ってたら大間違い、てなことも時に。Go deh, ごでごで。
B面は日本語ヴァージョン、でもジャマイカと日本じゃ恋愛の背景が全然違うから、日本語では片思い胸きゅんチューンに仕上がってます。
セルフィッシュ・レーベルは、自分で作って自分で歌って自分で売る、自分のためのわがままレーベル。キングストンにある、プライベートのルーツ系スタジオ「Rootsy Endz Studio」で録音、ジャミネマン初のラヴ・ソングです。ラジオのディスク・ジョッキーにも渡したけど、その番組で全然かからないから、あげたレコードを返却してもらった特異話もあり。リッチーBにも「番組でかけないなら返せ」と言ったが、彼は3回番組でかけたそうな。ディスク・ジョッキーにはレコードを売るべし。買えば、それだけ投資したんだからラジオでかけるだろう、てのがジャミネマンの考えらしい。
サイドマン、サイドサイドマンマン、Anytime you call mi.