CHAM

REALGHETTO STORY
 
Interview by Mineko Ikeshiro
 

 祝! ベイビー・シャムもといシャム、メジャー・デビュー!! 「Many Many」時代からのファンやデイヴ・ケリー・サウンド支持者は、「Ghetto Story」の大ヒットで晴れがましい気持ちになったハズ。同名タイトルのこのアルバムは新型ダンスホール満載、攻勢を緩めないシャムからの報告だ。

●「Ghetto Story」がここまでヒットすることは予想していましたか?
Cham(以下C):ある程度は予想していたけど、世界中で受け入れらるとはさすがに思っていなかったな。リリックのほとんどが実体験で、パーソナルな曲だったし。

●ゲットーで子供達が銃を手に入れて周りを見返す内容が、当初、ジャマイカで賛否両論を起こしたようですね。
C:変わり身の早さに関しては、ジャマイカのラジオは酷いね。最初は盛り上げてから、暴力的なジャマイカを面を強調するから良くないとか言い出して、MTVでかかったら今度はまた持ち上げ直した。ダンスホールには暴力的な曲がもっとあるのに、どうしてあの曲だけ騒がれるのか分からないよ。俺の子供の頃に本当に起こったことをそのまま曲にしているだけなのに。

●映画『シティ・オブ・ゴッド』も舞台はブラジルですが、基本的なストーリーはに同じですよね。
C:貧富の差が激しい国ではよくある話だよ。世界中のゲットーに似た話が転がっている。ヒップホップのアーティストにも「スポンジが水を吸うみたいに話が分かる」って言われる。道で「俺達の話と一緒ですごいリアルで、だから気に入っている」と言われることもある。

●ショーン・ポールと同じレコード会社にいるのはプラスが大きい? それとも、マイナスの方が大きいですか?
C:プラスかマイナスかはまだ分からないけど、今のところ調子いいし、ショーン・ポールと俺が全く違うタイプのアーティストだってことはもう伝わったとも思う。彼はダンスホールの明るい部分、ハッピーなフィーリングを体現しているし、俺は全く逆で、ハードコアなダンスホール・アーティストだ。ギャル・ネタをやるにしても彼は「Vitamin S」みたいな曲は作らないだろ。ダンスホール・レゲエにはたくさんの兄弟がいて、俺みたいな違うタイプのがいるのはいいことだ。ハードコア過ぎると言われた「Ghetto Story」が当たったことで、取りあえず、俺の実力は証明できたと思う。

●インターナショナルな展開をするに当たって、ショーンからアドヴァイスを貰いました?
C:いや、俺達は普通の会話しかしないよ。「アサイラムでこんな曲かかっていたぞ」とか。彼は俺もそれなりに経験があって、賢いのは知っているから、そこはちゃんとリスペクトしてくれるんだ。

●参加しているアーティスト達を紹介して下さい。
C:「Bad Boys」に参加しているティア・ジーンはイギリス出身で、マッドハウスと契約するかも知れない。彼女自身が "85" を使ったデモ・テープを送ってきて、デイヴが気に入って全く違うビートを作った。「Girl」で歌っているジミー・チーズトリックスもマッドハウスの新人。何でも歌えるから、注目していて欲しい。マジック・マッセイはユニバーサルと契約しているR&Bシンガーだ。リアーナの「Boom Boom」はずいぶん前に作ったデモをまず彼女に送ったら、気に入ってすぐに自分のパートをやってくれたんだ。俺は、彼女自身を相当気に入っているけど(笑)。あと、「Love It Like That」で歌っているのはトリニティーで、ナイスなレディがいっぱい参加しているのがいいでしょ。実は、レディ・ソウとも曲を作ったけど、アルバムには収録できなかった。あと、妹分のスパイスに参加してもらえなかったのも残念だね。

●『Wow...The Story』と本作の違いは、あなたがより多くのスタイルを身につけていることだと思います。
C:それと、大人になったことだね。以前より伝え方に幅が出たと自負しているよ。ストレートなパトワだけだと伝わらない部分も多くなってしまうから、英語でうまく言い換える工夫をここ数年で身につけた。元々のハードコアな味を薄めないで出来るやり方があるんだ。

●最初にバッド・ボーイ系の曲を固めて、後半レイディース向けのセクションに変わる流れにしたのはどうして?
C:「Ghetto Story」から「Boom Boom」に繋げたら雰囲気がギクシャクするだろ。ハードコアなサイドから、もうちょっと明るいサイド、それから俺の情熱的なサイドにシフトする流れだ。
●ドラム・パターンがかなり面白い曲がありますね。ダンスホールとは言い切れない、という感想が出たらどう対処しますか?
C:リリックがダンスホールだから、俺の音楽はダンスホールだよ。音楽に境界線はない。数年前、パフィがR&Bのビートにラップを乗せ始めた時、ヒップホップではないと言われたのに、今では主流だ。デイヴもリスクを冒すのと厭わないタイプだ。「Rude Boy Pledge」もどの曲に似てないくらい斬新だけど、ジャマイカで絶対ヒットするよ。

●ジャマイカのダンスホールの流行は気に留めてますか?
C:全然。ほかの人がやっていることは好きだし、楽しんで聴いているけど、自分はそこから影響を受けない。出番が来たら、俺自身らしい音を作るだけだ。

●この作品でもっとも表現したかったことは?
C:ゲットーの様々なストーリー。苦難も恋愛もあって、ダンスホールに出かけて楽しむこともある。ダンスホールは貧しい人達が作った音楽だからね。だから、このアルバムからは、ジャマイカのリアルな生活を感じ取って欲しい。

「Ghetto Story」
Cham
[Warner / WPCR-12405]