HIBIKILLA GOKI

CRISS BLOOD
 
Interview by Mineko Ikeshiro / Photo by Andrew Cotterill
 

続々と力作が到着している日本のダンスホール・シーン。その中でも、近年現場を沸せ続けたこの2人のアルバム・リリースは“待望”と言っていいだろう。HibikillaとGoki----そのキャリアを振り返りながら、充実の仕上がりとなった2作品をチェックしてみよう。

 まず、東京でもっともイキの良いハードコアDJとして「100列拳」などのヒットをトバしてきたHibikillaから、いきなりのメジャー・ファースト・アルバム『No Problem』が到着。彼が初めてマイクを握ったのは高校の文化祭で、「全校生徒数百人の前で誰も原曲を知らないであろうバウンティ・キラーの“Celluler Phone”をモブ・ディープ“Shock Ones(Pt.2)”のオケに乗せて歌ったときです。今考えてもこれはハーコーに過ぎますね」というから、根っからのハードコアDJだ。上京を期に本格的な活動をスタート、99年にはKen-UやSoldierらも出演していたダンスを主宰するようになる。

 「DJもサウンドもとりあえず毎回クラッシュ。やっぱ若い頃の無茶はするものですね」

 その後、Zeebraも所属するマネージメント・オフィス、Solomon I & I Productionとの出会いを経て、今回のアルバム・リリースとなった。「サウンド面では、中途半端に他のジャンルの要素を採り入れてしまうとそれはそれでミクスチャーというものに分類されてしまうので、ハーコーなド真ん中のレゲエ・サウンドに拘りました」という今作には、Ken-UやHan-kun、Rudebwoy Faceといった同世代アーティストから、Zeebraやタービュランス(!)までが参加している。そのなかでもっとも耳を惹くのは、タフなノドを活かしたHibikillaのDJイングそのもの。社会情勢をバッタバッタと切り捨てたりもする話芸の豊かさも、政治家とのディスカッションもこなした経験のある彼ならでは力強さが漲っている。

 「いわゆるギャル・ネタ、ガンジャ・ネタ、 ダンス・ネタ、サウンド・ネタなど定番ネタを一切やっていません。より自由でありながら、思想的、思索的なメッセージが多いですね」

 読者へのメッセージを求めると、一言「革命」。伝えようとするテーマとハードコアな表現スタイルが高次元の融合を見たこのアルバム、かなりの破壊力を持った一枚である。

 続いて紹介するのは、湘南~横浜を拠点に活動するGokiのファースト・アルバム『ごきげん』。各地のダンスでも支持率上昇中、まさにナイス・タイミングでのリリースである。そのGoki、今作にも参加しているInfinity 16の交流を経て、一時期は湘南乃風の一員としても活動していた。だが……「メンバーのみんなと一緒にやりたいっていう気持ちはスゴくあったんですけど、自分なりのレゲエを追求したかった。Gokiという人間をアピールしたかったんです」という理由から単身ジャマイカに渡り、1年半ほど現地での活動を体験。帰国後に出会ったのが、今作のプロデュースを手掛けたRude Fish MusicのI-Watch(Home Grown)とMakochingだった。

「お互いのヴァイブスがビンビン伝わってきて、この人たちとやりたい!と思った。オレのほうから“曲は書きますのでアルバムを作りましょう”ってお願いしちゃいました」

 自身のヒット曲「ゴキ源」をもじったタイトルを冠し、Rude Fish Musicが制作した温かみのあるリディムも心地良い今作、Gokiという男の等身大のキャラクターはそのままに、その中にMunehiroを招いた「Dance☆Dance☆Dance」のようなダンス賛歌、“Scoobay”リディム使用の「Sukebay」のようにジャマイカの流行を意識したジョグリン、「I Need...」のようなラヴ・ソング、「かさぶた」「くつした」のように独特な言語感覚を駆使したチューンなど、多彩な色合いに彩られている。そこには、DJとして「基本はお客さんに楽しんでもらうこと。んで、その中にオレの伝えたいメッセージを織り込んでいくこと」を大切にしているという、Gokiの“現場感”がしっかりと息づいているのだ。「みんなにメッセージが届くようがんばっていきますのでヨロシクです!」と話すGokiにとって、今年は飛躍の年となるに違いない。今作はそう確信させるほどの出来なのだ。ぜひぜひチェックしてほしい。

"No Problem"
Hibikilla
[Pony Canyon / PCCA-02285]


" ごきげん"
Goki
[Spice / RFRD-001]