パサパサ・ウエンズデーが一周年を迎えて、アニバーサリー・ダンスもビッグに。ダンスもステージ・ショーも多く、1月に交通事故に遭ったビーニ・マンも、毎年恒例のステージ・ショー「スペクトラム」で元気にパフォーマンスを見せ、さらにビッグに。
ジャマイカ行きの航空券が安くなり、インターネットなどのおかげで以前より情報がふえてジャマイカに来やすくなり、キングストンに滞在する日本人の方もふえてきました。でもジャマイカは日本に比べてやっぱり不便で、日本のようには物事が運ばない。日本のように守られた社会ではなく、トラブルも多い。いかにトラブルを回避するかは、旅行者だけの問題ではなく、私たちジャマイカ在住外国人も、もちろんジャマイカ人も常に気を使っている事柄なのである。
今月は、ジャマイカの格言に学ぶ、ジャマイカの過ごし方。パトワを学びながら一読を。ジャマイカに来たら、日本では学べないことを学べるはず(ジャマイカ流発音の単語は、カッコ内に英単語を添えました)。
●「Today fi(for) mi(me), tomorrow fi yuh(you).」…人間いいときと悪いときがある、という意味の格言ですが、浮き沈みの激しいレゲエ界を表すような言葉。DJもよく口にします。
●「Nuh(no) draw mi(my) tongue.」…直訳すると「私の舌を引っ張らないで」。喧嘩をふっかけないで、という意味。面白い言い回しである。ジャマイカには、日本語にない類いのバッドワードが数多くあって、それをジャマイカ人はときに面白おかしく、ときにマジでバッドに使うわけだけど、上手く使うには修行が要ります。バッドワードはTPOをわきまえるべし。ポリスマンにバッドワードを使えば逮捕されることだってあるし、やたら使うと品性を疑われる。使い方、むずかしいんだよね。
●「Wah(what) sweet nanny goat a go run him(his) belly.」…美味しいヤギの肉で下痢をすることだってある。あなたを喜ばせるものが、あなたを悲しませることだってある。
●「Likkle(little) canoe keep near shore.」…小さなカヌーは岸につなげておこう。危ないと言われることは、無茶しない。評判の悪い安宿に泊まったり、夜にタクシー代をケチって歩いたり、土地鑑のない人がバスに乗ったりはかなり危険。自分が楽しく過ごすために。
●「Yuh(you) play wid(with) puppy, puppy lick yuh(your) face.」…子犬と遊ぶと子犬に舐められる、または引っ掻かれる。火遊びをたしなめる言葉。過信しちゃあいかんね。ジャマイカ人は喫煙マナーがいい。ジャマイカ人ってどこでもいつでも吸ってるように見えるかもしれないけど、ぜったいそんなことはありませぬ。わきまえています。他人が運転する車の中、他人の敷地、吸わない人が近くにいるときなど、やっぱり迷惑。ジャマイカ人は、タバコでさえ気を使います。お構いなしに吸うって、かなりカッコ悪いっすよ。
●「Trouble nuh(no) set like rain.」…とかくトラブルは雨のように急に、でも普通にやってくる。予測できないけど、用意はすべし。トラブル対処の心構えを養おう。
●「Si(see) mi(me) and come live wid(with) mi a two different sinting(something).」…物事は決して常に見た目どおり、というわけではない。たとえば結婚と恋愛は違う、と多くの人が言うように、ジャマイカも、遊びに来るのと住むのとではずいぶん違う。
●「Old fire stick easy fi(to) ketch(catch).」…元カノ、元カレとは火がつきやすい。いかがなものかな。
●「Dawg(dog) wid(with) too much owner sleep without bone.」…複数の飼い主がいる犬は、結局はひとり淋しく寝ることになる。二兎を追う者は一兎をも得ず、に似てるかな。複数の異性とつきあうことを、諌める(いさめる)言葉、ともいえる。
●「Cock mouth kill cock.」…ジャマイカの有名な諺。口は災いのもと。責任もてないことは口にしない。
●「Empty bag caan(can not) stand up.」…空きっ腹では立てない、の意。お腹がすいていると、仕事も学業も身に入らない。
●「Chiken merry, hawk deh(there) near.」…見るより見られることの方が多いジャマイカ。鶏が楽しんでる傍で、鷹がひそんでる、まさにそんな感じです。ジャマイカの空港に着いたばかりで、公共のバスに乗るなんて、ジャマイカ人でもしないこと。ましてや航空会社の荷物タグなど堂々とつけたまま。「鷹さん、カモって」とお願いしているようなもん。サイフをガバっとあけてUSドルとか見せながら、「ディスカウント」って言ってもさ。「たかって」って言ってるようなもん。ジャマイカでは、私たちが外国人で珍しい存在。自分たちが見る以上に見られてます。
●「If yuh(you) want half a(of) bread beg smaddy(somebody) buy it, but if yuh want a whole one, buy it yuhself(yourself).」…私がジャマイカで学んだこと。自分でやらないと何も得られない。パンを半分買うときは誰かに頼めても、パンを一個丸ごと買うときは、自分で買いに行かないとね。人に物事を頼むと、自分が期待するすべてのことは得られない、の喩え。
●「Silent river run deep.」…静かな川は深い。うーん、いい言葉だなあ。学んだつもりでも、なかなか実行できないのが人間というもの。ジャメーカンライフは道場のよう。修行はまだ続く。We run tings(things), tings nuh(no) run we(us)!
Text and Illustration by Reiko NAGASE SMITH
Ricoのジャマイカ★ArtLife:http://www.ricoart.com
協力/アイランドツアー:http://www.islandtour.jp