Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND
Mighty Diamonds & Glen Brown
Greetings Friends,
●かつてStudio Oneの音源が信じられない程粗悪にプレスされたレコードでしか聴けなかった事をご存知だろうか? 7"レコードはノイズが酷く、Horace Andyの『Skylarking』等は聴く事が不可能に近かったのだ。だが、その状況はStudio OneとワシントンのRas Recordsの提携により変化する兆しが見えた。Freddie McGregorがRasと契約した事に起因したこのパートナーシップは、残念ながらすぐに解消されてしまった。そしてStudio Oneの高品質なレコードプレスの可能性は、当時『The Best Of Studio One』を生産していたボストンにベースを置くHeartbeat Recordsの手に委ねられたのだった。Heartbeatがリリースしたコンピレーションの選曲に新鮮味はなかったが、そのサウンドがクリーンさが1番のウリだった。そして同シリーズの第2・3弾が発売された頃にはCDでも購入可能になったのだ。今でこそヴィンテージ音源はあらゆるフォーマットで購入可能になったが、当時としては画期的な事だった。
その後Heartbeatは次々とStudio One音源をリリースしていく。しかし、最近は新たにスタートしたSoul Jazzレーベルの後手に回っている様だ。この2社の大きな違いはHeartbeatが常にオリジナルのマスター・テープ(初期のWailersのB面を除く)音源を使用している事だ。同社はCoxsoneによる20年間のバック・カタログ音源を今後リリースしていくらしい。その中には『Best Of~』に未収録のトラックが多数含まれている様だ。音源に関しての大きなサプライズはなさそうだが、少なくともCDとアナログでこれらのカタログ・アイテムが店頭に並ぶ事は嬉しい限りだ。先陣を切ってJohn HoltとDon Drummondのコンピが間もなくリリース予定だ。レアなチューンが入っている事を祈るばかりだ。ファンとしての次の願いはハイ・クオリティなプレスでのStudio Oneの7"の復活だろう。
●随分前にアナウンスされていたVPのインターネット・ショッピング・サイト(www.vprecords.com)がやっとオープンした。これでVPタイトルをネット上で買う事ができる。
●Ocho Riosにあるレゲエ・ラジオ局Irie FMが今年1/1から所謂“不適正な言葉”をリリックに含む全ての曲の放送をストップしたらしい。これによりプロデューサー達は放送コードに引っかからない“クリーン・ヴァージョン”をラジオ局に提供しなければならなくなった。この制度がうまく機能しているのか、まだ現地からの情報は入ってきていない。
●この原稿を執筆中に、我らがMighty Diamondsが、4年振りの新作『Thugs In The Street』を引提げ、ヨーロッパをツアー中だ。僕もLKJ、Junior Kelly、Ijahman Leviらも出演するショーを観る予定だ。
●もうご覧になっている人もいるだろうが、現在、ヨーロッパを同じくツアー中のLee Perryが出演した2001年にアイルランドで放送されたギネス・ビールのコマーシャルがウェブ上にアップされている(www.smokeyroom.net/extra/guinness.html)。これが中々出来。ちなみにBGMはMad ProfessorによるRemixの「Jazzy Dub」だ。
●今年のグラミー賞におけるレゲエ・カテゴリーのノミネートに対して、特にコレといった感想はない。Sean Paul 『The Trinity』、 Burning Spear『Our Music』、Shaggy『Clothes Drop』、Third World『Black, Gold & Green』、Damian Marley『Welcome To Jamrock』が栄誉を争う。この中でDamian Marley以外のアーティストの作品が去年の音楽界に大きな話題を提供したかどうか少々疑問に思う。
●UKを拠点として活躍する売れっ子プロデューサーMaximum SoundのFrenchie(僕が彼に初めて会ったのは80年代のパリだった。彼の名前Frenchieは“フランス”からとったものらしい)がジャマイカでのレコーディング・セッションの産物であるチューンをリリースする。Gyptian、Junior Kelly、Luciano、Chezidek、Anthony B、そしてJah Masonらをフィーチャーした曲がスタンバイしているとの事。また、彼はDevon Russellの秘蔵っ子Lukie Dのアルバムもプロデュースした模様。
●John Holtの『Gold』には正直ガッカリした。Trojanからリリース済みの曲と重複しないお宝チューンのセレクションを期待していたのだが、蓋を開けてみれば初心者向けのグレイテスト・ヒッツの様な選曲だ。それらがJammy, Roy(Mixing Lab)、Francis、フリー・プロデューサーDerek Fevrier等によりデジタル加工されているという趣向。残念だ。
●今、Jetstarの『Reggae Hits Vol.35』を購入すればジャマイカからのミュージック・ヴィデオをパックした『Mega Tracks On Video From Jamaica』というボーナスDVDが付いてくるらしい。詳しくはwww.jetstar.co.ukで。
●EnglandのKentで僕が自分のサウンドシステムでレコードを廻さなくなってから約20年経つ。執筆業や撮影で忙しく、毎週送られてくる大量のCDを聴くだけで精一杯の状態になってしまっていたからだ。しかし、フランス西部でサウンドシステムの“伝統”を頑なに守り続ける若者達との出会いが僕を再び現場へ引き戻した。昨年の11月に友人に頼まれて試験的にセレクタ業に復帰してみたところ、これが大成功だった。最近聴かなくなったチューンを中心に廻したのだが、思った以上の観客の反応に大満足だ。
●という訳で、僕は再びローカル・イベントでサウンドシステムを操る事が決まった。4月には“オールディーズ・クラッシュ”がコスモポリタンな都市Rennesで計画されているらしいので。
Till Next Time, Take Care...
(訳/Masaaki Otsuka)