ジャマイカのエンターテイメント・シーンに、大きな波が押し寄せている気がする。いつになくポジティヴな波だ。
トニー・レベルを中心に、セシール、ズン・ジェイ、ヨギ、ヴォイス・メール、もちろん「Rubbers」のフリスコも、エイズ撲滅キャンペーンに参加している。
ジャマイカのAIDS問題は深刻で、HIV保持者は女性にふえているという。
4年前にトニー・レベルが発足した、Artistes Against AIDSというこのグループは、アーティストがジャマイカの、特に若者に多大な影響をもつことに着目し、避妊具の着用やセーフ・セックスを、ダンスホールのメッセージで伝えようとするもの。レゲエでおしえる性教育、である。
ダンスホールはもともと、Old Dogネタが示すように、複数の女性をもつことに男の価値を見出す、みたいなノリがあったものだが、これを否定するほどの勢いである。アイリーFMでも毎週、セーフ・セックスについて語り合う番組が人気だ。Cover Up Yuhself! トニー・レベル主催レベル・サルートは、2005年1月15日に催行決定。
11月の終わりには、スタジオワン創設50周年のショーが、サカナ料理と海賊で知られるキングストンの観光地、ポートロイヤルで行われた。入場料J$1,000(2千円相当)はちょっと痛かったかな。客入りはさほど良くなかったようだが、ゲストは豪華。ケン・ブース、マーシャ・グリフィス、カルチャー、キング・スティット、今年文化功労賞を授与されたバニー&スカリー、ファンタン・モジャ、そしてマーリー・ブラザーズ(スティーブン、ジュリアン、Jr.ゴング)。Welcome To Jamrock. 2005年のボブ・マーリー生誕60周年(ボブちゃん60歳!)のお祝いは、エチオピアで行われることが発表された。
今年は殺人が多かった。犯罪はジャマイカの大問題で、キングストンばかりかカントリーサイドにも犯罪は飛び火している。「キング・フィッシュ」とよばれる特別対策本部が設置され、各メディアでは、エリア・ドンの凶悪犯罪を許すなというキャンペーン実施中である。ダンスホールのネタにされるInformer Fi Deadを示唆している。ジャマイカのネガティヴな習慣を変え、正しいことは正しい、悪いことは悪いと言える社会へForward!
キングストン市長デズモンド・マッケンジーは、Woman Inc.(女性の自立を促し援助する公共施設)の集会で参加者の女性に、「わいせつで悪影響な音楽を拒否しよう」とよびかけた。女性へのディスリスペクトな一部のダンスホールは、女性自らが許してはならないと市長は熱く語った。こちらも、必要なのはMore Aware。
2004年のスティングは、前代未聞の「バティネタ禁止令」発令のもとで行われる。どのアーティストもゲイバッシングのネタは、ステージ上で使えないのだ。
いつのまにか、バティ・ネタも、インフォーマー・ネタも、Old Dogネタやギャル・ネタ、バッドボーイ・ネタまで、ダンスホールから消えてしまうのか。こんな風潮が自然発生的におこっている。アウトレージなど海外の同性愛保護グループからの執拗なプレッシャーが原因というよりも、Jah Guideなんじゃないかな。アーティストたちは、ポジティヴな方向へ向かっている。
Keep Ya Head Up My Youth!
Text and Illustration by Reiko NAGASE SMITH
ext and Illustration by Reiko NAGASE SMITH
Ricoのジャマイカ★ArtLife:http://www.ricoart.com
協力/アイランドツアー:http://www.islandtour.jp