Rankin Taxi
アミシャツ魂
Interview by Takanori Ishikawa / Edited by T.Ohba / Main Photo by Umi Fulford
1983年、ジャマイカでレゲエ・ミュージックにガツンとやられて以来、既に芸歴20年以上のRankin Taxiが最新アルバム『アミシャツ魂』と2枚組ベスト盤『Oyajinal Best』を同時期にリリース。新作と過去の作品の話はもちろん、レゲエを目指す若いアーティストへのメッセージなどをボヨヨ~ンと語ってくれた五千字を越えるロング・インタビュー。
●アルバムを作り終えての感想は?
Rankin Taxi(以下R):アイデアがあって良かったかなと。で、そのアイデアがうまく結晶したかなと思ってます。今迄のアルバムの中では最高傑作が出来たと思います。これ聴いたら若いアーティストが50何歳までアルバムを作れるのかな?とか、ステージ出来るのかな?とかね、50歳過ぎても最高傑作が作れるのかな?とか思ってくれるかもね。でも、次にもっといい物作れるかな?とか考えずに、その時に作っておかないとね。
●前作『エイ ヨウ ヤロオ』よりもダンスホール色が強くなりましたね。
R:そうですね。今回はダンスホールに関係のあるミュージシャンばかりが作った楽曲だからですね。第一に大切なのは現場で受ける事です。
●個人的にプッシュ曲は?
R:分かり易いのは「実の娘をナンパ」かな。サウンドマンには「アミシャツ魂」はどうしても聴いてもらわなきゃ。(ダンスホール・クイーンの)ジュンコちゃんも「アタシ、あの曲で泣いたわあ~」って。それから時々ジュンコのお尻にターーーッチ!
●「アミシャツ魂」にはThe Mighty Diamondsもコーラスで参加しているし、809 HornsのNambo Robinsonも参加しているし。
R:Dean Fraserもね。歌は歌い直してますからね。歌も少しずつ上手くなってます。でも本当はプッシュしたい曲って全曲なんですけどね。お世話になったHome GとBob Marleyに感謝です。
●「実の娘をナンパ」って本当に実話なんですか?
R:ハイ! 「実は実話」と唄の中にも織り込んでいますけどね。「ハートブレイク・ホスピタル」の方は一寸実話じゃないかもしれない。これも実は実話と言ってますけどね、これはナースのナンパ用です。
●「恋のダブルブッキング(:_;)」も良かったですね。
R:ハイ。いい曲ですよね。名曲と言う事で。
●「ただ今リハビリ中」は去年聴いた時と印象が違う気がしましたが。
R:ミックスが違うんだよね。Mixing LabのLinford "Fatta" Marshallですからね。
●僕は「Mental Slavery」が好きですね。
R:ハイ。いい曲ですね。Bob Marleyに感謝です。「実の娘をナンパ」も“ナチュラル・ミスティック”という言葉を入れた「ただ今リハビリ中」もベストに入っている「ひとかけらのチョコレート」もBob Marleyに感謝です。ダンスホールが好きになった頃にコテコテなダンスホールをかけてると「Bob Marleyをかけてくれや」って言われるのがやたら多くてさ、Bob Marleyって目障りだったんだよね。だからちょっと嫌いだったんです。でも、今はBob Marleyの素晴らしいところもいっぱいあるので、使い方さえ間違えなければかけますけどね。非常に尊敬すべき音楽です。
●Intro、Interrude、Outroも非常に面白くて。特に「腰ふる女」が面白いですね。
R:でしょ? あれは丁度Pushimが広島のエッセンスのためにダブ・プレートを録ってたのね。そこでJohn Holtの「Love I Can Feel」を使って歌ってたのね。そのリズムを聴きながら「いたたた 腰ふる 女」ってのを口トラックにしてやってみた。その前に色んなヴィデオ観ててさ、「パサパサ・ウェンズデイ」で日本人女子がおもちゃにされてたりさ、目に余るのが増えてるじゃないですか? レゲエ・ダンスで腰をふるのを覚えたけど、曲を選ばずに振る。曲で「ハングリー」って歌ってても踊ってるからね。日本で注意しとかないとジャマイカ行って恥かくだろうってさあ、とオヤジは思いました(笑)。
88年に出演した「サンスプラッシュ」で。左はCharlie Chaplin、中央がYellow Man。
●言いたい事は大体曲の中に入ってますもんね。
R:そうね。言い訳みたいなもんは何もないですね。ま、声がちゃんと届くように歌ったと思いますので、“ミスター・ジャパレゲ”として(笑)。
●ミスター・ジャパレゲ(笑)として……でも、音の作りはジャパレゲのそれとは違いますよね。
R:オリジナルです。そしてオヤジナル。
●非常に音が素晴らしい。
R:いいですね。特にSteven Stanleyがやった「恋のダブルブッキング(:_;)」「アミシャツ魂」の音はピカピカとキラキラしてますね。あとRichard "Shams" Browneがやった3曲(「ガキレゲ Jump」「No Woman No Life」「Girls Gone Wild」)、Linford "Fatta" Marshallが3曲(「ただ今リハビリ中」「ネバギバ美ら島」「実の娘をナンパ」)、Bacchanal 45の「Mental Slavery」をやったKasey Phillipsって17歳のエンジニアだそうです。早くていい仕事でしたね。オケとしてはHome Grownで3曲、Bacchanal 45で4曲、Hase-Tで2曲、Big JeansのEric Delisserと野郎Productionと上代学が1曲ずつね。ヴァリエーションも出せて、キャラもあってね、捨て曲もなく、いい感じで出来たと思いますね。
●アルバムのタイトルは最初から『アミシャツ魂』で決まってたんですか?
