RICO RODRIGUEZ

JAPA-RICO
 
Text by Noboro Yamada / Photo by Sho Kikuchi
 

 ゴールデン・ウィーク直前、トロンボーン奏者リコ・ロドリゲスが来日し自身のトリビュート・アルバムを日本人の名うてのミュージシャン達と制作中という情報が入った。さっそくリコと付き合いの長いライター、山名昇に品川の某スタジオに向かってもらった。

【4月24日(月)晴れ、22℃】
 先週会ったスクービー・ドゥのメンバーが、リコのレコーディングの本番が今日だと、メール&地図まで送ってくれたので、出掛ける。モノレールの大井競馬場で降りて、「湾岸音響」へ。途中、山の手線が動かなくて、各駅停車に変更された京浜東北使用。暑い。

 リコはまだ来てなかったが、顔見知りばかりのスタッフらと話す。今回の企画は、リコ本人が参加するリコへのトリビュート。いつしか彼は、十分「親日家」と呼べるようになったし、来日回数を重ねた彼への日本サイド(ミュージシャンもファンも)からの暖かい気持ちは、まだ続いているのだ。参加アーティストたちは、既にオケを録り終え、そのバックトラックのCDRを携えてクーボが渡英。打ち合わせの中で、これは演りたくない、とか、キーを下げてとか、テンポを落として、とかの注文がリコから出たのかと言えば、実は全てOKだったらしい。歌う曲に◎印、トロンボーンを吹く曲に○印が付いた「表」を、クーボが持ち帰った。

 そうこうするうちにリコ登場。運転手役がアルファ・エンタープライズ小林さん。小林さんとも久し振りだ。リコは相変わらずyamanaと発音出来ないが、yomogiかなんか言われて、ハグする。カメラマンの菊地さんが「後で(また)二人の写真撮ってあげるよ」と言ってくれて、それは嬉しかったが、ハグといい、二人だけの写真といい、僕と付き合いの浅いスクービーのメンバーは、僕がどうしてそこまでリコと仲がいいのか、不思議に思ったかも。

 スクービーが選んだのはスペシャルズの「Enjoy Yourself」。なるほど。まずリコの歌を被せ、その後、トロンボーンにも挑戦。挑戦、というのは失礼だが、最初はやや危なっかしかった。ま、最終的にはOKテイクが出来たけれど。このペースで1日2曲仕上げていくそうだ。だんだん調子が上がっていくのならいいが。今日の後半のズート16のメンバーが集まったところで、退散。まだ電車が動いてないらしく、スクビのリーダーの車で渋谷へ。他のメンバーと下北沢に移動、最後は小砂利まで。W杯話題など、酔った。

 書き忘れるところだったが、1昨年夏の『Warrika Dub』をリコに渡す。彼がこれを持っていないのは、とっくの昔に確認済みだったが、手放したのか、リアルタイムでも持っていなかったのかは不明だったのだ。正解は後者。「ダブ・プレートは持ってたけど」とのこと。当然ながらリミックス・エンジニアについて知る由もなく、「お前知らないのか? 教えてくれよ」と言われる。

【5月1日(月)晴れ、29℃】
 また月曜にモノレール~湾岸音響へ。今日は何が特別かと言えば、「Man From Wareika」だけは、バックのオケから録るからなのだ。クーボ仕切りで集められた「名うての」メンバーは余裕の演奏。でもスタジオ・ミュージシャンがレゲエも演ってますぜ、という感じは全くない。そう、「レガエ」の時代から30年経ったのだ。こんな深みのある演奏が出来るミュージシャンは、ジャマイカにももういまい。

 リズムを録っている間、リコはインタヴューを受けている。話を聞いているのはCool Wise Menの連中。彼らのレコーディングは終っていて、4日からのリコのミニ・ツアーのバッキングの方が気掛かりな様子。「マネージメントから曲のリストのファックスもらいましてね。18曲練習しとけ、って意味なんですよ。毎晩そんなに演るんすかね?」って、オレに聞くなっつーの。

 リズムが仕上がる頃には三々五々、「上物」のホーン隊が到着。リコを入れて5本のトロンボーンというFour Freshmenばりのカッコ付けに、加えることテナー、アルト、トランペット、計8管の贅沢ぅ! こちらの仕切りはスカパラの北原で、アレンジを譜面に起こして持参するという念の入れよう。自分のことみたいに嬉しかったので彼に断ってそのコピーをもらった。

 最終日なので「乾杯」もあり、まるでご褒美のように全曲のCDR(ミックスダウン前)をもらって、小林車に便乗、リコをホテルに降ろし、自宅まで送ってもらう。メルシー。

【5月2日(火)小雨、21℃】
 鮎川誠さんの誕生日~リコとCWMのリハのはず。時間が合わず見に行けない。鮎川家から歩いてリコのホテルのフロントに「御土産」だけ預けに行く。

【5月3日(祝)晴れ、18℃】
 リコにタンタンも加わって、Down Beat Rulerのステージに立ってる時刻、オレは新宿オープンでDJ開始。DBR帰りにこちらに流れてくれた人もたくさんいたのに、皆に「リコどうだった?」と聞いても、酔っ払いばかりで話になんねえ、っタクもぅ。

【5月7日(日)小雨、20℃】
 バスで吉祥寺に着くと、駅前ロータリーでS・バッパーズが演奏中! 相当後ろ髪引かれるも、井の頭線乗車。座っているとこんどは「よう!」と複数の若い衆にカラまれる。というのは嘘で練習明けのL・テンポの何人かがリコのライヴ@Eggmanに行くところだった。一緒に行動する。で、リコは20分ぐらいも演るかな、と思っていたら、なんのなんの2時間演ったんだ! 件の「リスト」18曲全部演ったかも。スペシャルズ、バッド・マナーズ、ジャズ・ジャマイカ、スカタライツと来日しても、『ワレイカ』の曲はプレイ出来ない。それが可能なのは日本のミュージシャンを従えた時だけ。これまでは、随分前に確かイエローで、デタミのギターの人が仕切ったグループをバックにした時だけだった。今日が2度目。故に、リコ、ニコニコ。

 単独でパブに移動、プレミア最終戦、VS. ハマーズ観戦。がボコボコにされる。後でホテルの食事にガナーズの回し者が毒を盛ったとわかる。クソ! 機嫌が悪い、というより、泣きたいが、我慢してリコの「アフター・パーティー」@ウダラバに。藤井悟に5/3のギャラを支払う。で、とっくに帰っているんだろうと思ってたリコ本人もまだいるじゃん! ファンたちに囲まれて、またニコニコ(少々スパスパ)。2時過ぎ、小林車でホテルへ。道中、リコのこれまでの in Japanにまつわる冗談連発←オレが。これが最後になりませんように。love。

"Japa-Rico~Rico Rodriguez meets Japan"
V.A.
[Sony / AICL-1753]


【参加アーティスト】
東京スカパラダイスオーケストラ、川上つよしと彼のムードメーカーズ、スクービードゥー、こだま和文、Afra & Incredible Beatbox Band feat. Tucker、マイスティース、Cool Wise Men、Zoot16、オレスカバンド、Dubsensemania、Skaymaite's、Jungle Roots Band feat. Fire Ball、Special Band feat. Rico, Nabe, 増井, 北原 & ヒロシ