PUSHIM
I Pray

Text by Maki Kawaguchi / Photo by Takayuki Abe
 

 我らがPushimが名曲「Anything For You」以来、約1年ぶりとなるニュー・チューン「I Pray」を7/5にリリース。この夏に全国津々浦々で開催される様々なビッグ・ダンスでこの曲が歌われたとたんライターが灯されるであろう必殺バラード・チューンとなった。

 昨年8月のセレクション・アルバム『DAZZLEZ~songs of songs』リリース時のインタビューで、「次のアルバムの構想は既に出来ている。それをゆっくり形にしていきたい」と語っていたPushim。その後、彼女は「レゲエ・ジャパンスプラッシュ'06スプリング」「スプリング・グルーヴ」といった大規模なフェスに出演したり、Home GrownやBoy-Kenの作品にフィーチャリング参加するなど、ライヴ活動やフィーチャリング仕事に勤しんでいたわけだが、その間にも先述の言葉通り、自分のやりたい音楽をゆっくり丁寧に具現化していたのだろう。

一日でも早く新曲を聴きたいというのがファンの切ない思いでもあるが、しかし彼女には素晴らしい作品を届けてくれるという確信が常にあるし、実際彼女はそんなファンの思いを裏切ることなど今まで一切なかった。それは今回も同様。シングルとしては「Anything For You」以来1年振りとなるニュー・チューン「I Pray」も、待った甲斐のある、且つ実に説得力のある名曲となっている。

 生のストリングスを大々的にフィーチャーしたイントロから一気に惹き込まれる本作、そのまま緩やかなサウンドに乗せてPushimは困難に負けずに前に進む大切さを、そして愛の大切さを力強く歌い上げている。巷に溢れる“バラード”とは明らかに一線を画す“厚み”は、彼女の生命力溢れる歌声だからこそ生まれるものだし、この厚みがあるからこそ、彼女の曲はずっしりと胸に響き、そして感動を生む。もちろん彼女は“クイーン・オブ・ジャパニーズ・レゲエ”と呼ぶに相応しいレゲエ・シンガーであるが、この「I Pray」に綴られた一言一言はジャンルを越えて多くのミュージック・ラヴァーの胸に響くだろうし、06年夏の忘れられない1曲として今後も多くの人に愛されること間違い無しだ。

また、今作が生命力に溢れた力強い作品ながらも、繊細で包容力豊かな作品となっている要因には、Pushim本人や今作のプロデューサーであるTanco(Home Grown)の力はもちろんのこと、女性エンジニア、Angela Pivaの手腕も大きいだろう。女性ならではの感覚でPushimの歌声が持つパワーをより繊細に、より魅力的に引き出しており、結果Pushimにしか作り得ない壮大且つ女性的な優しさも伴った素晴らしい“レゲエ・バラード”が完成したのである。歌声、歌詞、サウンド、すべてが有機的に作用し誕生した傑作「I Pray」、生まれながらにしてクラシックと呼ぶに相応しい作品だ。

 この新曲に続いてすぐ5thアルバム『Sing A Song, Lighter』のリリースも控えているPushim。「I Pray」1曲だけでも身震いするほどの素晴らしさなのに、果たしてアルバムにはどれほどの名曲が詰まっているのか。考えただけでもドキドキしてしまうが、間違いなく言えるのは、アルバムでも彼女はこちらの期待を裏切ることはないということだ。


「I Pray」
Pushim
[Ki/oon / KSCL-994]