R:いや、『プナニー天国』って話もあったんですよ。それから『アミシャツ魂』もいいねってなって。『No Woman No Life』もいいねって話もありましたよ。でも女の事になるとだらしなくなっちゃうので、イメージが良くないだろって事でやっぱ『アミシャツ魂』だろ、って。で、ジャケ写を撮ったのは「実の娘をナンパ」のその実の娘です。
●ギャラは出るんですか?
R:もっちろんでしょ(笑)。曲も参加して貰ってるんですから(笑)。出演料込みです。
●この夏、日本のダンスホール・レゲエの作品がいっぱい出ますけど、率直に言ってどうですか?
R:まだそんなに聴いてないけどね。やっぱりジャマイカの物と比べるとまだ声が弱いなとかさ、まだ日本語ってレゲエ的にノリが悪いなとかさ。俺はね、SizzlaとかCapletonとかBuju Bantonよりもいいとこ行きたいと思うんだよね。頑張ってるけどやっぱキビシー。言語の問題と声の問題かな。そういうのじゃないとレゲエのリズムに勝負できないんじゃないかと気がしてきた。そういうタフな声とタフな響き、言語上の。T.O.K.みたいなのを一人で出来ないかなとか今度模索します。そのぐらい厳しい音楽だなあと。でも気づいた時にはもう遅かった。もうやめられない(笑)。
●次にコンビネーションしたいアーティストは?
R:Pushim。それとChieko Beauty。外タレだったらシアラとアシャンティとビヨンセに決まってるじゃないですか。ジェニファー・ロペスはいらない。マライヤ・キャリーもいらない(笑)。
●今回は意外とコンビネーションがあるようで無いですもんね。
R:ブッキングとか面倒ですからね。DJたるもの一人でやると。既に一人でLeyonaのパート歌ってやってましたもん。Home Grownには「うるさい!」って言われました(笑)。
●もう次作のアイデアとかあるんですか?
R:Little TempoとかReggae Disco Rockersとかさあ、他にもスカのバンドと接触して音を作っていくとかはあるかもね。Lee Perryの『Return Of Django』みたいのでやりたいとかさ。Bitty McLeanみたいなのでやるとか、Dennis Brownの「Here I Come」でもやりたいし…ま、そういうのもアリかなってとこですけどね。
●2枚組ベスト盤『Oyajinal Best』も出ましたね。ブックレットはレアな写真満載で(笑)。
R:代々木Chocolate CityでMikey Jarretと撮った奴とかね、Lone RangerとかTrevor Sparksとか、88年のサンスプで撮ったYellow Man(P.20写真)とかね。サンスプは87~89年まで3年連続で出たんだ。
●選曲は?
R:俺達ランキン族ですね。mixiで「俺達ランキン族」って暴走族に呼びかけて詰めてったんです。
●自分が入れたかったけど入れなかった曲は?
R:いや、皆が押してくれるなら。曲順もマニアな奴がいてね、建設的な提案をしてくれてね。やっぱ聴く立場で選んでくれたからね。勿論、俺からも提案したし、いい感じだと思いますよ。
●1989年から2003年までの作品を収録してますからレゲエ・サウンドの変遷も辿れるという。
R:そんだけアイデアが豊富だったのは、音楽的に現場に軸を置いていても色々な広がりを持ってないとマズイんじゃないの?ってのがあったから。自分ではね、歌い直したい曲もあるけどね。プロデューサーの役割が大事だよね。
若き頃(80年代後半)のランキン・タクシー
●一番古い曲は…?
