Roots Manuva
Rebel Heart
 
Text by Hiroshi Egaitsu / Photo by Deirdre O'Callaghan
 
 
 2001年にリリースされたセカンド・アルバム『Run Come Save Me』でストリートの評価を得た後、マーキュリー・ミュージック・プライズにまでノミネイトされたルーツ・マヌーヴァは、UKが生んだジャマイカン二世のラッパーである。彼が何をどう言おうと、彼の新作『Awfully Deep』を聴けば、我々はUKヒップホップの未来像を見ることになるはずだ。

  UKのヒップホップ、という問題の設定がまず違っていたのだ、とルーツ・マヌーヴァは言っているように思える。彼のニュー・アルバム『Awfully Deep』は、確かにヒップホップ・アルバムであるのだが、それ以前にUKの新しい音楽であり、だからこそ高く評価されたのではないだろうか?

 「イギリスのプレスは、“UKラップ”を盛り上げようとしてるんだ。それで、俺に虐げられた苦しんでるアーティストを演じて欲しいと思ってるんだよ。でも俺は“UKラップ”なんかじゃない。音楽をやってるだけだよ。イギリスのラッパーの多くは、文句を言う癖があるんだ。『誰も俺たちのレコードを買ってくれない』と文句を言うんだけど、そんな姿勢はエンターテインメントに相応しくない。文句を言うんじゃなくて、心の中で本当に感じてることを表現した方が有益だよ。俺はそういう連中と距離を置きたかった。ハードコア、ジャングル、ドラムンベースなど、イギリスの音楽をサポートしないイギリスのラッパーも多い。そういう連中は、ベッドルームでイギリスのラップが認められる日を待ってるだけなんだ。でも俺は待ってる気はない」(ルーツ・マヌーヴァ、以下発言は註のない限り彼のもの)

 UKのヒップホップ熱は多くの人々が認めるところである。ファットボーイ・スリムからブレイクビーツ・シーンの連中、ジャングルの歴史の開拓者、そうした人々の多くがサウンド・システムでレゲエに混じってプレイされたアフリカ・バンバータの「プラネット・ロック」の衝撃を口にしている。1980年代初期には、ヒップホップに多くの者がのめり込み、そこを出発点として、模索を始めていた。言うまでもなく、エアロゾール・アーティストとして活動を開始したマッシヴ・アタックの3Dもそうだ。多くのテクノのアーティストも、初期のヒップホップ、エレクトロには衝撃を受けている。そして、ルーツ・マヌーヴァが言っているのは、その衝撃と、自分の音楽を区別しよう、ということだろう。

 「俺はコンセプトを決めて作ることなんてないんだ。でも振り返ると、今回のアルバムは、表面下を掘り下げることについての作品なんだ。自分の内面にある全ての感情についてなんだ」

 その時、ヒップホップというジャンルの名前が(ライフ・スタイルとしてのヒップホップについては、ここでは書く資格は僕にはない)ルーツ・マヌーヴァの音楽に与えられるかは、もはや彼の知ったことではないだろう。
 「子供の頃は、レゲエやダブも聴いてたし、当時のポップス、それにゴスペルを聴いてた。テレビでミュージシャンを見てもあまり格好良いと思うことはなかったんだけど、ラスタマンがドラムを叩いてるのを見て、魅力的で格好良いといつも思ったんだ。"Rebel Heart" は、俺たちがコンピューターでやってることと、アフリカだけじゃなくて、全てのトライバルな時代が繋がってることについての曲なんだ。ドラムを叩いてるだけなんだけど、そこにメッセージがあるんだ」

 この発言で、彼を過去のUKが生んだ音楽家たち、例えば、ラスタファリアンなファンキー・ロック・バンド、サイマンデから連なる伝統に結び付けるのは無茶な話だろうか? しかし、UKには確固たるレゲエの伝統があり、それは無視出来ないだろう。それを彼はラップトップの時代にアップデートさせて、未来のヴィジョンに叩き込む。

 「今作からラップトップを使って制作するようになったんだ。子供が生まれて、家の中に場所がなくなったから(笑)。でも、ラップトップで曲を作ってる人が最近多いだろ? だから、もっと個性的なサウンドを出すために、敢えてプロフェッショナルなスタジオで音づくりをすることにした。今まではローファイにこだわってたんだけど、今作からもっとクォリティのいいサウンドを受け入れることにしたんだ」
 個性はここで自ずと現れる。
(インタビュー協力/Hashim Bharoocha)


"Awfully Deep"
Roots Manuva
[Big Dada / BDCD072]