UK REPORT

Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND

Alton Ellis


Greetings Friends,
   
●Lucianoが最新アルバム『Gideon』(Vizion Soundsレーベル)でシ-ンに復帰したことはうれしい限りだ。このレーベルはガイヤナ(ベネズエラに隣接する南米の国)にあり、ジャマイカとイングランドでの仕事の経験があるプロデューサーのWally Frazierにより運営されている。彼がノース・ロンドンにいた際には、様々なジャンルを融合し新たな音楽をつくりだす試みをしていた。もちろん、全てがうまくいくとはいかず、レ-ベルは財政的にも苦しかったらしい。でも彼のおかげで、Big Youth唯一のジャングル・アルバムがリリースされたのだ! さて、Lucianoについてだが、音楽的にも精神的にも方向性が定まらなかった彼がこの『Gideon』で再びアーティストとしての威厳をとり戻している。彼はXterminatorを離れてから、ワン・パターンなリリックやキレのないサウンドを量産し沢山のファンを失ってしまった。しかし、新作は彼のかつての傑作のようにポシティヴで前向きなスピリッツに満ち溢れている。是非、チェックを!

●タイトル数は少ないが、そのVizion Soundsから魅力的なアルバムが発売されているので紹介しよう。Gregory Isaacs(最近リリースされたものの中で最高の出来)の2枚、ファミリーで構成されているFirst Born、Big Youth、元Black Uhuru のメンバーだったAndrew Beesの初ソロ・アルバムなどだ。詳しくwww.vizionsounds.comを参考のこと。

●Ini Kamozeは、Islandから発売された3枚のアルバムで、1980年代初頭スターダムにのしあがった。彼と他のシンガーとの違いは、レコーディングしたスタジオや一緒に仕事をともにしたプロデューサーの数が極端に少ないことだ。長い間、彼はXterminatorからの数々のトラックを放ってきた。最近では「World A Music」が盛んにサンプリングされている。その中で最も流行ったのがDamian "Jr. Gong" Marleyの世界的ヒット曲「Welcome To Jamrock」だろう。そのIniが彼自身のSound Clikレーベルから『Debut』というタイトルのアルバムを発表した。しかし、何故、今更“デビュー”なのだろうか? その答えは、このアルバムの収録曲に隠されている。デビュー作を含めたIslandからの3枚のアルバム収録曲からセレクトし、再録音しているからだ。この3作について、彼はSly & Robbieによるサウンドに決して満足してはいないらしく、Iniよりも彼らのカラーが強いと感じているらしい。『Debut』には彼が制作したオリジナル・デモのフィールが生かされているようだ。正直なところ、僕もIslandの2枚目と3枚目のアルバムのサウンドはそれほど好きではない。

●この頃UKでのライヴ活動から遠ざかっていたAlton Ellisが2006年1月にCamdenのThe Jazz Cafeで久しぶりにステージに上がるらしい。大御所の姿を早く見たいものだ。

●Jetstarの『Reggae Max』シリーズは相変わらずコスト・パフォーマンスがいい。最新リリースのラインナップはJunior Kelly、Lloyd Brown、Sizzla(シリーズ2作目)だ。このシリーズ一番のウリは、複数のプロデューサーによる同一アーティストの曲が集められている点だろう。その結果、非常にバランスの良い選曲がなされている。だが、音楽の質に比べてジャケットのアートワークがお粗末なのは残念だ。これはJetstarレーベル一番の弱点かもしれない。ヴィジュアル・センスが10年前から全く変わっていないようにみえる。僕には何故、すでに5枚を数える『Pop Hits Inna Reggae』シリーズをリリースし続けるのか理解できない。このシリーズはレーベルにとってドル箱かもしれないが、僕はどうも好きになれない。Jetstarの膨大なカタログのチェックは、www.jetstar.co.ukで。

●1998年リリースのアルバム『El Shaddai』で強烈なデビューを果たしたJah Maliが今年カムバックの兆しを見せている。彼はデビュー作に続き、Bobby Digitalのプロデュースによる『Treasure Box』を発表したが不発に終わった。しかし、2005年には「Be Conscious」、「Can't Stop I」、「Blood Speaks Rising」などの上質なチューンを次々にリリースした。彼がかつての栄光を取り戻せることを願うばかりだ。
 Till Next Time, Take Care...
 
(訳/Masaaki Otsuka)


Gregory Isaacs