UK REPORT

Photo & Text by SIMON "MAVERICK" BUCKLAND

The Late, Great Devon Russell


Greetings Friends,
   
●ダンスホール以外でも数年ほど前にルーツ系の盛り上がりがあり、レゲエ市場全体が活況を帯びてきたと思っていたが、現状は以前よりもかなり悪化しているらしい、と僕は“その筋”に詳しい者に最近教えられた。Tex JohnsonのJamaica SoundとFrenchie&Adrian SherwoodによるMaximum Pressureの両レーベルが活動停止を余儀なくされたことが象徴されるようにUKのレゲエ・シーンでは厳しい状況が続いている。上記の2レーベルはUKは勿論のこと国際的規模での好セールスが期待されて立ち上げられたのだが、このような結末を迎えるとは誰が想像できただろうか?
 カッコよくデザインされたパッケーンジングでXterminator、Jammy's そしてTechniquesなどのリイシューを担ってきたが、思ったように利益が出なかったようだ。本当に残念である。イギリスの市場がこのような状況なので、以前のレポートでも触れたJetstarとNext Musicのような英仏合同の国境を超えたディストリビュターを通してUK発のレゲエをヨーロッパ全域でプロモートしていくような仕掛けが重要となってくるだろう。

●Prince Malachiの4枚目のアルバム『Runaway Slave』が予定より少し遅れて完成しJetstarよりリリースされた。Xterminatorを離れてからの最初の作品となる本作はロンドンのStingray Crewと共に制作したようだが、前2作と比べても退けをとらない出来だ。現在、彼は刑務所で服役中でこのアルバムの評判の良さを実感できないと思うのだが。

●Maxi Priestは一体どうしたんだ?と、思っている方々には朗報がある。モンテゴ・ベイで開催された「Air Jamaica Jazz & Blues Festival」で彼はBeres Hammondのゲストとして出演、「How Can We Ease The Pain?」と、「Wild World」を熱唱したらしい。このフェステイバルにはブルーノート・レーベルの女性シンガーCassandra Wilsonとご存知、Alicia Keysも出演した模様。Maxi Priestは現在、新しいチューンの制作をDonald Bennett(実名:Don Corleon)と共にジャマイカで行っているということだ。

●Ninjamanが車同士の事故で負傷し、キングストンの公共病院(通院はおろか入院するなんてトンデモナイと思うような施設だ)に収容されたらしい。彼は順調に回復軌道にのっているらしい。

●Mykal RoseがBlack Uhuruに再参加したらしい。公の場でもプライベートでもお互いの悪口を言いたい放題だった彼とDuckie Simpsonは犬猿の仲だったので驚くべきニュースだ。Roseはリーダー的存在だったにもかかわらず1985年にグループが『Anthem』でグラミー賞を取った後に脱退。僕が想像するには、両者ともRose脱退の後のキャリアがふるわず、Black UhuruをSly & Robbieが手伝ってくれるということで、仕方なくもう一度タッグを組むことになったではなかろうか?

●U BrownとRanking JoeはBlood & Fire Sound Systemが数々のダンスを開催しているおかげで最近出番が多く、偶然にも僕が時々滞在する西フランスの田舎町にもやってきた。U Brownは昔の栄光がウソのように出来が悪いショーを展開し、ウィットに富んだリリックで応戦した地元DJ達に牛耳られる始末。「Weather Balloon」のような名曲で会場をマッシュアップするには到底至らず、ボブ・マーレーのチューンをまるで自分の持ち歌のように披露してしまうという醜態をさらした。それに比べてRanking Joeは2時間近くに渡りノンストップでエネルギッシュなセットを披露した。

●レゲエという分野で、膨大な情報を百科事典的に編纂するという仕事を評価する読者にはオススメノの本が出版された。Nighthawkから発行された『Roots Knotty Roots : The Discography Of Jamaican Music』には1950年から1985年までにジャマイカでリリースされた全ての7インチの情報を網羅しているというから驚きだ。レゲエ業界の勢力抗争や名の売れた評論家達の意見にも全く左右されず、名盤を収録したこの一冊は賞賛されるべきだと思う。このジャマイカ・レコード文化の創成期からデジタル時代直前までのデータを編集したのはNighthawkの社長であるRobert SchonfeldとMichael Turnerだ。

●『Soul Jazz Studio One』シリーズのコンピレーションを持ってない人はいないと思うのだが、もし、まだ買っていなかったら、CD5枚組の『Studio One Musik City』の購入を考えるべきだ。過去のリリースを美しくパッケージし直したこのコンピにはDennis Alcapone、Dillinger、Horace Andy、Ken Boothe、Skatalites、Larry Marshall、Devon Russell、そしてLeroy Wallaceらの名曲が満載されている。最近発売された『Studio One Ska』にはCoxsone Doddのレーベルからの名曲とレア・アイテムをコンパイルしたもので、Joe Higgs、Ethiopians、Wailers、Andy & Joey、The Maytalsらのチューンが収録されている。僕はただ、発売当時、彼らのサウンドがCDに納められている程にクリアーだったらと願うのだが…。

 
That's All For Now, Folks, So Take Care Till Next Time....
 
(訳/Masaaki Otsuka)


Prince Malachi