UK REPORT

Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND

Michael Prophet


Greetings Friends,
   
●前回のレポートでも触れたが、LKJ、Mighty Diamonds、Ijahman、Junior Kelly、Dr Ring Ding(と一部の公演にはLee Perry)が2月に大規模なヨーロッパ・ツアーを行った。僕は2月中旬に西フランスのQuimperまでそのショーを観に行った。ツアー・スケジュールからUKが外されていたので、フランスまでわざわざ足を伸ばす必要があったからだ。そこで、The DiamondsとIjahmanはUKとアメリカではもうツアーを行わないだろうとアナウンスしたていた。レゲエのライヴでは収益が見込める観客動員を達成することが困難らしい。彼らは、もう同国で演奏する気がしないとまで言い放った。現在のヨーロッパ本土での大歓迎ぶりはUKでレゲエが全盛期だった1970年代のそれと匹敵するらしい。僕はUKのお寒いレゲエのライヴ状況についてずっと警笛を鳴らし続けてきた。The Diamondsの口から改めてその深刻さを訴えられると、現実がより重くのしかかってくる。肝心のライヴは波乱づくめのショーだった。まず、Lee Perryが出演するはずの日程のいくつかをキャンセルしていた。もちろん、事前の説明は一切ナシ。彼の代わりにAriwaのMacka Bが交代要員として登場した。それに、楽しみにしていたメイン・アクトのThe Mighty Diamondsがたった6曲歌っただけでステージを去ってしまったのだ! このフラストレーションを誰にぶつければいいのだろうか? 英語の殆どわからないであろうフランスの観衆を前に黒人政治の歴史について延々と語ったLKJへか? または、熱心な観客からの昔の名曲のリクエストを無視し、新作『Versatile Life』の全曲演奏を敢行してしまったIjahmanへなのか? それとも、事態の収拾にてまどった主催者側へなのか? このようなお粗末なライヴの運営状況を我々イギリス人は数え切れないほど体験している。もし、ヨーロッパ本土でこのような事態が繰り返されるようになれば、人々はUKのようにレゲエのライヴ・ショーから離れていってしまうだろう。最近何かと話題の豊富なJunior Kellyも出演していたが、僕にはなぜ彼の人気が沸騰しているのか理解できない。長く退屈なセットの中で僕が思い出せるのはたった2曲だけだったからだ。

●この原稿を書く前日に、友人が、Brent Doweが死去したと電話で伝えてきた。Melodiansの一員でHigh Times / Freedom Soundsのルーツ系シンガーでもあった彼が、どのように死に至ったかまだ僕はつかめていない(※詳細は前号を参照して下さい)。

●Mad Professor主宰のAriwaプロダクションとレーベルは、今まで一部のメディアで叩かれることがしばしあった。レゲエ・ファンが、彼が25年前ほどに手掛けたルーツ系の作品にそれほど興味を示していなかったことが一因かもしれない。彼のラヴァーズ・ロック系チューンはかなりのセールスを記録したが、今は逆にルーツ系チューンへの評価が高まっており、売り上げも伸びているようだ。この現象はUKだけに限定して起こっているわけではない。Mad Professorは世界中にスタジオを構え、一見勢いがあるように見えるのだが、本国では必ずしも全てが順風満帆ではなかった。そのような状況だからこそ、昔のルーツ系作品をセールスするチャンスなのだ。それらのチューンは年輪を重ねたUKのNu-Rootsムーブメントのはしりを飾った過去の名曲としてSound Iration、 Dub Judah、Alpha & Omegaらにリスペクトされているのだ。Ariwaの2006年ニュー・リリースおよびコンピレーション・ラインナップをみれば、彼が今まで正しい道を歩んできたことがわかるだろう。独立系レゲエ・レーベルとしてPapa Levi、Earl 16、Max Romeoらをキチッと扱ってきたことは評価されるべきだ。詳しくはwww.ariwa.comでチェックを。

●ニュー・アルバム『On Bond Street』を引提げて去年の11月に行われたBitty McLeanのNYデビューは大成功だったらしい。できればその場にいたかったものだ。彼の次のアルバムが待ち遠しい。

●JetstarはTrojanの得意技である“過去の曲をテーマ別に選択し、魅力的なコンピを仕上げる技術”を身につけたようだ。最新の2タイトルにもその技が光っている。『Reggae's Perfect Combinations Vol.1』と『Roots Masters ; The Foundation Vol.1』は時代を超えた様々なプロダクションによる名曲を集めたもので、オリジナルのレコードを買いそびれたファンにもアピールできる強力なセレクションがウリだ。『Reggae's...』にはChakademus & Pliers、Beenie Man、Lady Saw、Cutty Ranks、Sanchez、Malvo、Lizardが、『Roots Masters...』にはMichael Prophet、Coco Tea、Mighty Diamonds、George Nooks、Frankie Paul、Fred Locks、Gregory Isaacsのチューンが収録されている。“Vol.1”というタイトルから察せられるとおり、この2点はシリーズ化されるようだ。

●Londonで良質のレゲエを聴きながら食事ができる場所をお探しならFatman's 'Mirage And Stars'レストランがオススメだ。277 Green Lanes Roadにある店には大物アーティストが頻繁に出入りしている。最寄の地下鉄駅はManor Houseで、電話番号は(0)208 809 0722だ。この店の店主FatsはかつてFatman Hi-Fiを主宰していた。彼はMafia & FluxyとThe Instigatorsを最初に見出した人物であり、今は彼自身のレーベルの運営とレストラン経営に力を注いでいる。彼とコンタクトをとりたいならWeb経由で(www.fatmanmusic.co.uk)。
 Till Next Time, Take Care...
 
(訳/Masaaki Otsuka)


Fred Locks