R:「誰も見えない、匂いもない」と「ジャマイカ事情」で、89年の『火事だぁ』収録。ミックスはPenthouse時代のDave Kellyですね。次は「カリプソ恋しぐれ」で高橋健太郎が作った『Tokyoディスクジョッキーズ・オンリー』に入れた曲。91年の『ワイルドで行くぞ』から「さよなら好きになった人」、Moominがカヴァーしてくれた「言い出せなかった秘密」「ロック・ザ・スクール」の3曲。
●「赤坂のドンチャン」が最高ですね。『報道ステーション』辺りで流して欲しいですね。新作もそうですが、昔からネタが一環性がある。
R:そうですね、ブレてません。「女が好きだから」と「平和な世の中を」みたいな(笑)。
●感慨深いものはありますか?
R:ダースベイダーの事を歌ってる歌(「暗闇の先/ジャー・ライト・カム」「My Weapon」)、つまり「憎しみに心奪われてダースベイダーになっちゃうよ」ってのがあるんだけど、今ちょうど映画でダースベイダーの誕生についてやってるよね。世の中、つまりアメリカがダースベイダーの様に動いてるんだよね。きっと繰り返してるんだよね。警察・検察・道路公団とかさ、皆パラサイトだし、王様は裸だしさ。
●今聴いても頷いちゃうのは結局、あの頃から良くなってないって事ですよね?
R:まあね。シリアスな問題をエンタテインメントとして語るとか、そういう風に知恵を使うのはもう自分の仕事じゃないかなと思うんだよね。ワンパターンになっちゃうから、それは崩してかなきゃならない。自分の頭の中のパターンをぶち壊してまた何か作らなきゃならないんだから、そりゃあ大変ですよ。音楽ってフレッシュでなきゃダメですから。レゲエってそういう破壊因子みたいな物を持ってるじゃないですか。それを自分の中で作らなきゃならないですね。今さあ、ダブ・プレートの作り方も見えてきちゃってるじゃないですか。皆一生懸命頑張っているけれども、その頑張ってるところにもパターンが見えてきちゃって驚きが少なくなってきちゃってる。
曲も同じですよね。だから浮気がバレたとかさあ、実の娘をナンパしたとか経験の上で脚色して作りましたけど、何も無いところから作らなきゃダメだね。イメージの世界だけでも。それにリアルな肉付けをしてかないとネタ切れですよ。自分的には事故を起こしたけど、転んでもタダでは起きないと、それで作れたんでそれはそれで成功したと。だから苦労はしなきゃダメだと思いますけどね。歌詞って映画と一緒で脚本って大事だよね。そういう意味では若い人には本を読むとか映画を観るとかしてテーマの選定からストーリーを作る事とか、言葉遊びの問題だけじゃなくてライミングの手前の話。それからライムが来る。その上、体力が必要だし、いい声も必要という。だから一寸やそっとの野心では勝ち上がれません。でも、やり甲斐のある事だと思うけどね。結局、今日本でマイクを握っている人達って皆ジャマイカに圧倒されて、でもやってる訳だから。
●すっごいリリース量ですけどねえ。
R:負けませんから。気持ち的には負けません。
●ランキンさんやナーキさんとかが種を蒔いて…その時から比べてこんなに出るというのは信じられないですよね。
R:確かに。凄いね。この先どうなんでしょうね? 心配というか面白いね、どういう風に展開するか。
●では、最後に読者にメッセージを。
R:デカいイベントばかりではなく、ダンスホールにももっと遊びに行きましょうね。音の悪い現場はもっと音が良くなるようにブーブーと文句を垂れろと。いい音じゃないとレゲエはつまんないでしょ。いい音作るいい男に会いに行こうという事ですね。「Outro」でも言ってますけど、ダンスホールは客が大事ですよね。どれを取っても大事な要素だと思うけど、一番は客がかっこよくないとね。だから客こそジャマイカに学ばないと。最近の大きなショウに行く人ほどジャマイカに行って欲しいですね。大昔から「行きな行きなさいジャメイカ~」って歌ってた訳ですから、それは間違ってないですよね。
"アミシャツ魂"
[Overheat / OVE-0093]
"Oyajinal Best"
[Ponycanyon / PCCA-02143]