Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND
Prince Allah
Greetings Friends,
●4月になり、やっと太陽を拝むことができた気がする。ジャマイカにとどまるべきだったと、時々本気で思ってしまうほど厳しい冬だった。LKJなどでベース・プレーヤーやプロデューサーとして活躍しているDennis Bovellと最近話す機会があった。彼も他のミュージシャンと同じように、UKのレゲエ・マーケットの縮小傾向を指摘していた。そのため、ヨーロッパ本土でのプロモーションに力を注いでいるらしい。Dennisは魔法使いのように様々な分野で才能を発揮し、UKレゲエそのものといっていい程の長いキャリアを持つ。彼の新作『All Over The World』がもう少しで店頭に並ぶはずだ。アルバムは、現在EMI傘下でありかつての勢いを取り戻しつつあるVirgin Frontlineレーベルからリリースされる。彼のようにずっとシーンを支えてきたヴェテランが、音楽に対する熱い情熱を持ち続け、ライヴに並々ならぬ意欲を注いでくれることに感謝したい。
●フランス西部の“若者達”相手に地元のサウンドUnity Hi-Powerで2、3回ほど昔のチューンを廻したことが奏を効し、僕は今月の終わりにフレンドリーなサウンド・クラッシュに参加することになった。僕の相手は(今回の場合、相手というよりは“一緒に廻すのは”と表現したほうがいいだろう)、フランスでトップクラスのレゲエ・コレクターのPapa Floだ。使用予定システムは1,500キロワットの巨大出力を誇るZion Gate Hi-Fiだ。僕が抱えている一番の問題は所有しているレコードのクリーニング。少なくとも15年は全くかけることがなかった盤面には薄いホコリの膜がはっているのだ。これを未然に防ぐにはいつもレコードをかけるしか方法がないかもしれない! 次回のコラムでこのクラッシュについて報告したいと思う。幸運を祈っていてくれ!
●僕の個人的なニュースとしては、年内に個展を2回開く予定がある。まず最初に前述のクラッシュの頃、そして8月初旬にフランス南部で開催される国内最大の4日間に渡るレゲエ・フェスの期間中だ。
●レゲエの黄金時代を象徴するシンガー、Prince Allahが過去数ヶ月に渡りスイスでAsher(評判の高いサウンド・システムを抱えるレゲエ・コレクター)のサウンドに出演しているらしい。僕がその模様を記録したテープを聴いてみたかぎりでは、聴衆の反応は熱狂的だった。是非、ホーンを従えた本物のバンドのステージで彼を観てみたいものだ。そのようなセッティングで僕がPrince Allahを観ることができたのはもう20年も前だった。彼はDevon Russell、Phillip Frazer、Tristan Palmerらと共に初めてのUKツアー中だったのだ。とにかく、彼がサウンド出演であれ、ライヴ活動を再開したことは嬉しい限りだ。
●僕が物心ついた時からロンドン東部でChannel Oneサウンド・システムを操っていたMikey Dread(ジャマイカのDJ・プロデューサーでレーベルを持ち、かつてラジオ局で働いていた人物とは別人)が、第一線から身を引くことをアナウンスした。彼は昔から営んでいるロンドン、イーストエンドの店の経営に集中することにしたらしい。彼の将来の幸運を祈る。
●Chezidek、Turbulence、Lutan Fyahのヨーロッパ・デビュー・ライヴを僕は首を長くして待っていた。ButtonsらによるMatic HornsとMafia & Fluxyのバンドがサポートし、ショーのミックスはGussie Pと聞いていたので、いつ日程が発表されるかと思っていたのだ。しかし、大変残念なことに彼らのライヴは僕とPapa Floのクラッシュと同じ夜に決まってしまった。これを不運といわずして何と呼ぼう!
●Ken Bootheのパリ公演は予想以上の大成功だったらしい。フランスでの熱狂的な歓迎ぶりに感動した彼はあの有名なJoe Dassinによる「シャンゼリゼ」をフランス語でレコーディングすると決めたようだ。フランス人は自国の文化に高い誇りを持っていることで有名だ。このカヴァーにより彼の人気が更に高まることは必至だろう。
●シンガーやミュージシャンに多大な影響を与え続けているBob Andyだが、彼より才能が劣る流行りのアーティストの影にその存在が隠れがちだった。しかし、そんな地道な活動を続けるBobのサイト(www.bobandy.com)がオープンした。ニュースや彼の音楽の流通状況などをチェックすることができる。
●謎が多いUKルーツ系アーティストのPablo Gadの名作『Hard Times』が最近Soul Villageにより再プレスされた。1980年代後期にリリースされた12インチ「Who Is The Terrorist」(発表当時はそこそこの評価を得ていた)が現在のルーツ系リバイバルの影響を受け、また脚光を浴びるようになっている。『Hard Times』も、昨今のルーツ系のオリジナル盤の価格の高騰を受けての再発売のようだ。このアルバムがどれほどの規模の流通チャンネルに載るのかは定かではない。しかし、まだ持っていなかったらネットで探してみることを薦める。いかにもBirmingham/Londonという雰囲気のミニマルなサウンドにまるで預言者のようなGadの歌声が響く。是非聴いてもらいたい。
Till Next Time, Take Care...
(訳/Masaaki Otsuka)