FIRE BALL
 
Text by Oishi Hajime / Photo by Oennis Morris
 


 Fire Ballから通算5作目となるニュー・アルバム『Sounds Of The Revolution』が到着。“革命の音楽”と題された今作が伝えようとしているものとはいったい……? 今年の夏も各地のビッグ・ダンスへの出演が決定し、ただひたすらに前進し続ける4つの火の玉が語ってくれた。

●Fire Ballの前作『999 Musical Express』は、現場対応チューンと全体の物語的構成のバランスをうまく取った過去最高の完成度を誇るものであって、それは彼らのひとつの到達点とも思えるほどのものだった。だが……言わずもがな、コンスタントにアルバムをリリースしながら、なおかつ着実にステップアップしていくのはとても困難なことである。それが例えFire Ballだとしても。

 「プレッシャー? うん、いいプレッシャーだね。なにか物事をやり遂げるにはそこに苦しみがあって、それを乗り越えてこそ自由を得られるから」(Jun 4 Shot)

 「“常に自分のベストを出しつくさなきゃいけない”っていうプレッシャーと戦っている気がする」(Truthful)

 小さなハコでマイクを握り始めた4つの火の玉が集結し、より大きな炎の塊となって活動を開始してから長い月日が経った。彼らはその間、あらゆる障壁を乗り越え、その先だけを見つめてきたわけだが、そんな彼らが通算5作目にして冠したアルバム・タイトルが『Sounds Of The Revolution』。

 「今年はMighty Crown15周年っていうことで、まず“Revolution”っていう言葉が浮かんだ。俺らが15年間続けてきたことは、今になってみると革命的だったのかなって。テープ一本、小さなハコから続けてきて、ずーっと“Revolution”。理想に達してないから、まだまだこの“Revolution”は続くものだと思う」(Truthful)

 内容に触れる前にひとつだけ。この『Sounds Of The Revolution』というアルバム、自身で設定した高いハードルを見事に乗り越えた、これまた過去最高傑作の賛美を送りたくなるような作品である。そんなアルバム・タイトルに込められた意味とは??。

 「ホントに少しずつでもこの“音”で変わっていったらいいなっていう意味を込めて。事実、俺らもレゲエに出会って人生が変わったし」(Chozen Lee)

 「いいほうに物事が変わっていけばいいと思う。日本語で“革命”っていうと重たいイメージがあるかもしれないけど、常に良くして行こう、 変えていこうという気持ちが込められている。変わっちゃいけないものもあるけど」(Truthful)

 彼らの言う変化とは、リスナーの心に訴えかけるものだけではない。Fire Ball自身の変化も、今作において“チャレンジ”という形で表れている。まず強烈なのが、Jumbo Maatch、Takafin、Boxer Kidを招いて7本のマイクで暴れまくる「Deep Redd」。

 「前から一緒にやりたいと思ってた。ヤツラのレコーディングを見て、やっぱ早いなって思ったね。強力な曲ができた」(Chozen Lee)

 「遅かったぐらいだけど、やっと迎えられる体制になった感じだね。こっちで大まかな流れを決めて、また直接集まって綿密に話し合いながら進めたんで、満足」(Jun 4 Shot)

 「現場でファイアーする曲だね」(Criss)

 また、4人それぞれをメインに据えたソロ・チューン的性格の楽曲の収録もチャレンジのひとつだろう。Sunset The Platinum Soundが持ち寄ったリディムのうえでJun 4 Shotが野太い歌声を聴かせる「Stamina Papa」、Jungle Rootsを従えたChozen Lee主導のゴキゲンなスカ・チューン「カンフー・ファイター」、Truthfulらしいサウンドシステム賛歌「Sound System Man」、Crissがドン・コルレオン制作リディムを軽やかに乗りこなす「Footsteps」……これらの楽曲では、過去ソロや単独の客演仕事でも多くのビッグ・チューンを発表してきた4人が、卓越したソロ・アーティストの集団であることを再認識させられる。

 「今回のアルバムのひとつの核になってるね」(Chozen Lee)
 「前のアルバムから言ってたことだったんだけど、今回ようやくできた」(Criss)

 また、「俺らも毎回新たに力をもらってる」(Jun 4 Shot)というお馴染みのJungle Rootsが5曲に参加している他、すでにリリース済みのRhymesterとの「Heat Island」やCrissの伸びやかな歌声が一際感動的に響く「Birdman」のニュー・ミックスも収録。全体を通じて過去最高に現場のヴァイブスを注入した印象のある作品となった。

 「それはあるね。レゲエを創ろうっていう意識のなかで曲がシンプルになっていった部分もあるし、ストレートなメッセージや現場でかかる曲の意識もあった」(Truthful)

 繰り返すようだが、今年はMighty Crown結成から15年。その最大のピークと言えるのが、やはり横浜スタジアムでの開催となった「横浜レゲエ祭」だ。

 「自分らの生まれ育った街のスタジアムで15年目にしてできるっていうのは光栄なことだし、だからこそ、これをスタートにして次に繋げていくもんにしていきたい。そのためにも、みんな楽しんでほしいし、マナーをまもって無事に笑顔で帰ってくれれば満足です」(Jun 4 Shot)

 「……出るからには打つ!」(Chozen Lee)

 2006年、Fire BallとMighty Crownファミリーのダンスホール・レヴォリューションは新たな局面を迎えようとしている。その瞬間をぜひ耳と身体で体験してほしい。

「Sounds Of Revolution」
Fire Ball
[東芝EMI / TOCT-26045]